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〈清涼院流水へのオマージュ〉小説

面白い「note」小説を見つけたので、ご紹介したい。

「清涼院流水」という実在の作家の作風について、多少なりとも知っている方「限定」、という趣きのあるのが難点だが、知ってさえいれば、清涼院が好きでも嫌いでも楽しめる掌編小説なので、清涼院を知っている方には、ぜひオススメしたい。

オススメの作品は、我那覇孝淳氏の「拝啓、清涼院流水様」である。

ネタ割りになるといけないので詳しくは書けないが、本作は、実話をもとにした、清涼院流水という作家の「固有性」に対する「愛を描いた小説」だと言えるだろう。

私自身はと言えば、清涼院流水という小説家をまったく評価していない。なのに、この小説を高く評価するのは、小説の語り手の「人生」に対する思いが、とてもよく描けているからである。つまり、清涼院流水が好きか嫌いかは、評価するかしないかといった個別判断を超えて、「人間が描けている」のだ。

本作に対する私のコメントは、

『古い喩えですが、かんべむさしの短編みたいな味わいで、本当に面白かった。
別視点の物語まで付いていて、サービス満点かつ皮肉も効いている。
私の場合、不味いものは不味い、と言っちゃうから、そこでおしまい。こういう物語にはならないなあ、と思いました。』

というもので、本作には、かんべむさしに通じる「ユーモアとペーソス」がある。

たぶん、若い人にはピンと来ない部分もあろうが、そこそこの高齢者にはしみじみとさせる部分もあれば、ちゃんとオチもあって、アマチュアだからといって侮れない作品。
「別視点の物語」も含めて、そこそこの年齢に達した小説読みには、是非とも読んでみてほしい作品だ。


【付言・小説家の皆さんへ】
本作を読んで、小説家の方々に感じてほしいのは「決して、ファンを軽んじたり侮ったりしてはいけない」ということだ。その意味で、「作品」を公にすることの重みを、今いちど確認していただきたい。
時に小説家は、意図せず、人の人生を左右する影響力を行使する場合があるからである。

(2022年2月25日)

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