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お気に入りの記事をまとめています。勝手に追加させて貰っているので、外して欲しい方はご連絡下さいね。
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#詩

【詩】Surviver

【詩】Surviver

端正な佇まい
口を揃えて
優しそう

あなたを心から
信じたのは
信じることに
間違いはないと
思ったから

実際それでよかった
濡れて甘い時間は
消えることなく続き

一歩足を出すたびに
すでに用意された幸せが
そこにある

隙間がないほど
バスタブにある
溢れる喜びのミルク色

時よ
止まれ

極上の幸せを手放す時が
来るなんて思わず
ただ怖かった

あなたが私を忘れて
去ってしまって
どれだ

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【詩】春よ

【詩】春よ

冬が過ぎ
乾いた大地が溶けてゆく
土は ほどけて泥となり
隠されていた 鼓動が
風に くすぐられ
想いのまま さ迷いはじめる

凍えた大地に
幽じこめていた たくらみが
痩せた素顔をあらわにして
軋むとびらを開けはなつ

日々は変わらず過ぎていく
うごめく影を見ないふりして
傷痕を 嘘でぬぐい
涙の得体をわすれてしまう

草むらに
花弁の粒が肩をならべて
瞳を 震わせている

©2024 Hir

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「書欲」(詩)

「書欲」(詩)

書くことは汚れない
私の手が
どれほど汚れても

生きることは汚れること
それはとても大らかに
その汚れを受け入れよう

雲に月が灯る
蝶に花は広がる
連なった声は名を結び目として長くなる

それらすべてを書いていたい
書いていたいのだ 私のままで

どんなに汚れが身を燃やそうと
私のペン先は静かに

【詩】海辺のトンボ

【詩】海辺のトンボ

浜辺を、トンボが飛んでいる
ガラスの翅を、震わせて
右へ、左へ、餌食を追って
トンボの群れが、飛んでいる

岸辺に寄せる波の音
時に烈しく、時にやさしく
飽くことなく、叩きつづける
やるせなく、ひびきわたる咆哮に
深い暗い水底で、空に焦がれていた頃の
陸を目指して、息を切らしていた頃の
潮の匂いが、懐かしい

トンボの空を、燕が通りすぎていく
羽ばたいて、風を追いかけている

飛ぶことは、叶わなか

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SS【未練】#シロクマ文芸部

SS【未練】#シロクマ文芸部

お題「詩と暮らす」から始まる物語

【未練】(1088文字)

 詩と暮らすからには小説とは手を切らなくてはいけない。

「そこまで頑なにならなくてもいいんじゃない?」
 お気楽ポエマーのみどりちゃんはそんなことを言うけれど、これまで小説と関わったこともないみどりちゃんに私の気持ちがわかるはずがない。
「二股かけるわけにはいかないわ。私の気持ちがすっきりしないの」
「そんなにいい詩なんだ?」
 み

