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詩84/ あの日の雨

雨は
都合よく
止ませたりなんて
出来ないものだ

あの日は
雨の強い日だった

僕は
止むのを待たずに駆け出した

君は
止むまで待って歩き出した

彼は
行くこと自体を諦めた

彼女は
傘を探しに行ったらしいが

同じ行き先を
思い描いていたはずだった我々が
その後落ち合うことは
もう無かった

その時は

それぞれ
そうするしかなかったのだ

僕も
君も
彼も
彼女も
あの時は
他に選択肢はなかったのだ

そして今

どこかで
多分

それぞれの人生を
雨の日も
晴れの日も
必死で生きている

それで
いいじゃないか

今の時代は
あの頃よりも
雨の降り方がきついよな

でも
雨はいずれ止むものだ
それも皆
よく知っているはず

さよならさえ
言いそびれたままだけど
何処かで
元気で

雨上がりの空の
雲の切れ間を
濡れて震えずに
見上げていることを祈っている



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