okazaki

古典文学を現代語訳します(今は主に芭蕉です)。楽に読め、それでいて省略や余計な付け足し…

okazaki

古典文学を現代語訳します(今は主に芭蕉です)。楽に読め、それでいて省略や余計な付け足しのない訳を心掛けています。大学で文学を教えています。ヘッダー画像は、芭蕉も眺めた敦賀(福井県)の海です。 https://twitter.com/mo_okazaki

記事一覧

松尾芭蕉が見た納涼床(京都・鴨川)。「四条河原涼」(しじょうかわらすずみ)現代語訳

今回は、芭蕉が元禄3年(1690)6月に京都を訪ねたときの文を現代語訳してご紹介します。 芭蕉が46歳(現在の年齢の数え方)になる年の作です。 ・・・・・・・・・・・・…

okazaki
15時間前
15

星空と松尾芭蕉。「銀河ノ序(ぎんがのじょ)」現代語訳

「おくのほそ道」では、「暑さと雨のつらさで神経をすり減らし、病気になったので何も書き留めなかった」として、縦断した越後国(えちごのくに・新潟県)の記述が大幅に省…

okazaki
8日前
18

松尾芭蕉も敦賀を旅しました。敦賀滞在についての芭蕉の文・現代語訳

2024年3月16日、北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業します。 敦賀を訪問する方も増えそうです。 今から330年あまり前の元禄2年(1689)8月(旧暦)に、芭蕉も敦賀を訪れてい…

okazaki
2か月前
27

伊賀上野で3月10日まで公開中の芭蕉真筆について

三重県伊賀市・芭蕉翁記念館で開催中の「俳句が先か、絵が先か」展では現在、 芭蕉筆許六画「茸狩や」発句画賛 が公開されています。芭蕉の弟子・許六(きょりく・絵にお…

okazaki
2か月前
20

山形の展覧会案内に掲載されている芭蕉の句

現在、山形市の山寺芭蕉記念館では企画展「収蔵名品展」が開催されています(2月5日まで、水曜休館)。 記念館の企画展案内ページに画像として掲載されている芭蕉の句をご…

okazaki
3か月前
27

伊賀の展覧会で見られる芭蕉真筆の短冊!

現在、伊賀市の芭蕉翁記念館では、 【芭蕉翁生誕380年記念 俳句が先か、絵が先か】展が開催されています。 会期は1月6日から3月10日まで、会期中の休館日はありません。 …

okazaki
3か月前
23

冬の夜の芭蕉【その3】。『寒夜の辞(かんやのじ)』現代語訳

3回目は、『寒夜の辞』をご紹介します。天和3年(1681)の作ですので、以前ご紹介した2作より5年ほど前のものです。 この前年(天和2年)の冬に、芭蕉は江戸の市中から深…

okazaki
4か月前
19

冬の夜の芭蕉【その2】。『雪丸げ(ゆきまるげ)』現代語訳

前回は、『閑居の箴(かんきょのしん)』という松尾芭蕉の短文を訳しました。 今回はそれよりも明るい雰囲気の短文(句を含む)をご紹介します。『閑居の箴』と同じ冬(貞…

okazaki
4か月前
26

冬の夜の芭蕉。『閑居の箴(かんきょのしん)』現代語訳

松尾芭蕉の短い文(句を含む)をご紹介します。 『閑居の箴(かんきょのしん)』というタイトルは芭蕉ではなく、後に弟子の支考がつけたものと考えられているようです。「…

okazaki
4か月前
18

松尾芭蕉は松島で句を詠んでいた!〈松島〉現代語訳

『おくのほそ道』で芭蕉は、「松島で見る月はどんなに良いだろうか」と、松島を訪れることを旅の目的のひとつとしていました。そしてついに松島の絶景を目の前にした時のこ…

okazaki
5か月前
24

松尾芭蕉「古池や・・・」の「古池」はどこ?

