かしわもち 柏書房のwebマガジン

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  • まちは言葉でできている

    西本千尋さんの連載「まちは言葉でできている」に関する記事のまとめです。[バナーデザイン=髙井愛]

  • 地下鉄にも雨は降る|友田とん

    友田とんさんの連載『地下鉄にも雨は降る』に関する記事のまとめです。[バナーデザイン=小川恵子]

  • 新刊速報

    柏書房営業部による「新刊速報」のまとめです。[イラスト=荒木(営業部)/バナーデザイン=見野(営業部)]

  • まとまらない言葉を生きる

    荒井裕樹 著『まとまらない言葉を生きる』に関する記事のまとめです。[装画=榎本紗香(しょうぶ学園)]

  • あの時のあの感じ

    安達茉莉子さんの連載「あの時のあの感じ」に関する記事のまとめです。[バナーデザイン=著者本人]

最近の記事

コモンズを破壊しない建築は可能か?|まちは言葉でできている|西本千尋

 銭湯が好きだ(人が好きだと書けない性格なので、代わりにこう書く)。銭湯のあるまちに住む人が羨ましい。わたしにとって、銭湯はとくだん、何が起こるわけでもない。ただ人間がいて、めいめい、ただ風呂に入るだけだ。しばしば真っ裸でけっこう深いコミュニケーションを交わしているおばあさんたちに出会う。丸聞こえだ。病気のこと、他人の噂話、誰々さんの消息、誰々さんの娘婿の職業、芸能人のはなし。その人たちの生活や人生が、扇風機の音、ドライヤーの音、遠くでたらいがタイルを叩く音の合間を泳いで伝え

    • 謝るとは何をすることなのか――古田徹也さん最新刊『謝罪論』プロローグ全文

      2023年9月22日、古田徹也さんの新著『謝罪論――謝るとは何をすることなのか』が配本となりました。  『それは私がしたことなのか』では「行為の哲学」を、『言葉の魂の哲学』ではウィトゲンシュタインとカール・クラウスの「言語論」を、『このゲームにはゴールがない』では「他者の心についての懐疑論」を――。一冊ごとに清新かつ独自の議論を展開してきた哲学者・古田徹也さんが新たに挑んだテーマは、ずばり「謝罪」。  子どもに謝罪の仕方を教えるのはなぜ難しいのか? そんな身近だけれど答え

      • 【第3回】この恍惚を味わいたかったのかもしれない|地下鉄にも雨は降る|友田とん

         前回は4月に荻窪駅から丸の内線の各駅の漏水対策を観察して回った。半日あれば、さすがに都心まで行けるだろうと高を括っていたが、細かく記録を取りながら回っていくと、あっという間に数時間が経っており、新宿まで見て回るのが精一杯だった。  少し日数が空いてしまったが、6月頭にその続きのフィールドワークに出掛けた。丸の内線を新宿三丁目から都心に向かって見ていく。新宿三丁目駅の「あらばしり」(第2回参照)も健在だ。そして、丸の内線のホームに着くと、柱の脇の天井から虎テープを巻いたペット

        • 古田徹也さん待望の書きおろし『謝罪論』刊行記念イベント&フェア情報

          2023年9月22日、古田徹也さんの新著『謝罪論――謝るとは何をすることなのか』が配本となります。  『それは私がしたことなのか』では「行為の哲学」を、『言葉の魂の哲学』ではウィトゲンシュタインとカール・クラウスの「言語論」を、『このゲームにはゴールがない』では「他者の心についての懐疑論」を――。一冊ごとに清新かつ独自の議論を展開してきた哲学者・古田徹也さんが新著で挑むテーマは、ずばり「謝罪」。  子どもに謝罪の仕方を教えるのはなぜ難しいのか? そんな身近だけれど答えに詰

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          新刊速報【2023年9月版】|柏書房営業部通信

           柏書房営業部です。知名度や認知度を上げるにはどうすればよいのか絶賛悩み中の当社ですが、事業を続けて今期で54年目に入るそうです。54年目ということで、気の利いたことのひとつでも書いてみようと思い立ちましたが、何も思い浮かびませんでした、すみません。さて、今月の柏書房の新刊は2点です。謝るとは何することなのか? いざ問われると説明の難しい謝罪の全体像に迫る『謝罪論』、教科書には載らない知られざる武将たちの大活躍を描く『どんマイナー武将伝説』です。 『謝罪論』古田徹也 著

