加澄ひろし|走る詩人

『走る詩人』加澄ひろしです。詩を書いています。【自然派】ときに【社会派】 自然を愛し、自然を歌います。 2022年10月 東京から宮崎に移住しました。 kasumi@tokyo.ffn.ne.jp

加澄ひろし|走る詩人

『走る詩人』加澄ひろしです。詩を書いています。【自然派】ときに【社会派】 自然を愛し、自然を歌います。 2022年10月 東京から宮崎に移住しました。 kasumi@tokyo.ffn.ne.jp

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    【詩】メッシーナ(海峡)

    大陸が伸ばしたつま先と 島から突き出た嘴が 触れようとする 青い、青いすき間 水面は深く揺れている 底知れぬ力を空に向けて 青い、青い水の路に 沈黙を湛えている 南イタリア、オリーブの実る岸辺 レッジョカラブリア 旅の列車はなじみの船着き場で スイッチバックを重ねて 長い車列を折りたたみ 船の揺りかごに横たえる しばしの眠りに 安堵の息をひそめている 船は波止場を離れた 波立つ潮の鏡を踏んで 滑らかな航跡を刻もうとする 滔々と流れる 大河のような無限の波 潮は、押し寄せ、

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      • 【詩】河口にて

        果てない遠くから、煌めくしぶきが 押し寄せて、川面を押し返す 岸辺を叩く潮の調べ、繰り返す鼓動 沖合に、隠された瀬に白波が躍る 砕け散る潮の色が、震えて みつめる耳を、脅かす 絶え間なく吹きすさぶ風にのり 肌を刺す、潮のにおいが 陸に打ち上げられたむかしの 消えかけていた記憶を、呼び覚ます 大地に生きる刹那の命は 山で削り落ちた一片の石ころに同じ 転がり、磨り減り砕けて 砂となって、埋もれてゆく 河口に落ちれば、潮に洗われるだけ わたしは、広げた腕に日射しを抱えて 遠い

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        • 【詩】油津へ

          宮崎発、二両編成の古びた列車が ガタゴトと、馴染みの線路を踏みしめる 体を揺すって、狭い小道を進んでいく ディーゼルの大きな音を響かせて ゆったりと、足を伸ばして 道の起伏を楽しもう 大きな空、見わたす海 眺めは、のんびりと通りすぎる 油津は、約束の地だ 航路につなぐ、希望の港だ 列車は、トンネルを駆け抜けて 熱い日射しの浜辺を目指す ふり向けば、山が静かに佇んで 潮のにおいを呼吸する カタコトと、転がる車輪に耳をすます 視線は、海原のかなたを泳ぐ ©2022  H

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          • 【詩】空の眺め

            空を見あげている 青空に、雲が横たわっている 白い雲、灰色の雲、分厚い雲、薄い雲 どんな力の仕業だろうか 果てしなく、浮いて流れるこの空の どこに真実があるのだろう   眼に映る、大空の絵は 一瞬に過ぎゆく、奇跡の眺めだ 絶え間なく移ろい 色も形も、とどまることはない 二度と、同じ姿にもどりはしない 不規則が、規則的に重なり合い 連続が、不連続に繰り返す   人は、空へ空へと背伸びをして 眺めの麓を侵してゆく 我が物顔で立ちふさがる だが、坂を下る景色の向こうに 見失ってしま

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          • 【詩集】宮崎にて
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          • 【詩集】自然派
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          • 【詩集】イタリア紀行
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          • 【詩集】多摩・武蔵野
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            【詩】武蔵野線

            あなたに、手を引かれて 武蔵野線で、祖母の家に向った 電車は暗いトンネルの中を 轟音を立てて走って行く 暗闇の線路を、スピード上げて 耳を塞がれて聞こえないのに あなたは、いつも喋っていた やがて線路は浮上する トンネルの闇を抜け出して 秘密基地から発射したみたいに 電車は地上に飛び出した 嘘のように静かになって 車内は光につつまれる 宅地を見おろし、畑を見おろし 団地を見わたし、森を見わたし 電車は駆ける、空中の道 滑らかにゆくオレンジ色は 野原を泳ぐステンレスのヘビだ

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            【詩】宮崎にて

            ひなたの日差しは、とてつもなく眩しい 伸び盛りの草は、色濃く目に鮮やかだ 空港のブーゲンビリアの赤い花が やわらかく、揺れている 神宮の夏越の祓の茅の輪くぐりが しめやかに、佇んでいる   日向の国、宮崎 ここは、古来の神々が宿す 神話と信仰のふるさとだ 山の深い起伏と、蒼く見わたす海原の 神秘の眺めに、心をすまして 人は、つかの間のくつろぎと 豊かな実りにあこがれて 見知らぬ古址をおとずれる   旅人は、日向かう大地で 晴れ渡る空を見あげて はばたこうとする、高天原へ 見晴

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            【詩】秋の気配

            昨日まで、高く青かった空に 深く、雲が立ちこめている 灰色の、光と影の波 そのむこうに 確かに感じる、熱いまなざし 執拗な真夏の吐息が、まぶしい 風が、素肌を涼しくする もはや、思い出そうとはしない 蒸せかえる、汗のにおいを 風向きが変わったせいだ 樹の幹は、たわわに繁る頭を支えて まだ遠い彼岸を待っている 夏は終わりを告げはじめた ひき止めるすべはない なぜ、失われていくのだろう ノウゼンカズラのオレンジ色 咲いては散り、萎びて干からびる 陽を浴びた、鮮やかな記憶は