先日は、「名月や池をめぐりて夜もすがら」の「池」について紹介しました。 今回は、芭蕉の句に詠まれた池としてはもっと有名な、 古池や蛙飛こむ水のおと ふるいけやか…

okazaki
6か月前
27

〈展示替え重要情報〉「月を愛でる俳人たち」展(奥の細道むすびの地記念館・大垣市)で展示中の芭蕉直筆短冊2点のうち1点(「三日月や」)は、明日10月29日までの公開です!この情報は記念館サイトにもありません。ご覧になりたい方は、お急ぎください!

okazaki
6か月前
7

大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その2)

前回(その1)に引き続き、「月を愛でる俳人たち」展(大垣市奥の細道むすびの地記念館、2023年10月7日~11月19日)で展示される芭蕉筆短冊の2つ目をご紹介します。 〈月…

okazaki
7か月前
13

大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その1)

現在、岐阜県大垣市の奥の細道むすびの地記念館で、「月を愛でる俳人たち」展が開催されています。 (2023年10月7日~11月19日) 大垣市奥の細道むすびの地記念館・展示案…

okazaki
7か月前
10

「中秋の名月」と「仲秋の名月」

陰暦8月15日の月は中秋の名月といい、「中秋」という文字が使われることが多いようです。 「名月」は、陰暦8月15日か9月13日の月を指します(両日とも月見の行事の日)。 …

okazaki
7か月前
16

松尾芭蕉の有名な句「名月や池をめぐりて夜もすがら」の「池」はどこ?

京都・嵯峨の広沢池(ひろさわのいけ)に、下の写真のような石碑があります。 よく見ると、碑の右側面に芭蕉の句が。 〈名月や池をめぐりて夜もすがら〉とあるようです。…

okazaki
7か月前
18
松尾芭蕉が見た納涼床(京都・鴨川)。「四条河原涼」(しじょうかわらすずみ)現代語訳

松尾芭蕉が見た納涼床(京都・鴨川)。「四条河原涼」(しじょうかわらすずみ)現代語訳

今回は、芭蕉が元禄3年(1690)6月に京都を訪ねたときの文を現代語訳してご紹介します。
芭蕉が46歳(現在の年齢の数え方)になる年の作です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

京都・四条の河原涼といって、夕月夜(ゆうづくよ)の頃(この場合6月上旬)から有明の月が見られるようになってしばらくの頃(同中旬)まで、鴨川の中に床を並べて、夜を徹して酒を飲み、ものを食べて遊ぶ。

女は帯の結び

もっとみる
星空と松尾芭蕉。「銀河ノ序(ぎんがのじょ)」現代語訳

星空と松尾芭蕉。「銀河ノ序(ぎんがのじょ)」現代語訳

「おくのほそ道」では、「暑さと雨のつらさで神経をすり減らし、病気になったので何も書き留めなかった」として、縦断した越後国(えちごのくに・新潟県)の記述が大幅に省略されていました。

でも、越後の出雲崎(いずもざき)を旅したときのことを、芭蕉は「銀河ノ序」という文にまとめていました。「おくのほそ道」の記述を補うものとしても読めますので、以下に現代語訳してご紹介します。

・・・・・・・・・・・・・・

もっとみる
松尾芭蕉も敦賀を旅しました。敦賀滞在についての芭蕉の文・現代語訳

松尾芭蕉も敦賀を旅しました。敦賀滞在についての芭蕉の文・現代語訳

2024年3月16日、北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業します。
敦賀を訪問する方も増えそうです。

今から330年あまり前の元禄2年(1689)8月(旧暦)に、芭蕉も敦賀を訪れていました。『おくのほそ道』の旅の終盤で、金沢・小松・福井などを経て敦賀に8月14日到着。ここに数日滞在しました。

