誕生を祝うまち|まちは言葉でできている|西本千尋
21時半過ぎ。秋の夜の空気にのって、彼女の声の響きが届く。息切れしている。彼女は妊婦で、はじめての子どもを産もうとしている。彼女はわたしにとって、急にあらわれた親戚の子のようでもあり、逆にとても遠い誰かのようにも感じる。1ヶ月半ほど前に出会い、それから2日か3日に一度ほどの頻度で、話すようになった。彼女と話すのはLINE通話だ。彼女は毎月の携帯代を支払うことができず、止められている。だから、駅近くのショッピングモールの無料Wi-Fiを利用して、かけてくる。電話を押し当てなが