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            【詩】樹の夢

            昨夜、わたしは一本の樹であった 地に根をはった、瑞々しい樹であった とはいえ、初々しい幹をしならせる 何も知らぬ、若木ではなかった もういく度も、花を咲かせ実をつけて くり返す、芽生えと落ち葉の定まりに 疲れはじめた樹であった 春、目覚めをおぼえ 梢を震わせながら 無数の小枝に葉を繁らせて おびただしい生き物たちの家となり 力いっぱい、背伸びして 地中深く、足を踏ん張り やがて、夏の陽を両手にかかえて 大地に生まれたよろこびに 体いっぱい、満ち満ちる 指先に咲かせたいくつも

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            【詩】風のにおい

            この場所で十五年、眺めていた まだ、蓋をされていない頃からだ むこうからこっちまで 透きとおって、何もない自由を 君は、当たり前に駆けていた 森にあそび、野原にころび 水にしたしみ、土にたわむれ 鳥を梢の枝に、はこび 虫を草の葉先に、さそう 春のひざしに、君をみた 桜の花を通り抜けて 山吹色を反射して 瞳の憂いを透かしていった 夏のあらしに、君をみた 蒸した草木の 熱い息吹を にわかの雨に巻き上げた 秋の夕べに、君がいた 枯れ草の茂みにバッタが跳ねて 明るく浮かんだ満月から

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            【詩】秋風

            秋の朝を 渡る風はきびしく吹いて 指のさきを冷たくひやす 流れる空気に我が身をさらせば 浴びる日差しがあたたかい こずえを渡る風の音が ザワザワと ざわめいて しげみに騒ぐ風の光が キラキラと きらめいて 数知れぬ葉のひとつひとつが 思い思いに 風に揺れて  思い思いに 光を跳ねて 銀色のしぶきを散らしてみせる 光の粒のひとつひとつが 思い思いに 瞳に揺れて  思い思いに 心を照らして かがやく泡をまたたき放つ こずえを渡る鳥の声が ピィピィと とびはねて

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            【詩】仰向け

            森のほとりの草地に ゴロリと寝ころんで 空を見あげている 目を閉じて、耳を澄ませば 素肌を、やわらかい風が撫でてゆく 見えない景色が、通りすぎる 線路をたたく電車の音が 軽やかに聞こえてくる 用事を急ぐ人をのせ 都心に向かっているのだろう 救急車のサイレンが けたたましく通りすぎる 傷ついた人を励ましながら 病院に向かっているのだろう はるか上空を飛ぶ飛行機が ジェットの音を響かせる いや、ちがう 機体は音もなく滑っていく 響きは後ろをついていく 旅を楽しむ人とともに 西へ

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            【詩】ペルージャにて

            麓のターミナルでバスを降りて 石の城塞をつらぬく エスカレーターで丘をのぼる 古史を偲ぶ暗がりのむこう ウンブリアの陽光があふれ出る   イタリア、アペニンの山懐 ペルージャのいただきの 小さなふたつの広場をつなぐ 五百メートル足らずの目抜き通り コルソ・ヴァヌッチは 老若男女、あふれる人が 行ったり来たりをくり返す   丘の斜面に張りついた この町に住む人々も 通りすぎる旅人たちも 夜となく昼となく 飽くことなく、そぞろ歩く   古びた街なみに刻み込まれた 車道もなく歩道も

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            【詩】夜明け

            一瞬の出来事であった 黄金色の光のひろがりが たまらぬ眩しさを放ち 空のすべてを覆いつくした なにもかも、かがやきわたり 空気は赤く染まっている 地平のかなたから 明々と燃える太陽が 音もなく、のぼろうとする その放射は、 瞳を刺し、頭を貫いてゆく   強烈な光のまぶしさよ  眠気を祓いたまえ   邪気を祓いたまえ   真一文字の光の先に すべて、かがやきわたり 金と銀の無数の反射が 寝覚めの瞳を見開かせる 樹々は黒々と繁茂を揺らして はじまりの合図を告げる 押し寄せてくる

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            【詩】野火止用水

            用水の道を辿っていた 草の茂みがあった 確かな流れがあった 鯉が泳ぐ背中があった 森に続く道があった 命をはぐくむ畑地があった   風が吹いていた 土ぼこりがあがる つんと鼻を刺すのは 懐かしい泥のにおいだ 陽射しが照りつけている ぱちぱちと焼く音が聞こえる 竹藪の向こうに熱い気配がある 鳥たちが飛びたつ 獣たちが足をかける 人々が逃げまどい 燃えさかる炎におびえている 火を水がせき止めた 人は安堵をとりもどした   水を通す深い溝は 溜めては流し、溜めては流して 淀みと奔り

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            【詩】青い家

            ふたつの線路が合流する 三角形の先端の土地 こんもりと盛り上がった 岬のような馬の背に ちいさな家が立っている   はじめに、詩人が住んでいた 詩人は空にあこがれていた 壁も扉も、空の青で塗りつぶして 空に透きとおる詩を書いた もっと大きな空を求めて 遠い高原へうつっていった 玄関に、青い言葉が記されていた   次に、画家が住んでいた 青い言葉を部屋に飾った 透きとおる絵の具で、窓のガラスに きよらかな風の色を描いた やがて、見たことのない光をさがして 異国の街へ旅立った 風

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            【詩】ミラノにて(夕暮れ)

            メトロの出口を抜け出すと 広場は金色の夕陽につつまれていた 足早に通り抜けていく者たち くつろぎを探して立ち止まる者たち 出会いを求めて彷徨う者たち 人と人が交錯し、足音を残した一日が 慌ただしく、暮れようとしている   イタリア、ミラノにそびえ立つ 巨大なドゥオモの正面の 広々とした空間を 夕暮れの風が、吹き抜けていく 日中のにぎわいは、熱気を奪われて 立ちこめていたざわめきが 路地の暗闇に、吸いこまれていく   羽ばたき放つハトの群れは 屋根のすき間のねぐらに向かう 彼処

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