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障害児ママ歴10余年。note更新不定期。メッセージはこちらへお願いします→ http…

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障害児ママ歴10余年。note更新不定期。メッセージはこちらへお願いします→ https://note.com/nana_nananam/message

記事一覧

飛騨市じゃない方の人間

「薬を服用してるのに、環境設定も必要なんですか?」 クールダウンできる静かな場所を確保してもらいたいと頼んだら、そう言って首をかしげた支援級の先生。 「きのうは…

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斜線の通知表

先生が伏目がちに手渡してきた通知表には、縦にずらりと並んだ斜線が記されていた。金縛りにでもあったのだろうわたしはそこから目が離せなくなって、けれどもこんな通知表…

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2か月前
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桃鉄で癇癪、罪深き桃鉄

夫が新しい桃鉄を買ってきた。 それは息子が1ヶ月も前から「やりたいやりたい!」と懇願していたあの桃鉄だった。発売日当日に、「そりゃあ買うでしょ」と当然のように買…

nanam|なな
5か月前
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「支援級はバカなの?」と聞いてきた君へ

わたしの息子には発達障害があって、そのため小学校は通常級ではなく特別支援学級を選んだ。支援級は通常級と違って授業の進み方もゆっくりで、一クラスの人数も少ないので…

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7か月前
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挨拶をありがとうへ告白「興味関心」

あれはプラスチックゴミの収集日で、これから始まる猛暑を予感させるような初夏の日だった。朝からとにかく蒸し暑くて、人に会えば「暑いですね」と、それを挨拶代わりにし…

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7か月前
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就学相談と決めつけ厄介

発達障害は外からは見えづらい障害だというそれは、そういう子をこれまで育ててきた親にとってはとても鮮明に見えたりする。幼いときほど特性が表に出ると言われるけれど、…

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8か月前
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サポートをありがとう

昨日のこと、生まれて初めてサポートしていただきました。 突然のことに驚き、そしてそこへ添えられていた嬉しい言葉に舞い上がりました。感謝の気持ちでいっぱいです。 …

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8か月前
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8月の酔っぱらい

「酔っぱらいって、こういうこと?」 ふわふわした頭に届いた息子の声。 今年の夏は過去最高の暑さと言われたが、八月下旬の夜道は日中のベトつく煩わしさから解放されて…

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8か月前
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「カス」と言われた女

その日、SNS(X)で親しく拝見していた方の投稿に暴言が書き込まれた。いつもなら黙ってやり過ごしていただろう。だけどわたしはどうしても許せなくなった。そして自らそこ…

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9か月前
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言葉に代わるもの

その喫茶店には病院の帰りに足を踏み入れた。ネットの口コミで周到に調べただけあって、一目惚れだった。わたし好みの喫茶店だ。カフェというより『喫茶店』と呼びたくなる…

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9か月前
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七日間の蝉

汗が首にまとわりつく暑さに、放心しながらも聞こえてくるセミの声。太い幹の木の前で足を止めた息子が、スッと手を伸ばした。 「捕まえた」 そこには息子の親指と人差し…

nanam|なな
10か月前
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「学校に障害児対応の勉強会はありますか?」 学校への思い、わたしの思い

こんにちはnanamです 少し前になりますが、自身のTwitterで教員の方に向け、教えて欲しいとツイートしました。 そういえばもうツイートって言わないのかしら、TwitterはXて…

nanam|なな
10か月前
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学校に行かない

いつもなら、見送るわたしを振り返り「行きたくないな」とワンチャン狙いで言ったりするのに、丸くなった背中は何も言わずに玄関のドアを開けた。小股で三歩進んだその先で…

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11か月前
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原点回帰『ペアトレ』のはなし

こんにちはnanamです。 今日はペアトレの話をしようと思います。 発達障害で多動で感覚過敏で興味関心が極狭だった息子の幼児期に、ペアトレ(ペアレントトレーニング)を勧…

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11か月前
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療育園の人

息子が4歳になる少し前のとき。わたしは息子と、障害児施設である療育園に母子通園することになった。 息子の発語は片手で数える程度で、時々わたしの腕を押すようにして…

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11か月前
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「無断投稿に反論する」その正義はだれのため

例えば誰かが誹謗中傷されたとして、それが自分の知らない他人だったとしても、その人を庇いたいと思うことがある。 わたしの息子に発達障害があるからか、同じ障害を持つ…

