七日間の蝉
汗が首にまとわりつく暑さに、放心しながらも聞こえてくるセミの声。太い幹の木の前で足を止めた息子が、スッと手を伸ばした。
「捕まえた」
そこには息子の親指と人差し指、中指で掴まれたセミがいた。逃げる隙もなかっただろうセミが、息子の指の中に大人しく収まっていた。
セミを見ると『八日目の蝉』の映画のタイトルを思い出す。諸説あるようだけど、地上に出てきて七日で死んでいくセミの命。
「セミは短い命だから、逃してあげよう」
わたしの言葉と同時に息子から開放されたセミは、何処かへ飛んでいって見えなくなった。
「逃がすつもりだったよ」
「そっか、セミ大きかったね」
両脇に木が植えてある、舗装された道を再び歩きだした。
わたしと息子の後ろには、ジリジリ照りつく太陽に向かい、 ここに生きてるんだとセミ達の呼応する鳴き声が響き渡っていた。
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