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【識者の眼】医療界を読み解く

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1日1本、医療に関わるトピックを専門家の方々に紹介していただきます。
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2021年8月の記事一覧

【識者の眼】「子どもの摂食障害患者の増加」本田秀夫

【識者の眼】「子どもの摂食障害患者の増加」本田秀夫

本田秀夫 (信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)
Web医事新報登録日: 2021-08-04

小児科と児童精神科で、新型コロナウイルス感染症流行に伴って話題になっていることの1つが、子どもの摂食障害患者の増加である。わが国のみならず世界各国でそのことが報告されている。筆者が勤務する大学病院でも小中学生の摂食障害の受診例が昨年から増加し、児童精神科の入院病床だけでは対応しきれず小児科

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【識者の眼】「保健所マターから主治医判断への転換―0813事務連絡はCOVID-19現場対応を大きく変える」黒木春郎

【識者の眼】「保健所マターから主治医判断への転換―0813事務連絡はCOVID-19現場対応を大きく変える」黒木春郎

黒木春郎 (外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会理事・オンライン診療分科会会長)
Web医事新報登録日: 2021-08-16

2021年8月13日、厚生労働省は4通の自治体向け事務連絡を発出した。このうち「感染拡大地域における陽性者の家族等への検査について」が医療現場にとって重要である。本文の「参考」として、前日12日付の政府分科会の提言から「緊急事態措置地域において更に行うべき対策」

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【識者の眼】「新型コロナ感染拡大の中で企業の安全配慮義務と事業継続計画の見直しを」和田耕治

【識者の眼】「新型コロナ感染拡大の中で企業の安全配慮義務と事業継続計画の見直しを」和田耕治

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
Web医事新報登録日: 2021-08-16

新型コロナの感染拡大が止まらない状況だが、お盆休みが終わり、企業も再開するところが多い。東京都では、感染者が企業内で出ても積極的疫学調査で訪問することはできない状態になっており、同様の状態は他の地域でも生じている。今後は企業で感染者が出た場合には対応を自分たちで考えなくてはならなくなっている。

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【識者の眼】「シン・梅毒診療〜新しい検査方法と届け出・これからの治療薬〜」柴田綾子[8/10追記]

【識者の眼】「シン・梅毒診療〜新しい検査方法と届け出・これからの治療薬〜」柴田綾子[8/10追記]

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)
Web医事新報登録日: 2021-08-05 最終更新日: 2021-08-10

★2021年8月5日に本記事をWeb医事新報公開後に、感染症専門医の先生よりご助言をいただき、追記修正を行いました。修正箇所はこちらをご確認ください。

近年急激に増加している梅毒。新規感染者数は2010年621人から2019年6642人と10倍に増加しました。最近の

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【識者の眼】「コロナ禍のメール相談とテレワーク」山本晴義

【識者の眼】「コロナ禍のメール相談とテレワーク」山本晴義

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)
Web医事新報登録日: 2021-08-04

労災病院の社会貢献事業として、2000年にメール相談(mental-tel@yokohamah.johas.go.jp)が始まった。初年度の受信件数は116件であったが、19年度9523件、20年度1万5223件と増加し、20年度末には累計13万4548件となった。これはコロ

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【識者の眼】「東京五輪のレガシー:情報保障で誰も置き去りにしない社会へ」武田裕子

【識者の眼】「東京五輪のレガシー:情報保障で誰も置き去りにしない社会へ」武田裕子

武田裕子 (順天堂大学大学院医学研究科医学教育学教授)
Web医事新報登録日: 2021-08-06

賛否両論のあった五輪が始まりました。女性蔑視発言やルッキズムによる関係者辞任に続き、担当クリエーターの人権感覚欠如の言動が次々と明るみになりたくさんの批判がありました。しかし、そうした議論からもさらに置き去りにされた方々がいました。

無観客になった開会式でスタジアムの大スクリーンに手話通訳者が

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【識者の眼】「新型コロナ対策:ミドル世代の意識を高めるのが感染収束の近道か」和田耕治

【識者の眼】「新型コロナ対策:ミドル世代の意識を高めるのが感染収束の近道か」和田耕治

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
Web医事新報登録日: 2021-08-10

新型コロナの感染対策やワクチン接種において、「若者が課題」との論調があります。私はあえて今こそ、ミドル世代である40〜50代に対策を強化することが感染収束の近道と考えています。その理由を紹介します。