          新刊速報【2023年9月版】|柏書房営業部通信

          新刊速報【2023年8月版】|柏書房営業部通信

           柏書房営業部です。今夏は新型コロナウイルス流行の影響で中止になっていた花火大会の多くが復活するようですね(楽しみにしている/すでに楽しんだ方も多いのでは?)。会社近くの歩道橋には隅田川花火大会の開催中の車両通行止めの横断幕が先日まで掲げてあり、通りがけに見るたびに弊社でも何か打ち上げたいなあとつい遠い目をしがちです。さて、今月の柏書房の新刊は2点。誰の目にも見えるところにありながら、誰の目にも見えていないインドの広大なごみの町で生きる人々を活写するノンフィクション『デオナー

          新刊速報【2023年8月版】|柏書房営業部通信

          インドに関する本を一冊読むなら、この本を読んでほしい|デオナール アジア最大最古のごみ山|ソーミャ・ロイ【冒頭試し読み】

           2023年8月24日、ソーミャ・ロイ 著/山田美明 訳『デオナール アジア最大最古のごみ山――くず拾いたちの愛と哀しみの物語』が配本となります。  2013年夏、ムンバイでマイクロファイナンスを扱うNPOを運営する著者が出会ったのは、市街地の端にあるデオナールごみ集積場でお金になるごみを集め、それを売ることでその日暮らしをする、くず拾いたちのコミュニティでした。  腐った食べ物、古い端切れ、割れたガラス、ねじ曲がった金属、赤子の死体、花嫁の遺骸、医療廃棄物、等々……。絶

          インドに関する本を一冊読むなら、この本を読んでほしい|デオナール アジア最大最古のごみ山|ソーミャ・ロイ【冒頭試し読み】

          【第2回】上を向いて歩こう|地下鉄にも雨は降る|友田とん

           ゴールデンウィークの最中のことだった。友人宅を訪ねるために、朝JR 埼京線渋谷駅のホームに立っていた。渋谷駅では恵比寿駅方に離れてあった埼京線ホームを山手線ホームの向いに移し、それぞれを両側に線路のある島式へと改造する大規模な駅改良工事が進行中であり、今、ホームは板張りになっている。ホームドアのない仮設のそのホームに電車が入ってきた瞬間、私は咄嗟に怖いと感じた。そして、恐怖を感じている私に驚いた。この十年ほどの間に、すっかりホームドアが当たり前になっていたのだ。電車には必ず

          【第2回】上を向いて歩こう|地下鉄にも雨は降る|友田とん

          韓国語版によせて|まとまらない言葉を生きる|荒井裕樹

           2021年5月の刊行以来、多くの読者の支持を得ながら読み継がれている荒井裕樹さんの『まとまらない言葉を生きる』(現在6刷)ですが、このたび、韓国で翻訳される運びとなりました。タイトルは『言葉に救われるということ』(말에 구원받는다는 것)、日本語版の終話をもとに名付けられたようです。(韓国版のジャケットにもぜひ注目ください!)  本稿では韓国語版の出版を記念し、著者が序文として新たに寄せた文章とインタビューをお届けします。新たな読者との出会いを楽しみにしつつ、出版に尽力く

          韓国語版によせて|まとまらない言葉を生きる|荒井裕樹

          「取るに足りなさ」との闘い|まちは言葉でできている|西本千尋

          中野駅周辺の大規模再開発  雨がようやくあがった。6月の初旬、中野駅(中野区)で住民のIさんと待ち合わせをしていた。中野駅周辺では11地区もの大規模再開発事業が目下進行中であり[*1]、それらを住民のIさんに案内いただくためだ。Iさんからいただいた地図を手にしながら、透明の工事用仮囲いの奥にある巨大な更地を眺める。クレーン車を見上げる。線路脇の民家のドアや窓ガラスには「再開発・反対」、「移転しました」、「営業妨害をやめろ」、「この開発でこの町会は消滅しました」などというポス

