【詩】別離
長年 座り続けた小箱から
雑多な中身をさらけ出し
横づけされた 荷台にのせて
見知らぬ先へ運び出す
窓の中は あっけなく空っぽで
冷え切った 伽藍堂に
淡く 染みついた 影法師が
声もなく 浮かんでいる
すれ違えば 目と目を交わし
挨拶だけ 見覚えだけの
名も知らぬ 顔なじみ
振り向くもなく 立ち去っていった
休日以外 九時から五時の営みは
ふたを閉じ 灯りもはずして
小さな貼り紙だけ 行き先を告げている
道ばたに 置き去られた猫が
風の匂いに 鳴いている
©2024 Hiroshi Kasumi
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。