コモンズを破壊しない建築は可能か?|まちは言葉でできている|西本千尋
銭湯が好きだ(人が好きだと書けない性格なので、代わりにこう書く)。銭湯のあるまちに住む人が羨ましい。わたしにとって、銭湯はとくだん、何が起こるわけでもない。ただ人間がいて、めいめい、ただ風呂に入るだけだ。しばしば真っ裸でけっこう深いコミュニケーションを交わしているおばあさんたちに出会う。丸聞こえだ。病気のこと、他人の噂話、誰々さんの消息、誰々さんの娘婿の職業、芸能人のはなし。その人たちの生活や人生が、扇風機の音、ドライヤーの音、遠くでたらいがタイルを叩く音の合間を泳いで伝え