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午前の朝ごはん

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思いつき短編のまとめ
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2022年6月の記事一覧

思いつき短編:赤子の家

扉を超すたびに自分がおかしくなっていくのを母は感じていた。

そもそもおかしな世界に迷い込んでいるのだから無理はないのかもしれないが…。

だからといって人型の意思疎通のできるパンを食べてしまったのはなんとも複雑な気持ちだ。

これは、罪を犯したことになるのだろうか…。

回復した身体で次の部屋へと向った。

地下室だった。

青白い蛍光灯と緑色の光があちこちで光っている。

透明のガラス瓶の中に

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思いつき短編:死→MISSION

私のもとに手紙が届く、内容はこうだ。

MISSION:大統領の娘、救出作戦

エージェントはテロリスト集団の住む食品工場へ向かう為に他のエージェントと落合う。

まず最初、一回自殺する。

その後即座に復帰したあと、車に乗り込み二人でテロリスト集団の一員である男性をつけて身柄拘束する。

そこでもう一度、自殺をする。

再び復帰したら身柄を拘束した男性から持っている情報をすべて聞き出し、本部へ送

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思いつき短編:牛乳の家

今いるこの建物は、元は小さなビジネスホテルだったらしい。

朝方なのか、夕方なのかは同じ薄暗さなのでわからない。

恐る恐る、歩き回る。

扉があるところは、今と違う場所に行かないように鉄パイプのようなもので破壊してから中へ入った。

ーーーーが、特にこれといったものは発見できなかった。

最後に、3人は地下にある電気制御室へ向った。

薄暗くて不気味だ。

電気制御室の前につくと、扉があったがこ

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思いつき短編:自殺村

俺らが大学に通っているときの話だ。

大学が比較的大自然に囲まれているところにあり、地元の人達とも交流が多く、よく森の中のゴミ拾いのボランティアや除草作業などをやっていた。

夏休みのその日も仲間と集まってゴミ拾いや除草作業をしていた。

ある程度、時間や範囲を決めて作業をしていたのだが、いつの間にか辺りが薄暗くなって夕暮れになっていた。

森の中の夜は危険だ、野生動物が、特に熊なんかに襲われでも

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思いつき短編:事故不動産

チリンッチリンッチリンッーーーー。

店内に来客用ベルの音が鳴り響いた。

二人の男女カップルが来店したようだ。 「いらっしゃいませ、今日はどんな物件をお探しで?」

上から下までピシッと決まった接客社員が対応する。

「あの、なるべく駅の近でーーーーー」

客が色々条件を述べた。

どんなに苦しい条件を言われてもニコニコして話を聞いている。

一通り聞き終わると、3件のお部屋を提示した。

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思いつき短編:続毛人様

山の中は林業が盛んなためか意外にも整っており、刑事の足取りを邪魔するものがなかった。

それでも足跡を見つけるのは容易だった。

なぜなら、その足跡の部分だけ土や植物が枯れていたからだ。

どんどん、どんどん、奥へ進んでいく。

景色は変わって、人間の手が加わっていないありのままの山中へ入った。

変わらず足跡は目立つが、刑事の額には汗が滲み、疲労が出てきた。

一体どこまで続いているんだと愚痴を

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思いつき短編:迷う家

それは、都市開発中の住宅地の中にポツンと立っている。

周りは土地の買い手がまだ見つからず、空き地となっていた。

いや、もしかしたらもはや買い手は見つからないかもしれない。

なにせ、その家の周辺以外はもう、家が立っているから。

それだけ曰く付きだということだ。

黒ぐろとした瓦屋根はひび割れが起きており、隙間からは雑草が生えている。

白壁も少し黄ばんでいて、つる草が壁を登るように茂る。

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思いつき短編:テッペンタケタカ

テッペンタケタカーーーーーーー。

テッペンタケタカーーーーーーー。

テッペンタケタカーーーーーーー。 

テッペンタケタカーーーーーーー。

鳴き声がそういう感じで聞こえる鳥がいる。

この鳥の名はホトトギス。

全長:28cm

屋久島以北の山地の林に飛来。

北海道では南部のみで少ない。

ヒヨドリほどの大きさ。

腹のしま模様はカッコウより太く、少ない。

主にウグイスに托卵する。

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思いつき短編:蜃気楼

とうとう7月に突入したーーーー。

僕は夏休みに祖父母の家に1人で遊びに行くことになった。

両親に今年の夏休みは1人で祖父母の家に遊びに行きたいとわがままを言い、小学3年生の僕は今、電車に揺られている。

年々暑さを増す夏の気温に逆らうように電車の中はキンキンに冷房が効いていた。

7人がけの席に1人で座って、寒さを払うように袖から出た二の腕辺りを手で擦る。

麦わら帽子に青いリュックを膝の上に

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思いつき短編:卒業

蛍の光 窓の雪
書(ふみ)読む月日 重ねつつ
何時(いつ)しか年も すぎの戸を
開けてぞ今朝は 別れ行く

止まるも行くも 限りとて
互(かたみ)に思ふ 千万(ちよろず)の
心の端(はし)を 一言に
幸(さき)くと許(ばか)り 歌ふなり

筑紫(つくし)の極み 陸(みち)の奥
海山遠く 隔(へだ)つとも
その真心は 隔て無く
一つに尽くせ 国の為

千島(ちしま)の奥も 沖繩も
八洲(やしま)の内

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思いつき短編:カコイカコマセ

真夜中の寝静まった寝室に奇妙な音が聞こえる。

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ……。

カコイカコマセ、アンタノジンチ。

カコイノソトハアタシノジンチ。

アタシハオマエノジンチニハイレヌガ、オマエガアタシノジンチハイラレバ、ハミデタユビサキチョンギルゾ。

何かが敷き布団の周りを何かを引きずりながら廻っている。

カコイカコマセ、アンタ

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思いつき短編:増殖死

今日も俺は朝を迎える。

スマホでセットしてあるアラームで目が覚めた。

朝起きてまずやること、それは昨日の自分の死体を片付けること。

なるべく小さく、細かくして目の前に広が る海にばら撒く。

どいうことか詳しく説明をすると、俺の肉体は朝起きてから24時間つまり1日しかもたないのだ。

でもとついうわけか、目が覚めると昨日の 自分が隣で横たわり、俺は今日1日の肉 体を得ているのだ。

めんどう

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思いつき短編:毛人様

1台のシルバーのセダンがとある村へと向っていた。
助手席には経験豊富な先輩刑事と、刑事課に入って間もない新米刑事が運転をしている。
時折くぐもった音で無線機から話し声が聞こえるが、まるで興味がないかのように現場へ急ぐ。

到着した時にはお昼を少し過ぎていたーーーー。
現場は数台のパトカーが止まっており、立入禁止の規制線が張られていて、二人の警察官が立っていた。
セダン車は数メートル手前で停車し、車

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