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松尾芭蕉は松島で句を詠んでいた!〈松島〉現代語訳

『おくのほそ道』で芭蕉は、「松島で見る月はどんなに良いだろうか」と、松島を訪れることを旅の目的のひとつとしていました。そしてついに松島の絶景を目の前にした時のことを、

「神がつくられたすばらしい景色を、誰が十分に絵にしたり詩文に表現したりできるだろうか。(中略)私の方は、句を作るのをあきらめて眠ろうとしたが寝られない」

と記し、同行者の曾良(そら・芭蕉の弟子。信濃の人)の句のみを載せました。句を作ることができなかった、ということになっています。

詳細(『おくのほそ道』現代語訳・中巻)は以下の記事をお読みください。

でも、実は芭蕉は松島で句を詠んでいました。土芳(どほう・芭蕉の弟子。伊賀の人)が紹介したものなどいくつかの記録に残されている芭蕉の句(と文)があり、以下に現代語訳で紹介します。

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松島は風景としては日本で一番好いということだ。昔も今も、風情を理解し筆をとる人たちは、この松島にとりわけ思いを寄せて、精魂を込めて工夫を凝らし表現してきた。

松島の海はだいたい三里(約12km)四方ほどで、さまざまな島々が、神の造型のすばらしさが刻まれたかのようなめずらしい姿をしている。それぞれの島には松が生い茂って、美しさ・華やかさは、形容のしようがないほどすばらしい。

〈嶋々や千々にくだきて夏の海〉しまじまやちぢにくだきてなつのうみ
(夏の海に、たくさんの島々が見えている。神が地をさまざまに砕いて海にちりばめたようだ)

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(本文は『松尾芭蕉集2(日本古典文学全集71)』小学館1997を使用しています。〈松島〉という題も同書に従っています。また現代語訳は独自のものですが、訳すにあたって同書の訳注を参考にさせていただきました。記して感謝申し上げます)


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