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【識者の眼】「地球カレンダーについて」浅香正博

浅香正博 (北海道医療大学学長)
Web医事新報登録日: 2021-07-26

地球が生まれてから46億年が経過し、約38億年前に初めての生命が誕生した。それが原核細胞を有する微生物である。細胞内に核を持たない原核細胞から真核細胞を有する微生物の変化には13億年ほどかかっている。真核細胞を有する微生物の時代を原生代と呼んでいるが、この時代はとてつもなく長く20億年近く続いた。骨格を有する多細胞生物が登場する顕生代は5.4億年前に始まっている。

46億年を1年とした地球カレンダーを作成してみると、11月の下旬になって初めて微生物以外の生物が出現するのである。これをきっかけに微生物しか居なかった地球に三葉虫など動物の仲間が一気に出現するのである。哺乳類の全盛の時代、いわゆる新生代がやってくるのは1年が終わる5日前である。人類の登場は12月31日のお昼頃で、我々の祖先のホモサピエンスが現れるのは23時40分である。

1年が46億年の地球カレンダーでは、人生などあっという間に終了してしまうので、スケールを変えて顕生代以降のカレンダーに挑戦してみた。365日を5.4億年に設定するのである。多細胞性の生物が誕生して以来の歴史になる。このカレンダーで最も長く地球上に君臨するのは三葉虫の仲間である。1月の初めから7月上旬まで3.5億年にわたって地球上で生活を営んでいたことになる。

私はこの三葉虫を気に入って化石を年代別に十数種類購入し、自宅の書庫に置いてある。一つ一つに膨大な歴史を秘めているこの化石を毎日見ているだけで、細かいことに悩んでいる自分から離れることができる。ところが家内は三葉虫の魅力を全く理解しておらず、私が亡くなった後は、石ころとして捨てるつもりと公言している。貴重な地球の歴史の証拠品の廃棄をどのように阻止するかを日夜思案している。

このカレンダーで恐竜は9月から出現し、11月に絶滅している。人類の誕生は12月26日頃でホモサピエンスになると12月31日の21時という遅い時間帯に登場する。歴史時代の5000年はこのカレンダーではわずか5分間に相当することになる。人の一生は5秒に過ぎない。このように顕生代からのカレンダーにおいても人類の歴史など一瞬のものであるのに、万物の霊長と称し、わがもの顔で地球を作り替え、多くの他の種属を滅亡させている人類に素晴らしい未来などはありようがないと思われる。地球の歴史から考えると、未来永劫人類の時代が継続するなどと考える方が不自然であろう。

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