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#エッセイ
言葉の網目で個をつつむ|荒井裕樹|第15回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」受賞スピーチ【全文公開】
2022年4月22日(金)、神田神保町の出版クラブホールにて、第15回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」の表彰式と記念講演会がおこなわれました。本賞は、個別の「作品」ではなく「人」そのものに、過去の「業績」ではなく今後の「可能性」に対して与えられるものです。栄えある第15回の受賞者は、文学者の荒井裕樹さん。柏書房からは『まとまらない言葉を生きる』を出版いただいています。
▼受賞
季節の行事をアップデートしてみたら――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子
『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。NHKテキスト『きょうの料理 ビギナーズ』でリアルな生活を綴って人気の連載エッセイ「とりあえずお湯わかせ」が「本がひらく」に場所を変え、リニューアルスタートしました! 料理や日常生活のあれこれに加え、気になった本や映画、旬の話題も取り上げる予定です。ますますパワーアップする柚木ワールド
もっとみるなんでもない晴れた日に、僕は和服で街を歩く。
2020年11月27日。
僕はずっと待っていた。晴れていて水溜りもなく、それでいて、風が冷たい。こんな週末を。
クローゼットの奥から引っ張り出したデニムにゆっくりと袖を通す。
久しぶりに着ると、ずっしりとしたその重みに驚かされる。
白くて細いベルトを巻き、その上から金色の太いベルトをしっかりと巻く。
サラサラとした手触りの良い黒い外套を羽織り、最後にパーカーがついた灰色のカーディガンを羽織る。
私が家食を楽しむためには、生活をまわす料理が必要
レストランのシェフみたいに分厚いお肉をじっくり焼いてみたり、レシピを見ながら異国の料理を作ってみたり、インスタグラムで見たようなパンケーキタワーを作ってみたり。
家にいる時間が増えて、あれもこれもやってみたい。
でも、たまに作ってみては、慣れないことをするのでなんか疲れたとか、野菜足りなくない?とか気になってしまい、あまり楽しめないのでした。
その原因は、「楽しむための料理」と「生活をまわす
三鷹の小さな小料理屋にて
東京都、三鷹駅。
20代前半の数年間、わたしはこの街で暮らした。
ずっと赤羽で暮らしていたわたしに、「街によって治安はぜんぜん違うのですよ」と教えてくれたのが三鷹だった。緑豊かで街はきれい。タバコの吸い殻が落ちていないし、ずらりと並んだ自転車のほとんどに、駐輪違反の紙がぶら下がっていることもない。ジブリ美術館が近くにあり、「風の通り道」と名前のついたセンスのいい道がある。
赤羽の「食材はとり