山の中は林業が盛んなためか意外にも整っており、刑事の足取りを邪魔するものがなかった。

それでも足跡を見つけるのは容易だった。

なぜなら、その足跡の部分だけ土や植物が枯れていたからだ。

どんどん、どんどん、奥へ進んでいく。

景色は変わって、人間の手が加わっていないありのままの山中へ入った。

変わらず足跡は目立つが、刑事の額には汗が滲み、疲労が出てきた。

一体どこまで続いているんだと愚痴をこぼしながら登る。

普段、足腰には自信があった刑事も適当な場所で腰をかけた。

ふくらはぎの辺りがぷるぷる笑って思ったように歩けないのだ。

ハンカチを出して額の汗を拭っていたときだ。

ふと、視線を右にやると大きな穴が岩壁に空いていた。

足跡はそこへ続いていた。

刑事は震えるふくらはぎに鞭を打つように立ち上がり、穴へと向かった。


ペンライトの頼りない光が穴の中を照らす。

目に映るのは、乾いた岩肌だ。

もし犯人がこの穴の中に潜んでいるのであれば警戒して進まなければならない。

ーーーーが、穴の奥は直ぐに行き止まりになってしまった。

頼りない明かりで上下左右、辺りくまなく見て廻る。

何も居なかった。

なんだよ、とため息混じりに吐き出すと振り返って出口の方へ向った。

その時だーーーーーー。

刑事の背後に黒い影が立ちはだかっていた。

ペンライトで足下から上へなじるように照らす。

その姿はまるで海外のUMA、ビッグフットのようだった。

身長は2mくらい、身体つきはまるで力士のようで全身アルパカの様なふわふわした茶色の毛が生えている。

震える手を抑えながら顔の方へライトを照らした。


モチャモチャと口のようなところを何か咀嚼していた。

顔は毛虫の顔、そのものだった。

小さな丸く黒い眼球が刑事を捕らえている。

「毛人…………様」

いつの間にか村人が言っていた名前を口に出していた。


ゔぉぉぉぉおおおおおおあああ!!!


骨に響くほど叫んだかと思うと、熊のように両腕を上げて、刑事を押し倒した。




普段静かな山奥の穴の前に、大人数の人だかりが出来ている。

警察関係者が一人、行方不明になったので捜索していたところ、山奥の穴ぐらの奥で倒れていた。

発見したときには、見るも無惨に身体が腫れ上がっており、所々から膿が流れ出していた。

体の前面には茶色いふわふわした毛が付いていたとのことーーーーーーーー。


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