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大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その1)

現在、岐阜県大垣市の奥の細道むすびの地記念館で、「月を愛でる俳人たち」展が開催されています。
(2023年10月7日~11月19日)

大垣市奥の細道むすびの地記念館・展示案内のページ

展示品には芭蕉筆の短冊もありますが、今回はそのうちの1つをご紹介します。

展覧会のチラシには〈芭蕉筆「三日月や」句短冊〉が展示されるとありますが、「三日月や」ではじまる、ということで考えられる芭蕉の句は2つあります。
私はまだ展示を見に行っていませんが、伊賀市(三重県)が所蔵しているものだということなので、

〈三日月や朝顔の夕つほむらん 桃青〉
みかづきやあさがおのゆうべつぼむらん

という句だと思われます。「桃青」は芭蕉の別号(別名)。

(朝に咲く朝顔は夕方からつぼみを準備するということなので、夕方にみられる三日月も、満月になる準備をしているのだろう)

というような意味です。「朝顔」も「三日月」も秋の季語です。すぐに沈む三日月と、すぐにしぼむ朝顔を重ね合わせて、そのはかなさを詠みながら、満月を待ち望む気持もこめている、というところかなと思います。天和2年(1682。芭蕉が現在の年齢の数え方で38歳になる年)か、それ以前に詠まれたようです。

ついでに、もう1つの「三日月や」の句(元禄5、1692年)もご紹介します。

〈三日月や地は朧なる蕎麦畠〉
みかづきやちはおぼろなるそばばたけ
(三日月の照らす地上は、蕎麦の白い花でぼんやりかすんでいるようだ)

この句は〈三日月に地はおぼろ也蕎麦の花〉というもう1つの形が伝わっており、後者は芭蕉が作り直した最終形だという説と、間違って伝えられたものだという説があるようです。今も本によって、どちらの句形を採用するか判断が分かれています。

ところで、「奥の細道むすびの地記念館」は、「奥の細道」という表記を採用しています。「おくのほそ道むすびの地記念館」ではなく。


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