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【詩】刷り込み

【詩】刷り込み

思い出した
すっかり忘れていたのに
あなたはこんな風だった

きれいごとの言葉の中に
釘やらガラスの破片やら
折れたナイフを入れ込んで
知らんぷりをする

自分の否を指を折って数えても
そこに答えはなくて

気まぐれに振り回されて
落ち込むのはこっちの方

あなたの優しさは自分に帰属してるもの
すっかりあなたは優しいと思い込んでた

思い出せばあなたは元々そんな風

あなたの傷を私が必死で癒して

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【詩】忘れたとしても

【詩】忘れたとしても

結んだ手と手

どうして今になって
こんな小さなことが
大事だなんて

懐かしい夏の香り
遠い面影の湿り気のある空気
木陰のタオル
汗を拭く
母さんに渡される
ペットボトル

母さんのしてくれていたこと

出来ないながらに
台所での母さん
ウロウロと
落ち着かないのは
何かを作りたいから

砂の山が崩れていくように
普通の生活が崩れていく

大事な思い出と
消えていく思い出

二人で歌う好きだった

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【詩】咆哮

【詩】咆哮

海が、嚆々と鳴っている
たたみかける波の向こうから
絶え間なく、波の砕ける向こうから
片時も、休みなく
強くおどろに、とどろきわたる

眺めわたす水平線は
遠い浜辺の並木のように
波の起伏を繰り返す
平らにひろがる海原は
光と影をみなぎらせ
鷹揚に、浮き沈みを繰り返す

巨大な魔物が、棲むという
足を掴み、海の底まで引きずりこむ
姿を見せぬ、黒い魔物
陸に向かって、吠えている
やるせなく、怒りにま

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詩84/   あの日の雨

詩84/ あの日の雨

雨は
都合よく
止ませたりなんて
出来ないものだ

あの日は
雨の強い日だった

僕は
止むのを待たずに駆け出した

君は
止むまで待って歩き出した

彼は
行くこと自体を諦めた

彼女は
傘を探しに行ったらしいが

同じ行き先を
思い描いていたはずだった我々が
その後落ち合うことは
もう無かった

その時は

それぞれ
そうするしかなかったのだ

僕も
君も
彼も
彼女も
あの時は
他に選択肢

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あぐ[詩]

あぐは鮮やかな緑だった 
俺や他の子は赤や青
そんなあぐになりたかった

あぐは風のように速かった
ブンブル手足を回して回して
あぐは俺のずっと先にいた

あぐは海を知っていた
勇気 友情 ユーモアを
そんなあぐが優しかった

あぐはなんでも聞いてくれた
ニコニコ笑って 時には叱って
そんなあぐが大好きだった

あぐが気づかせてくれたことが
今でもキラキラしている
ずっとずっと先のあぐが
優しく聞

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【詩】幸福の報酬

【詩】幸福の報酬

どうにかがんばって
突っ走ってきた
得たいものは得られる

がむしゃらの先にある
それ相応の報酬
それ相応の暮らし

脈絡のない意識の高さで
なんとか這い上がった

戻ることを許さない
そこまできた

それでもカップに入った
虹色の液体は一向に
一杯にならない

入れても入れても
こぼれることもなく
ただ溜まらない

幸福は報酬に比例するはずだった

欲しいものは一通りある

それなのに幸福だけが

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詩70/   水の旅

詩70/ 水の旅

彼女は
とある学校の理科室で
水素と酸素の混合気を燃やす実験で
微量の水として生まれた

そのまま
水蒸気として空へ

やがて
自分と同じような奴が集まってきて
綿みたいな雲になった

集まりすぎて
重くなったと思ったら
今度はいつの間にか
雨の雫になっていた

地面に落ちた彼女は
土の中に染みこんでいった
そして
木の根っこに吸い込まれ
気がつくと
その木の果実の水分になっていた

その果実を

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【詩】Prayer

【詩】Prayer

痛いのは誰かの手首の傷
日ごと出るあの日の憂い話
舐めあう傷の生暖かさ
ではない

漆黒の闇からの手の多さ
逃げるために
後ずさりする

笑いながら地上から去れ
と手首をつかむように
毎日頭の中で
聞きたくない言葉が
響き渡る

否定的な言葉に
剣を持って
泣きながら戦う
誰にも言わず

毎日毎日
ここにいる
ここにいると
繰り返す

隣で微笑んでいる人に
漆黒の話をするのは
辛すぎる

どうぞど

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詩 「海の見える家」

ここは
海の見える家

これは
来世の物語

ちいさな庭に咲く
花に水をやり
枯れないように
まいにち世話をする
きみの後ろ姿を眺めるのが
ぼくの生きる意味で
ここにいる理由

日曜日の朝
自転車に乗って
海まで行こう
それから
砂浜で
ふたり並んで
遅めの朝食をとろう

ぼくは
この人生では
何も欲しくない
きみがさっきくれた
四つ葉のクローバーが
ぼくのいちばん大切なもの

そんなふうに
日々

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