以下に紹介するのは、俳人・東恕(とうじょ)が残しておいた芭蕉の文です。「デジタル版日本人名大辞典+Plus」

もっとみる
伊賀上野で3月10日まで公開中の芭蕉真筆について

伊賀上野で3月10日まで公開中の芭蕉真筆について

三重県伊賀市・芭蕉翁記念館で開催中の「俳句が先か、絵が先か」展では現在、

芭蕉筆許六画「茸狩や」発句画賛

が公開されています。芭蕉の弟子・許六(きょりく・絵においては芭蕉の師匠でした)が小枝に刺された二つの茸(松茸?)の絵を描き、そこに芭蕉が句を記しています。今回はこの句をご紹介します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〈茸狩やあぶなきことにゆふしぐれ〉たけがりやあぶなきことにゆう

もっとみる
山形の展覧会案内に掲載されている芭蕉の句

山形の展覧会案内に掲載されている芭蕉の句

現在、山形市の山寺芭蕉記念館では企画展「収蔵名品展」が開催されています(2月5日まで、水曜休館)。
記念館の企画展案内ページに画像として掲載されている芭蕉の句をご紹介します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〈はるもややけしきととのふ月と梅〉はるもややけしきととのうつきとうめ
(月と梅が同時に楽しめる。ようやく春の情景も整ったのだ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この句は

もっとみる
伊賀の展覧会で見られる芭蕉真筆の短冊!

伊賀の展覧会で見られる芭蕉真筆の短冊!

現在、伊賀市の芭蕉翁記念館では、
【芭蕉翁生誕380年記念 俳句が先か、絵が先か】展が開催されています。
会期は1月6日から3月10日まで、会期中の休館日はありません。
(共催するミュージアム青山讃頌舎(あおやまうたのいえ)は1月13日~2月18日、火曜休館)

詳細は伊賀市サイトへ

会期中に展示替えが行われますが、
まず1月6日~2月1日までは、芭蕉翁記念館で
芭蕉筆「木のもとに」発句短冊が公

もっとみる
冬の夜の芭蕉【その3】。『寒夜の辞(かんやのじ)』現代語訳

冬の夜の芭蕉【その3】。『寒夜の辞(かんやのじ)』現代語訳

3回目は、『寒夜の辞』をご紹介します。天和3年(1681)の作ですので、以前ご紹介した2作より5年ほど前のものです。

この前年(天和2年)の冬に、芭蕉は江戸の市中から深川に移り、詩人としての歩みを本格的に始めました。
この『寒夜の辞』発表の年には、弟子から芭蕉(植物)を贈られて気に入り、「芭蕉」という俳号を使うようになりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
深川三股(みつまた・隅

もっとみる
冬の夜の芭蕉【その2】。『雪丸げ(ゆきまるげ)』現代語訳

冬の夜の芭蕉【その2】。『雪丸げ(ゆきまるげ)』現代語訳

前回は、『閑居の箴(かんきょのしん)』という松尾芭蕉の短文を訳しました。

今回はそれよりも明るい雰囲気の短文(句を含む)をご紹介します。『閑居の箴』と同じ冬(貞享3年、1686年)の作と考えられています。

「雪丸げ」は「ゆきまろげ」とも言いますが、雪を丸めてころがし大きな玉をつくる子供の遊び(あるいは、その玉)のことです。

文中に出てくる曾良(そら)は信州出身の芭蕉の弟子で、『おくのほそ道』

もっとみる
冬の夜の芭蕉。『閑居の箴(かんきょのしん)』現代語訳

冬の夜の芭蕉。『閑居の箴(かんきょのしん)』現代語訳

松尾芭蕉の短い文(句を含む)をご紹介します。
『閑居の箴(かんきょのしん)』というタイトルは芭蕉ではなく、後に弟子の支考がつけたものと考えられているようです。「閑居」は世間と離れて静かに住むこと、「箴(もとの意味は「治療に使う針」)」は戒(いまし)めの文章(や、その文体)を指します。でも、内容から戒めというほどのものが読み取れるかどうか・・・。

