優しくなんて

あなたってなんでそんなに気が短いの？
そんな風に、人が怒っている姿を見ることがある。

自分だってそうだ。
なんでその程度のことが許せないのとか、なんですぐ雰囲気悪くするのとか。
そんな風に、水面下でいろんな人を見下しながら生活している。

ストレスというのは肌で伝わる。
近くに苛々している人がいる時、自然と空気は流れを止め、ただ物体が動いているだけの空間となる。

この息苦しさを産み出したあなたへ、黒い感情がにじみ出してくる。

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金縛りをにかけられて、無理に体を動かそうとして血が吹き出すシーンを想像できるだろうか。アニメや漫画好きのひとなら簡単だろう。

そんな呪いをもった人がいる。
あの人の気持ち、あの人の状況、あの人の育ち。
相手の立場にたって考えなきゃ優しくないという強迫観念。

自分の怒りに、もはや素直になれないんだ。
いろんな状況条件を思い浮かべて、私が正義だと大声をあげられない。
でも、本当の気持ちはちゃんとそこにある。

その気持ちが呪いを吹っ切ろうとして　ブシュッ、ブシュッ　と心から血が流れる。
でも動かない。動けない。
そんな風にもがく心のうめき声。それが空気に漏れ出して、やっぱり空間は停止してしまう。

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優しくあろうとして、結局おなじように苛々してしまう。理屈と感情のズレから吐き出しづらいストレスが生まれて、じわりじわりと自分の首を締めていく。

息苦しい。酸素が足りない。冷静さをなくして、だれかを傷つける。

なんで、こうなってしまうのか。

優しくないからだ。

苛々してしまってる時点であなたは聖人じゃない。それなのに、仮面をかぶって口をつむぐものだから息ができなくなる。

人はストレスから逃げられない。あなたが苛々してしまってることはしょうがないことで、悪いことではないんだ。

だから、言ってしまえ。「私はいま、機嫌が悪い」って。そこに「ごめん」までつけられたら最高じゃないか。

あなたは優しくなんかない。みんな、優しくなんてなれないよ。

それでいいんだ。

僕と同じ呪いを抱えた、すべてのあなたへ。