思いつき短編：カコイカコマセ

真夜中の寝静まった寝室に奇妙な音が聞こえる。

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ……。

カコイカコマセ、アンタノジンチ。

カコイノソトハアタシノジンチ。

アタシハオマエノジンチニハイレヌガ、オマエガアタシノジンチハイラレバ、ハミデタユビサキチョンギルゾ。

何かが敷き布団の周りを何かを引きずりながら廻っている。

カコイカコマセ、アンタノジンチ。

カコイノソトハアタシノジンチ。

アタシハオマエノジンチニハイレヌガ、オマエガアタシノジンチハイラレバ、ハミデタアシサキチョンギルゾ。

ボソボソと呪文のように何か言っている。
ジンチ？陣地のことだろうか。

スーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ…………、スーッ…………、

ススーッ……。　

幼い頃によく広い公園で木の枝を使って友達と自分の周りを囲って「ここ、俺の陣地！」とかやるがそのような感覚だろうか。

薄く目を開けて見る。

見ると、髪を振り乱してボロボロの衣服を纏い、鎌を持つ腰の曲がった小さな老婆が、後ろ歩きで鎌を畳に軽く刺した状態で布団の周りを線引いている。

スーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ…………、スーッ…………、

ススーッ……。　

カコイカコマセ、アンタノジンチ。

カコイノソトハアタシノジンチ。

アタシハオマエノジンチニハイレヌガ、オマエガアタシノジンチハイラレバ、ハミデタユビサキチョンギルゾ。

詩の内容は、老婆の引いている鎌の外に身体を出すと持っているその鎌で斬られるということだろうか。

すると急に眠気が襲ってきた。

クソッ、こんな時に眠ってしまったら大変なことに。

二の腕辺りを思いっきりつねってみる、少し目が覚める。

また眠気が来たーーーーー。

今度は頬をつねる、再び目が覚めた。

それを必死で繰り返しているうちに目覚ましのアラームが鳴る。

「って事があったんですよ」

会社に来て職場の先輩に昨日の夜からの出来事を話した。

「またまたぁ、冗談だろ？どうせ飲みすぎて酔っ払った勢いで身体のあちこちをぶつけたんじゃないのか？」

先輩が笑う。

「ホントですって！今日会社に行くのどれだけ憂鬱だったことか…」

はいはいと、軽くあしらわれ今日の業務が開始された。

「っあ"〜今日も疲れた……」

仕事を終えて自宅へ帰ってきた。

時計を見ると、針はもう夜中を指していた。

もう動けなくなっていつの間にか眠りについていた。

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ……。

奇妙な音で目が覚める。

(あれ？誰かいる………)

もしや、鍵でも閉め忘れて誰かが不法侵入してきたと思った。

だが次の瞬間にはソイツが誰なのかわかった。

カコイカコマセ、アンタノジンチ。

カコイノソトハアタシノジンチ。

アタシハオマエノジンチニハイレヌガ、オマエガアタシノジンチハイラレバ、ハミデタユビサキチョンギルゾ。

仕事の後輩が言っていた奴だ、とにかく起きて警察に突き出さないと。

ーーーーが、体が動かない、金縛りのようだ。

カコイカコマセ、アンタノジンチ。

カコイノソトハアタシノジンチ。

オマエノジンチガツクレヌナラバ、オマエノチニクヲサバクダケ……。

オマエノジンチガツクレヌナラバ、オマエノチニクヲタベルダケ、オマエノチニクヲタベルダケ。

捌く？食べる？おいおい、ちょって待ってくれよ。

俺、人間だぞ？アルコールと煙草塗れで美味しくない。

やめろよ…そんな目でこっちに来るな！

来るなぁぁぁぁぁぁあああああああ！！！！

「ーーーー可笑しいなぁ、今日は先輩と一緒に外回りのはずなんだけど、出勤時間になっても来ないな、

今まで無遅刻無欠席だったのにどうしたんだろう。電話、かけてみるか」

プルルルルル、プルルルルルーーーカチャッ

「あー、先輩？何やってるんですか、もう仕事始まりますよ！！」

………………。

先輩？

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ……。

カコイカコマセ、アンタノジンチ。

カコイノソトハアタシノジンチ。

アタシハオマエノジンチニハイレヌガ、オマエガアタシノジンチハイラレバ、ハミデタユビサキチョンギルゾ。

カコイカコマセ、アンタノジンチ。

カコイノソトハアタシノジンチ。

オマエノジンチガツクレヌナラバ、オマエノチニクヲサバクダケ……。

オマエノジンチガツクレヌナラバ、オマエノチニクヲタベルダケ、オマエノチニクヲタベルダケ。

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ…………、ススーッ…………、

ススーッ……

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今日もみなさまがいい日でありますように🥰

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