貞享3年(1686)、現在の年齢の数え方で芭蕉が4

もっとみる
松尾芭蕉は松島で句を詠んでいた!〈松島〉現代語訳

松尾芭蕉は松島で句を詠んでいた!〈松島〉現代語訳

『おくのほそ道』で芭蕉は、「松島で見る月はどんなに良いだろうか」と、松島を訪れることを旅の目的のひとつとしていました。そしてついに松島の絶景を目の前にした時のことを、

「神がつくられたすばらしい景色を、誰が十分に絵にしたり詩文に表現したりできるだろうか。(中略)私の方は、句を作るのをあきらめて眠ろうとしたが寝られない」

と記し、同行者の曾良(そら・芭蕉の弟子。信濃の人)の句のみを載せました。句

もっとみる
松尾芭蕉「古池や・・・」の「古池」はどこ?

松尾芭蕉「古池や・・・」の「古池」はどこ?

先日は、「名月や池をめぐりて夜もすがら」の「池」について紹介しました。

今回は、芭蕉の句に詠まれた池としてはもっと有名な、

古池や蛙飛こむ水のおと ふるいけやかわずとびこむみずのおと

の「古池」について考えたいと思います。実は滋賀県と京都府の境近くにある岩間寺(西国三十三所の第十二番札所)に、芭蕉がそこでこの句を詠んだと伝わる「芭蕉の池」が存在します!

そこにある石碑の説明では、

芭蕉が

もっとみる

〈展示替え重要情報〉「月を愛でる俳人たち」展(奥の細道むすびの地記念館・大垣市)で展示中の芭蕉直筆短冊2点のうち1点(「三日月や」)は、明日10月29日までの公開です!この情報は記念館サイトにもありません。ご覧になりたい方は、お急ぎください!

大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その2)

大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その2)

前回(その1)に引き続き、「月を愛でる俳人たち」展(大垣市奥の細道むすびの地記念館、2023年10月7日~11月19日)で展示される芭蕉筆短冊の2つ目をご紹介します。

〈月清し遊行のもてる砂の上〉つききよしゆぎょうのもてるすなのうえ

この句は「おくのほそ道」に出てきます。現福井県敦賀市で詠まれたものですが、作句の事情も分かりやすいかと思いますので、以前に訳した「おくのほそ道(下)」の「55・敦

もっとみる
大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その1)

大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その1)

現在、岐阜県大垣市の奥の細道むすびの地記念館で、「月を愛でる俳人たち」展が開催されています。
(2023年10月7日~11月19日)

大垣市奥の細道むすびの地記念館・展示案内のページ

展示品には芭蕉筆の短冊もありますが、今回はそのうちの1つをご紹介します。

展覧会のチラシには〈芭蕉筆「三日月や」句短冊〉が展示されるとありますが、「三日月や」ではじまる、ということで考えられる芭蕉の句は2つあり

もっとみる
「中秋の名月」と「仲秋の名月」

「中秋の名月」と「仲秋の名月」

陰暦8月15日の月は中秋の名月といい、「中秋」という文字が使われることが多いようです。

「名月」は、陰暦8月15日か9月13日の月を指します(両日とも月見の行事の日)。

「中秋」は陰暦8月15日のことなので、「中秋の名月」は、いわば〈8月15日の方の「名月」〉(9月13日の方の「名月」ではなく)ということでしょうか。

もうひとつ、「仲秋」という表記がありますが、これは陰暦8月を意味します。

もっとみる
松尾芭蕉の有名な句「名月や池をめぐりて夜もすがら」の「池」はどこ?

松尾芭蕉の有名な句「名月や池をめぐりて夜もすがら」の「池」はどこ?

京都・嵯峨の広沢池(ひろさわのいけ)に、下の写真のような石碑があります。

よく見ると、碑の右側面に芭蕉の句が。

〈名月や池をめぐりて夜もすがら〉とあるようです。貞享3年(1686)、芭蕉が42歳(今の数え方で)になる年に作った、よく知られている作品です。この句は、

(中秋の名月が出ている。月を映す池の周りを一晩中歩き、飽きることなく月を眺めたことだ)

というような意味です。

広沢池は古く

もっとみる