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【識者の眼】「シン・梅毒診療〜新しい検査方法と届け出・これからの治療薬〜」柴田綾子[8/10追記]

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)
Web医事新報登録日: 2021-08-05 最終更新日: 2021-08-10

★2021年8月5日に本記事をWeb医事新報公開後に、感染症専門医の先生よりご助言をいただき、追記修正を行いました。修正箇所はこちらをご確認ください。

近年急激に増加している梅毒。新規感染者数は2010年621人から2019年6642人と10倍に増加しました。最近の傾向として、①異性間性交渉での感染増加(約4900件:2018年)、②20代女性患者の増加(約1200人:2019年)、③性風俗産業関連の件数増加(4575件:2016年)があります。梅毒に関して、新しい検査方法と届け出、そしてこれから期待される治療薬についてご紹介します。

1. 検査方法と結果解釈の変化
梅毒の血液検査項目には梅毒血清反応検査(RPR:脂質抗原法)と梅毒トレポネーマ抗原法(TP抗体・TPHA、FTA-ABS)がありますが、従来の希釈倍率法(用手的検査)から自動化法へ移行している施設が多くあります。自動化法では①TP抗体がより早期に陽性となる、②治療効果判定は「RPR1/4以下」から「RPR半分以下」に変更が必要です。そのため希釈倍率法で「RPR陰性かつTP陽性は梅毒治癒後」と判断していたものを、自動化法では「RPR陰性かつTP陽性は早期梅毒の可能性」と考え、患者の臨床症状を踏まえて治療を検討してください。梅毒診療ガイドでも「近年、RPR陰性で梅毒TP抗体のみ陽性の早期梅毒の報告が増えてきた」「梅毒の診断にTP抗体の陽性を重視すべきである」とあります【1】。次に治療効果判定です。治療開始後2〜4週間でRPRを検査し、「自動化法ではおおむね2分の1」「希釈法では4分の1」に低減していれば治療有効と判定し、治療を終了します【1】。その後は3カ月前後の間隔で1~2年程度フォローします。TP抗体のみ陽性の場合は、TPが減少傾向または、治療開始4週間後のRPRが上昇していなければ治療有効と判定し治療を終了します(治療1カ月後のRPRが上昇している例はたまにありますが、再感染が無ければ、その1~2カ月後にはほとんどが良好にRPRが低下します)。

2. 変わった届け出内容
梅毒は5類感染症で、診断から7日以内に保健所へ全例を届け出る疾患です。2019年1月1日より梅毒の届け出票に項目が追加されました【2】。梅毒の診断時は、性風俗従事や利用の有無、口腔内病変の確認が必要です。
〈届け出票の新規追加項目〉
▶性風俗の従事歴・利用歴の有無(直近6カ月)▶口腔咽頭病変の有無▶妊娠の有無▶過去の感染歴(治療歴)▶HIV感染症の合併の有無

3. これからの治療薬
念願のベンジルペニシリンベンザチン筋肉注射薬(ステルイズ水性懸濁筋注)が2021年7月30日の厚生労働省薬事・食品衛生審議会の部会で承認了承されました。欧米で梅毒治療の第一選択薬であるベンジルペニシリンは、早期梅毒には1回投与で治療完了できる優れものですが、日本にはなかったため長期の抗菌薬内服が強いられていました。本製品は今年9月に正式に承認となる見込みであり、早期の発売が望まれます。

★謝辞:本記事は感染症専門医の宮里 悠佑先生よりご助言をいただき作成いたしました。

【文献】
1)梅毒診療ガイド2018 
2)梅毒発生届

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