原点回帰『ペアトレ』のはなし
こんにちはnanamです。
今日はペアトレの話をしようと思います。
発達障害で多動で感覚過敏で興味関心が極狭だった息子の幼児期に、ペアトレ(ペアレントトレーニング)を勧められ、学んでいた時期がありました。
療育園ではわたしの自己肯定感を1000%上げてもらいましたが、ペアトレに通ったら光の速さで相殺されていきました。だけどゼロに戻ったわけじゃなかった。むしろ息子との関わり方に伸びしろがあるのだと気づかせてもらいました。
発達障害の息子との生活は、正直に言って難しい。自分の子なのに分からないのです。息子の取説があるのなら、喉から両手が出るほど欲しかった。息子と関わる方法を誰かにご教授願えるのならどんなにいいかと思っていました。
「その声かけ、間違ってますよ」
息子を呼ぶのに正しいとか間違いとか、そんなものが存在していたことを知ったのです。
話しかけるときは正面に回り込んでから、子供の目線に高さを合わせて目を見て、こちらに注目を向けさせてから呼びかける。「ちゃんと見て」ではなくて、子供の興味のあるもので惹きつけてから、指示は的確に分かりやすく。
ペアトレのイロハを教えてもらえることになりましたが、息子が遊びを終わりに出来ないという悩みに対しても、
今やっている行動を終わらせて次の行動に移したいときには、次の行動を示す絵カードを見せて誘うこと、今やっている行動が終わる5分前と1分前には終わりの合図で予告する。スケジュールは作っただけでは意味を成さない、絵カードもそう。それが示す具体的な意味を子供と確認し合わなければ、ただのカード。「ダメ」ではなく、やるべき行動を伝えること。正しい行動を示さなければ、子供はどうしていいのか分からない。そして、出来たときには必ず褒める。
声をかけ、おもちゃで遊ぶのを終わりにし、外に遊びに行くだけの話だったのですが、そこにはいろんなことが必要だったらしく、一度に言われたわたしは泡吹きそうになりました。
「いいですかお母さん、困っているのは子供なんです」
「子供が困ってる」を連発するここは、荒手の新興宗教かもしれない、壺でも買わされるのか、どうしよう、逃げようか。
その後もダメ出しは延々と続いていったので、洗脳される前に見切りをつけなきゃと思っていたその時に、息子に指示が通ったのです。
その日の療育には、息子を含めて子供が4人いたのだけど、半円を描くように子供用のイスが並べてあり指示役の先生が子供達に座るよう促していました。だけど息子を担当する先生は、みんなが着席してから最後に部屋に入ろうと提案してきました。いつも立ち歩いてばかりの息子に考えを練ってくださったようで、お任せすることにしました。みんなが座った状態ならば一つ空いているイスを見て、自分が何をすればいいのか視覚的に分かりやすいだろうとのことでした。わたしは後方で見守っていたのですが、そしたら息子はあとから入って自分のイスに直行してストンと座ったのです。まったく座らなかった息子が、座ったのです。
「うちの子が座ってる」
息子の担当をしていたその人も、わたしの方を振り返り微笑んでいました。
それは息子にとって目で見て分かりやすい環境が整っていたからでした。自分が何をすればいいのかが分かって、自分の物だと示すしるしのあるイスに着席できた。スケジュールボードと絵カードと簡単な声かけは勿論事前にあったし、そこに視覚的に分かりやすい環境が合わさったことで息子をイスへと導いた。凄い。
「見て分かりやすい」の威力を見せつけられてしまったものだから、そうなるともう魅力的に映る、映る。目の前で証明されてしまったわけだから。それからは家でどうすればいいか、わたしはどうすればいいかと根掘り葉掘り尋ねていって、疑問に思っていたことを一つづつ消化するようになりました。
あるとき聞いたことがあります。
息子を連れて買い物に行くと、走り回って何処かへ行ってしまうので困っている。必要な食品は夫が休みの時に家族で行ってまとめ買いするのだけど、買い忘れの物がある時は週の半ばでスーパーに行くことがある。けれど夫のいない息子と2人だけの買い物はとても無理で息子を追いかけている時間の方が長い、牛乳一本さえ買えないのですがどうしたらいいですか、と尋ねたことがありました。その時の先生の回答が、
「仕事の帰りに旦那さんに買ってきてもらったらどうですか」でした。
まだ一緒に買い物に行ける段階ではないのだから、連れて行かなければいいでしょ、が答えで、その通りだなと思いました。
どの子にも発達段階があって、それはみんな違うのだからその子に合わせていかなければいけないし、できることは確実にできるようにして、あと少し頑張れば出来ることは負担にならない程度で織り交ぜていく。
子供に無理をさせるのではなく、親は視覚で分かりやすいよう環境を整え、指示がブレないことを徹底し、混乱させないようにする。簡潔に、分かりやすく、具体的に。そして正しい行動ができたらすぐに褒める。褒めることで正しい行動を定着させる。何がいい行動なのか、どうすればいいのか等、子供は分からず不安でいるのだから。
「困っているのは子供なんですよ」
わたしはようやく理解できました。ペアトレは親が子供を躾けるための訓練だと思っていたけれど、親を変える為にあるんだっていうことを。
その後は、体の使い方を学ぶためにOT、言葉の習得に再びST、自己評価が低いと分かり心理へと他療育へ繋がっていきました。そしてそれらの療育も、息子には必要なものでした。ペアトレと出会いわたしは自分と向き合うことができ、少しずつだけど前へ進めたような気がします。時々後退し停滞し、焦るときには周りに相談しつつ、じっと待つ。その繰り返しでもあったけど、息子の取説をやっと見つけられた気がしました。
わたしの育児の原点はペアトレだなと思うのです。
小さい時ほど特性が強く表に出るのは、息子もそうでした。癇癪やパニックで荒れることも多いし、おまけに発語が遅かったから、会話もできないし何をして欲しいのかも分からない。意思疎通が難しくて、思いを汲み取ってあげられないことも多かった。ニホンザルみたいに顔を赤くし海老反りになって、ひっくり返ってよく泣いていました。
それらは全て息子からのSOSだったんだなと、振り返って思います。
子供が100人いたら100通りの子育てがあるように、障害のある子も同じだと思うのです。人を見て察して、ちょっと教えれば出来てしまう定型児よりも、それは確かに手がかかることも多いし苦労もあるし。だけどどの子も必ず成長するのだとお偉い先生も言っていたので、親はその手助けをするだけなんじゃないかなと思います。まだまだ道の途中だけれど。
子供の行動には、必ず原因があると教えてもらったことがあります。それは今日もわたしの頭の中にあり役立ってくれています。ABAやABC分析の話になるのでそれはまた別の機会にしますが、息子を理解する大きな手立てとなりました。療育にのめり込んでいったのはそれからです。
正しい行動を身につけさせることで間違った行動を減らしていく、それが親の負担を減らしていくことになる。ペアトレはわたしの考え方を変え、難しい育児の指針となってくれています。見方を変えることで見えなかったことが見えてくる。ペアトレって、ほんとうに凄いと思うのです。
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