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飛騨市じゃない方の人間

飛騨市じゃない方の人間

「薬を服用してるのに、環境設定も必要なんですか?」

クールダウンできる静かな場所を確保してもらいたいと頼んだら、そう言って首をかしげた支援級の先生。

「きのうは落ち着いて過ごせていましたよ」

そう言ってわたしの方へ顔を向けた。
見えないものを想像することは、口で言うより難しい。

どんな不安もどんな騒音も、へっちゃらになる魔法の薬があればいいのにと思う。だけどそんなものはこの世になくて、薬は

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斜線の通知表

斜線の通知表

先生が伏目がちに手渡してきた通知表には、縦にずらりと並んだ斜線が記されていた。金縛りにでもあったのだろうわたしはそこから目が離せなくなって、けれどもこんな通知表もあるんだなあと、どこか他人の成績を見せられているようでもあった。

来月から息子は小学生になるという3月の日に、期待よりもこれから飛び込む学校生活に浮足立っていた。「大丈夫、なんとかなるよ」そう誰かに言ってほしい心とは裏腹に、恐らくこの子

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桃鉄で癇癪、罪深き桃鉄

桃鉄で癇癪、罪深き桃鉄

夫が新しい桃鉄を買ってきた。

それは息子が1ヶ月も前から「やりたいやりたい!」と懇願していたあの桃鉄だった。発売日当日に、「そりゃあ買うでしょ」と当然のように買ってきてくれた夫、天才。

夫からソフトを受け取ると、すぐさま無駄のない動きを見せる息子。脇目も振らずにハサミを手にし、手慣れた様子でパッケージに貼り付いているフィルムをペロリと剥がした。夫から手渡され、中身を確認するまでのタイム、私調べ

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「支援級はバカなの?」と聞いてきた君へ

「支援級はバカなの?」と聞いてきた君へ

わたしの息子には発達障害があって、そのため小学校は通常級ではなく特別支援学級を選んだ。支援級は通常級と違って授業の進み方もゆっくりで、一クラスの人数も少ないので先生の目が届きやすい。それは発達に凹凸のある息子にとって、過ごしやすい環境だった。世間では通常級に通う子の方が圧倒的に多いわけで、だから周りの目が気にならなかったと言えば嘘になる。けれど、我が子が自分に合う環境に身を置けたことにはやっぱり素

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挨拶をありがとうへ告白「興味関心」

挨拶をありがとうへ告白「興味関心」

あれはプラスチックゴミの収集日で、これから始まる猛暑を予感させるような初夏の日だった。朝からとにかく蒸し暑くて、人に会えば「暑いですね」と、それを挨拶代わりにして交わしていたのが今年の夏の始まり。今更ここで振り返るまでもなく、この夏はとにかく酷暑でした。

それはまだ朝のごみ捨ての時間だと言うのに、既に太陽は燦々と照りつけていた日。わたしは45リットルの透明ゴミ袋いっぱいに詰め込んだプラごみを片手

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就学相談と決めつけ厄介

就学相談と決めつけ厄介

発達障害は外からは見えづらい障害だというそれは、そういう子をこれまで育ててきた親にとってはとても鮮明に見えたりする。幼いときほど特性が表に出ると言われるけれど、努めて理解しようとしなければ「周りを困らせる子」という嬉しくないレッテルを貼られてしまうことがある。それは就学相談の場面でも起こる。青い空が澄み渡る、初秋9月のあの日のこと。

小学校に入学する前の年、わたしは息子を連れて就学相談を受けてい

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サポートをありがとう

サポートをありがとう

昨日のこと、生まれて初めてサポートしていただきました。

突然のことに驚き、そしてそこへ添えられていた嬉しい言葉に舞い上がりました。感謝の気持ちでいっぱいです。

2022年12月から始めたnoteですが、執筆でお金をいただく経験は初めてです。収益はもちろんですが、それ以上にわたしの執筆にサポートしたいと言ってくださったことに感無量です。お礼の返信はすでに送らせて頂きましたが、嬉しさ大爆発の思いを

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8月の酔っぱらい

8月の酔っぱらい

「酔っぱらいって、こういうこと?」

ふわふわした頭に届いた息子の声。
今年の夏は過去最高の暑さと言われたが、八月下旬の夜道は日中のベトつく煩わしさから解放されて少しだけ秋の訪れを予感させた。昼間は相変わらずウンザリする暑さだったが、夜の晩夏は夢見心地で歩くことができた。それは酔いが回って陽気になっていただけではなかった。わたしの手を引く息子の右手が、思っていたよりも大きくなっていたことに感激する