現在の重症化の多くがミドル世代であり、そしてまだまだ現段階ではワクチン接種の機会が行き届いていませ

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【識者の眼】「新型コロナ自宅療養での中等症の見分け方」小倉和也

【識者の眼】「新型コロナ自宅療養での中等症の見分け方」小倉和也

小倉和也 (NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)
Web医事新報登録日: 2021-08-11

新型コロナ感染者の急増により自宅療養者も一気に増加している。連携による健康観察と医療介入の体制づくりが各地で急がれているが、現場ではいかに軽症と中等症を見分けるか、肺炎の兆候を見逃さずに治療や入院につなげられるかが鍵となっている。

中等

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【識者の眼】「予防接種の副反応による健康被害の責任の所在は?」川﨑 翔

【識者の眼】「予防接種の副反応による健康被害の責任の所在は?」川﨑 翔

川﨑 翔 (よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)
Web医事新報登録日: 2021-08-03

高齢者に対する新型コロナウイルスのワクチン接種は進んでいますが、ワクチン入手の目途が立たず、職域接種が一部停止される状況が生じています。一方で、感染者も増加傾向にある上、3回目のワクチン接種も必要ではないかとする報道もあり、予断を許しません。

今回は、ワクチン接種の副反応による健康被害が生じ

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【識者の眼】「地球カレンダーについて」浅香正博

【識者の眼】「地球カレンダーについて」浅香正博

浅香正博 (北海道医療大学学長)
Web医事新報登録日: 2021-07-26

地球が生まれてから46億年が経過し、約38億年前に初めての生命が誕生した。それが原核細胞を有する微生物である。細胞内に核を持たない原核細胞から真核細胞を有する微生物の変化には13億年ほどかかっている。真核細胞を有する微生物の時代を原生代と呼んでいるが、この時代はとてつもなく長く20億年近く続いた。骨格を有する多細胞生

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【識者の眼】「プラセボ効果の功罪」大野 智

【識者の眼】「プラセボ効果の功罪」大野 智

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)
Web医事新報登録日: 2021-08-02

私事で恐縮だが、先日、NHKの生活情報番組「ガッテン!」にゲスト出演した【1】。テーマは「おまじない」、医学的に言えば「プラセボ効果」であった。読者の先生方の中にも、乳糖、蔗糖、ブドウ糖、生理食塩水などを処方したことがある人がいるのではないだろうか。ただ、プラセボと聞くと、何か患者を騙しているか

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【識者の眼】「大坂なおみ選手が告白したのは『うつ病』だったか」上田 諭

【識者の眼】「大坂なおみ選手が告白したのは『うつ病』だったか」上田 諭

上田 諭 (戸田中央総合病院メンタルヘルス科部長)
Web医事新報登録日: 2021-07-26

テニスの大坂なおみ選手が5月の全仏オープンで記者会見を拒否して棄権し、「2018年の全米オープン(での優勝)以来depressionに苦しんでいた」とツイート。これをいくつかのメディアが「うつ病の告白」と報じて、波紋が広がった。

英語のdepressionは、病としてのうつを表すとは限らない。日常

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【識者の眼】「論文博士の制度を廃止せよ」岡本悦司

【識者の眼】「論文博士の制度を廃止せよ」岡本悦司

岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部医療福祉経営学科教授)
Web医事新報登録日: 2021-08-03

おそらくは諸外国には見られない、わが国独特であろうと思われる制度に論文博士がある。学士、修士といった学位はそれぞれ4年制大学や大学院修士課程を修了しないと授与されない。博士号も博士課程の大学院を修了し、博士論文の審査に合格することが原則だが、わが国の学校教育法(第104条4項)には例外が規

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【識者の眼】「地域を挙げてコロナ軽症者へのオンライン診療を展開しよう」黒木春郎

【識者の眼】「地域を挙げてコロナ軽症者へのオンライン診療を展開しよう」黒木春郎

黒木春郎 (外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会理事・オンライン診療分科会会長)
Web医事新報登録日: 2021-08-03

東京都を中心に首都圏でのコロナ感染は爆発的状況と言ってよい。これは全国に拡大している。私は千葉県で小児科を開業し、昨年以降、県の発熱外来指定も受けているが、2021年7月現在、コロナ患者さんは激増している。無症状ないし軽症例のコロナ患者さんは自宅または宿泊施設待

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