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傾きかけた陽射しの隙間 二双のトンボが飛んでいる 繋いだ尾に かたい絆を確かめて 背負い …
田んぼの脇のアスファルトに ぺしゃんこの蛙が 干からびて 骨をさらけている 乾いた地面に …
トンボの群れが 空に浮いて 風のすき間を泳いでいる 右から左へ 上へ下へ 水平飛行と急旋回を…
この岸に 寄せくる波は どこからやって来るのだろうか 見果てぬ海の つらなりの どこかに …
軒先のツバメの巣に 一羽の雛が取り残されている 不意の孤独に戸惑うように 目を見張り、声を…
冬が過ぎ 乾いた大地が溶けてゆく 土は ほどけて泥となり 隠されていた 鼓動が 風に くすぐ…
雑木の錦が くすんで 藪のしげみの ところどころ ハゼノキが あかく アカメガシワが きいろく 袖を ひろげている ちいさな羽も おおきな翼も ふるわすもなく はばたくもなく たたずみ 虹の絵がらを 咲かせている 静んだ木立ちに 調べをうたい 渇いた河原に 波をそそいで そっと 灯されたときめきは 風が挟んだ みじかい栞だ つづられてゆく 季節のはざまで たちどまり 足踏みしている やがて 余白をはなれ 冬のページが めくられる ©2024 Hiroshi Kasu
土手は枯れて、田畑は渇いて 霜の気配が、走りはじめた トンボの群れの賑わいも 蹴散らすバッ…
浜辺を、トンボが飛んでいる ガラスの翅を、震わせて 右へ、左へ、餌食を追って トンボの群れ…
色褪せた羽を はためかせ 君は 力なく風にのり 盛りを過ぎた 蕾の奥に わずかな花蜜を さ…
今日も空は青く、風は心地よい 見下ろす眺めは広く、美しい 降りそそぐ、陽の光りが ひろげた…
川床は青々と、水を湛えて 土手は、草のみどりに包まれている 君は、草いろのシャツを着て ご…
透き通る 空に綴じた網の目の 風を孕んだ 真ん中で 斑らの蜘蛛が 逆立ちしている 身じろぎ…
用水の路は、日差しを浴びている 田畑は、刈り入れを終えて 乾きかけた土に、名も知らぬ草葉の 貪欲な緑が、ところ構わず靡いている 水門は、開け放たれている 畦を走る水は、どこへともなく 勢いのまま、抜け口を目指し 低い喉の音で、土手の渇きを癒していく 圃場は、陽炎に揺れている 陽に晒され、熱に揉まれ 風に抗い、奔流に浸した記憶は 黄金色の波間に溺れていった 苗床は、冬の支度をはじめている 畔で、小さな花が震えている まもなく、白く凍りが降るだろう 言葉もなく、立ち止まる岸