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新刊速報【2024年6月版】|柏書房営業部通信

 柏書房営業部です。本の世界では古書が高騰することがありますが、最近はレトロゲームが高騰しているようです。中古ショップにふらっと入ると、棚に並ぶソフトを見ながら、これ夢中でやってたなあとか当時難しくてクリアできなかったなあとかパケ裏にはこんなことが書いてあったのかなどなど思いつつ、遊ぶことのできるハードをもう持っていないのに、もう一度見るまで忘れていたのに、ソフトそのものを手元に持っておきたくなる奇妙な魅力がレトロゲームにはある気がします。ダウンロード購入が主流になった後の世界では、こうしたちょっとした懐かしさを得る場所はどこへ行くのでしょうか。
 さて、今月の柏書房の新刊は1点。インディーズシーンで注目を集める謎多き匿名作家・オルタナ旧市街が、空想と現実を行き来しながら編み出した待望のデビュー・エッセイ集『踊る幽霊』です。


『踊る幽霊』

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オルタナ旧市街 著

【営業担当・木村から一言】
 記憶はあやふやだ。砂時計のように日常に落ちて紛れてしまう。気になることはあったとしても、一粒、一粒覚えてはいられない。そうやって毎日同じような風景が繰り返される。当たり障りない日常は、時間とともに忘れてしまうけれど、時にふとした瞬間景色とともに記憶が蘇ることがあったりする。今月の新刊『踊る幽霊』は誰の記憶にも留まらないような出来事を、どうでもいいような瑣末なことを、あえて選び書き残したエッセイである。巣鴨、品川、水戸、といったように、街ごとにエピソードが綴られていく。大きなドラマは起きないが、自分の記憶の中にある巣鴨、品川、水戸がシンクロしながら踊りだす。次はどんな街のエピソードだろうかと気になりだしたらもう止まらない。誰もが一度感じたことのあるような日常こそがリアルなのだ。そんな追体験とともに書き手であるオルタナ旧市街の筆力に今度は飲み込まれていく。何事もおきない毎日こそが刺激にみちているのではないだろうかと思い至るのだ。凡庸な人生が肯定されて今度は日常が愛しく思えてくる。
 街を歩く。行き来する人々、ビルの谷間、再開発された駅前、変わらない街並み、さあ何を考えて今日は歩こうか。抜群に面白いエッセイだ。

『踊る幽霊』は、6月24日(月)の配本予定です。

重版のお知らせ

 『孤独なボウリング』が先月29日に9刷出来となりました。アメリカの地域社会の分析を通して「ソーシャル・キャピタル=社会関係資本」という概念をさらに普及させた今や古典となった一冊です。
 6月3日には『今のことばで覚える 初めてのくずし字』の3刷が出来となりました。くずし字の世界に飛び込むのにうってつけの一冊。先月発売の『漢字を極める! 古文書解読ことはじめ』とあわせてよろしくお願い致します。
 さらに6月12日は『パリのすてきなおじさん』の12刷(!)が出来予定となっております。贈り物としてもよろこばれるという声もいただいております。ぜひこれらのロングセラーもチェックしてみてください!

 来月の新刊は2点を予定しております。大物がくる予感です。それではまた次回もよろしくお願い致します。


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