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「カス」と言われた女

「カス」と言われた女

その日、SNS(X)で親しく拝見していた方の投稿に暴言が書き込まれた。いつもなら黙ってやり過ごしていただろう。だけどわたしはどうしても許せなくなった。そして自らそこへ飛び込んだ。同じ障害児のママという、それだけの理由ではそんな無謀なことはしなかった。SNSが陰湿な面を持っているということを、わたしは身にしみて知っている。

子供は親の予想を超えた動きをすることがある。そして障害のある子はその見越し

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言葉に代わるもの

言葉に代わるもの

その喫茶店には病院の帰りに足を踏み入れた。ネットの口コミで周到に調べただけあって、一目惚れだった。わたし好みの喫茶店だ。カフェというより『喫茶店』と呼びたくなる、どこか懐かしい空間。開放的な高い天井に大きな窓が並び、隣のテーブルとの距離も充分に保たれた座席。趣のある年季の入った木のテーブルの温かみに心が踊った。

それは、その日が3度目の訪店だったときのこと。

角の窓際のテーブルに空きを見つけ、

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七日間の蝉

七日間の蝉

汗が首にまとわりつく暑さに、放心しながらも聞こえてくるセミの声。太い幹の木の前で足を止めた息子が、スッと手を伸ばした。

「捕まえた」

そこには息子の親指と人差し指、中指で掴まれたセミがいた。逃げる隙もなかっただろうセミが、息子の指の中に大人しく収まっていた。

セミを見ると『八日目の蝉』の映画のタイトルを思い出す。諸説あるようだけど、地上に出てきて七日で死んでいくセミの命。

「セミは短い命だ

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「学校に障害児対応の勉強会はありますか?」 学校への思い、わたしの思い

「学校に障害児対応の勉強会はありますか?」 学校への思い、わたしの思い

こんにちはnanamです
少し前になりますが、自身のTwitterで教員の方に向け、教えて欲しいとツイートしました。
そういえばもうツイートって言わないのかしら、TwitterはXて呼ぶ? うむむ、ここではTwitterで統一させてください。慣れていなくて。まだツイッターと呼んでいたいし。

本題へ。

この呼びかけに、何名かの方からリプ欄やDMで回答をいただきました。あのときは本当にありがとうご

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学校に行かない

学校に行かない

いつもなら、見送るわたしを振り返り「行きたくないな」とワンチャン狙いで言ったりするのに、丸くなった背中は何も言わずに玄関のドアを開けた。小股で三歩進んだその先で、固まり動かなくなっていて、後ろ姿がかすれて見えた。今にも消えてなくなりそうで、胸の内の赤信号が点滅した。行かせてはならないと警告してくるようだった。

「学校、行かなくていい」

わたしの声の方を辿った息子は、今にも泣き出しそうな顔で、う

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原点回帰『ペアトレ』のはなし

原点回帰『ペアトレ』のはなし

こんにちはnanamです。
今日はペアトレの話をしようと思います。

発達障害で多動で感覚過敏で興味関心が極狭だった息子の幼児期に、ペアトレ(ペアレントトレーニング)を勧められ、学んでいた時期がありました。

療育園ではわたしの自己肯定感を1000%上げてもらいましたが、ペアトレに通ったら光の速さで相殺されていきました。だけどゼロに戻ったわけじゃなかった。むしろ息子との関わり方に伸びしろがあるのだ

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療育園の人

療育園の人

息子が4歳になる少し前のとき。わたしは息子と、障害児施設である療育園に母子通園することになった。

息子の発語は片手で数える程度で、時々わたしの腕を押すようにして空中にブンと放る。これがあの有名なクレーン現象なのかなと、なんだかワクワクして様子を伺うのだけれど、何かが違う。腕を引っ張ると聞いていたのに息子は引っ張ってはくれない。宙に浮いたわたしの腕の先には何もなく、この腕の行方は始末が悪い。何をし

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「無断投稿に反論する」その正義はだれのため

「無断投稿に反論する」その正義はだれのため

例えば誰かが誹謗中傷されたとして、それが自分の知らない他人だったとしても、その人を庇いたいと思うことがある。

わたしの息子に発達障害があるからか、同じ障害を持つ人やその親が侮辱されているのをみると、憤懣やるかたない思いがする。そういった状況は身の回りだけでなく、これまでSNSを通して何度も目にする機会があった。人は同じ立場や同じ環境におかれた人に対し、無意識に自分を投影する心理があるのだそうで、

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