          「取るに足りなさ」との闘い|まちは言葉でできている|西本千尋

          新刊速報【2023年7月版】|柏書房営業部通信

           柏書房営業部です。2023年も半分が過ぎ去っていき半年を切りましたね。早すぎないか。過ぎ去るというとなんだか消えてなくなった気がしますが、本に携わっていますと、刊行からしばらく経ったタイミングでかつて出版した書籍が話題になったり、また読まれたり、その流れに後押しされて重版によって復活したりと、過去が追いついてくる(というより先んじていた?)ようなことがあり、不思議です。さて、今月の柏書房の新刊は1点。1980年代以降の日本の性教育をめぐる歴史をひもといた基本の基『「日本に性

          新刊速報【2023年7月版】|柏書房営業部通信

          月に一度海辺の街にアイスクリームを食べにいく時のあの感じ|安達茉莉子

           何事にも基本だらしない私だが、いくつか守っているルーティーンがある。そのひとつが、毎月逗子のアイスクリーム屋に行くことだ。  今住んでいる横浜の家からJR逗子駅までは、電車を乗り継いで大体40分くらい。体感的には横浜と逗子は隣同士のように思っていたけれど、実はそうでもなく意外と時間がかかる。それでも都内に住んでいた頃よりは、ずいぶん身近な場所になった。横浜から横須賀線に乗って、戸塚や保土ヶ谷の住宅地を遠く眺め、北鎌倉、鎌倉あたりになると一気に山の気配が強くなり、土地の気配

          月に一度海辺の街にアイスクリームを食べにいく時のあの感じ|安達茉莉子

          新刊速報【2023年6月版】|柏書房営業部通信

           柏書房営業部です。空気がじめじめしてきましたね。梅雨の季節、つまり雨読の季節です。柏書房6月の新刊はそんな季節にピッタリな2点となっております。帝国の時代を生きた三人の流刑者を導き手に、「故郷」ということばや去ることととどまることの葛藤をめぐる、ブルース・チャトウィン、W・G・ゼーバルトらの伝統につらなる著者による紀行『帝国の追放者たち』、動物への蔑視と憧憬が入り交じるニーチェの言葉をたどりながら、動物の知能と人間の知性をさまざまに比較、「知性」の価値と動物観を問い直す『も

          新刊速報【2023年6月版】|柏書房営業部通信

          風薫る晴れた日に外を歩くあの感じ|安達茉莉子

           風薫る、と最初に言ったのは誰だろう。  「薫風自南来」(薫風、南より来たる)と、中国の唐の時代の詩にも詠まれているそうだ。日本でも俳句の季語として、時候の挨拶として、あるいは日常会話の中で使われる言葉だけれど、子どもの頃、最初に知った時は感動した。幼心にも、風とは薫るものだった。かぐわしく、新緑の香りを運んで。  風薫る五月、びゅうびゅうと吹き荒れる風に吹かれながら、私は地元の和菓子屋に並んでいた。その日は五月五日。古来、薬草によって邪気を払い健康を祈念するための節目で

          風薫る晴れた日に外を歩くあの感じ|安達茉莉子

          Belonging|まちは言葉でできている|西本千尋

          手つかずの暗い森  飛行機でとある地方都市に降り立ち、周辺集落まで車を走らせる。車窓から目に映る景色は、どこまで行っても暗い杉林の早送りであり、何千、何万という鉛筆のような杉林の屹立する景色が終わることなく延々と続く。ふと、向山を見渡すも、山頂に至るまで、同一色のスギあるいはヒノキの人工林が続き、基本的にはどの季節であろうとまったく表情を変えない。伐期を過ぎても一向に伐り出される気配もない「手つかず」の人工林。ところどころ「あ、明るい!」と思って視線を向けると、皆伐されて、

          Belonging|まちは言葉でできている|西本千尋

          ホームシックについて|帝国の追放者たち|ウィリアム・アトキンズ【試し読み】

           2023年6月22日に、英国の紀行作家ウィリアム・アトキンズ氏による『帝国の追放者たち——三つの流刑地をゆく』(山田文 訳)が配本されます。かつて「帝国」と呼ばれた大国の「流刑地」だった三つの島を旅しながら、いまなお残る歴史的な傷跡と亀裂を浮かび上がらせた一冊です。  本書はある流刑囚三人の物語です。すなわち──フランスによってニューカレドニアへ送られたパリ・コミューンの闘士、ルイーズ・ミシェル(1830-1905)、イギリスによってセントヘレナへ送られたズールー人の王、

          ホームシックについて|帝国の追放者たち|ウィリアム・アトキンズ【試し読み】