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【識者の眼】「新型コロナ自宅療養での中等症の見分け方」小倉和也

小倉和也 (NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)
Web医事新報登録日: 2021-08-11

新型コロナ感染者の急増により自宅療養者も一気に増加している。連携による健康観察と医療介入の体制づくりが各地で急がれているが、現場ではいかに軽症と中等症を見分けるか、肺炎の兆候を見逃さずに治療や入院につなげられるかが鍵となっている。

中等症と判断された場合に入院で評価・治療がすぐに可能か、あるいは自宅や宿泊療養を続けながらステロイド内服や、場合により在宅酸素療法などを始めざるを得ないかは、地域の流行状況と医療資源の逼迫状態により変わってくる。しかし、いずれにせよこの判断をどこまで早くできるか、可能な形での介入を早く始められるかが予後を左右する。今回の第5波では、これまであまり肺炎にならなかった30代から60代前半までの軽症患者が療養中に発熱が続き、一週間ぐらいしてSpO2が低下し肺炎が見つかるケースが目立つ印象がある。

そこで判別に活用できるのが、英国などで自宅療養者のトリアージに活用されている、1分間の労作負荷によるSpO2の低下をみる1-minute sit-to-stand test(1MSTST)だ(https://www.cebm.net/covid-19/what-is-the-efficacy-and-safety-of-rapid-exercise-tests-for-exertional-desaturation-in-covid-19/)。

コロナ患者では呼吸苦の自覚が乏しく、また、安静時のSpO2が96%以上あっても1分程度の労作で3%以上の低下がある場合はCTなどで肺炎が見つかることが多い。これを早期に発見する方法として1MSTSTは有効である。実際には、人によって基礎的な心肺機能に差があることにも留意し、高齢や体力・体調の低下が強いと思われる場合は40歩ほどの歩行、体力が中程度の人は1分間にできるだけ多くの座り立ち、体力がある人では1分間のスクワットなどを適宜調整して行っている。ただし、安静時のSpO2が96%未満の場合には医療者がついた状態でなければ危険もあるため、オンラインでの実施などは行わないようにすることも大切だ。

急激な感染拡大のなか地域の状況に合わせて連携を行い、自宅・宿泊療養でも適切な評価のもと、いわゆる急変を防ぎつつ必要な医療が適宜提供できる体制を作ることが求められている。

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