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大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その2)

前回(その1)に引き続き、「月を愛でる俳人たち」展(大垣市奥の細道むすびの地記念館、2023年10月7日~11月19日)で展示される芭蕉筆短冊の2つ目をご紹介します。

〈月清し遊行のもてる砂の上〉つききよしゆぎょうのもてるすなのうえ

この句は「おくのほそ道」に出てきます。現福井県敦賀市で詠まれたものですが、作句の事情も分かりやすいかと思いますので、以前に訳した「おくのほそ道(下)」の「55・敦賀」章の一部を紹介します。

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その夜、格別晴れて月が見事だった。「明日の夜(十五夜。中秋の名月)もこのように晴れるでしょうか」と聞くと、「北陸のさだめで、やはり明日の夜の天気は予想できません」と答える宿の主人に、酒をすすめられた。そのあと、気比の明神に夜参りをした。

この神社は仲哀天皇の御廟(ごびょう)である。社殿の付近は神々しく、松の木の間を月の光が漏れさしていて、神前の白砂は霜を敷いたようだ。

「その昔、遊行二世の上人(ゆぎょうにせいのしょうにん・時宗の開祖、一遍上人(遊行上人)のあとを継いだ僧)が、大願を思い立つことがあって、みずから草を刈り、土や石をかついで泥の水たまりを乾かされたので、参詣する人々の行き来の苦労がなくなりました。その昔のならいが今も続いていて、代々の遊行上人が神前に砂を運ばれます。これを遊行の砂持(ゆぎょうのすなもち)と申します」と、宿の主人が語った。

〈月清し遊行のもてる砂の上〉つききよしゆぎょうのもてるすなのうえ
(代々の遊行上人が運ばれた砂の上に、清らかな月の光がさしている)

十五日、宿の主人の言葉通りに雨が降った。
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15日の名月ではなく、前日14日の月を詠んだ句でした。「遊行の砂持」は現代も続いていて、2023年5月14日に、18年ぶりに行われたということです。
氣比神宮には芭蕉像もあります(上の写真)。

奥の細道むすびの地記念館・展示案内のページ

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