マガジンのカバー画像

アルバイト日誌(カフェ)

17
高校1年生から働き続けているカフェでの体験談を書いていこうと思います☕💭
運営しているクリエイター

記事一覧

愛のいたずら電話

私が働いているカフェにはよくいたずら電話がかかってくる。今回はそんないたずら電話の中でも、一番記憶に残っているものを紹介しよう。

それは2年前の春にかかってきた電話。

朝起きて、いつもと同じようにお店の鍵を開け、オープン作業をする。

作業の片手間に喉が渇いたので、期間限定商品である”さくらラテ”を小さいコップに注いだ。

このさくらラテ、店員間の評判はあまりよくない。杏仁豆腐のような風味で癖

もっとみる
カフェ店員ならではの気づき

カフェ店員ならではの気づき

新型コロナウイルスが流行して色々な変化が起きた。

店員もお客さまも、ほとんどがマスクをしている。事務所には、店長がどこからともなく買ってきた、安いマスクが置かれている。

お店の入口には消毒が置かれ、店員も手がカサカサになるくらい頻繁に消毒を行っている。

事務所にも、冬場にしか置かれることがなかった”ハンドクリーム”が常備されるようになった。

レジとフードの受け渡し口には、”ビニールの透明な

もっとみる
おすすめは何ですか?

おすすめは何ですか?

日が伸びてきたな。

梅雨が明け、もう19時だというのにお店の外はまだ明るい。

小さいころ、時計を見ないで外で遊んでいて、気が付いたら門限を過ぎていた。”お日さまを時計代わりにしてはいけない”。母に怒られながらそんなことを考えていたことを覚えている。

”いらっしゃいませ”

他の店員の声が聞こえ、持っていたコーヒー豆を放り投げてレジに向かう。

お待たせいたしました、と注文を伺うと思ってもみな

もっとみる
2年越しの謝罪

2年越しの謝罪

「謝りたいことと提案したいことがあるんだけど」

唐突に自分へ向けられた言葉に驚き、思わず注いでいたアイスコーヒーをこぼしそうになる。

声の主はあきら君(バイト先の同い年の人)だ。いつにも増して低く感じられる声からは、彼が緊張していることが読み取れる。

「なに、急に怖いんだけど」

必死に脳内の記憶をたどるが、謝罪される覚えなんて全くない。身に覚えのない謝罪の言葉がこんなに怖いものだなんて思わ

もっとみる
物との出会いは運命を大事にしたい

物との出会いは運命を大事にしたい

あと1週間で大好きなバイトの先輩の「スター」が辞めてしまう。

受験が終わって、もう4か月近く経つのか。事務所にあるカレンダーを見ると、かわいい柴犬と目が合う。

復帰してから、あっという間だった。私がいない間に入ったバイトの人ともだいぶ打ち解けることができて、少しだけ立場が上になって、でも私が上に上がるということは、その分私の先輩たちがいなくなるということだ。

スターがいなくなったら、開店当初

もっとみる
カフェ店員の私が上の階級を目指した理由

カフェ店員の私が上の階級を目指した理由

お気に入りの曲のイントロとともに、低い振動音が頭に響く。もうそんな時間なのか。手探りでスマホを探し、アラームを止める。

どうせなら気持ちよく目覚めたいと爽やかな曲を選んだが、夢から現実に引き戻されるときに、そんな曲を楽しむ余裕なんてないことが設定して2日くらいでわかった。

どうせならベートーヴェンの運命でも流したほうが清々しいのかもしれない。

準備を済ませ、足にまとわりつく猫と別れを惜しみな

もっとみる
営業知識0だけど買って欲しい

営業知識0だけど買って欲しい

生暖かい雨が梅雨の始まりを感じさせる。肌にまとわりつくような重い空気の中、カフェのカウンター内だけは少しだけ賑やかで、明るい照明と相まって周りから浮いて見えた。

「やったー!何食べよっかな。」

お客様に聞こえないくらいの、ぎりぎりの声で喜んでいるのは私。その隣で頭を抱えている小柄な男性は、私の大好きな先輩のスターだ。

「今日は雨だし、蒸し暑いからアイスが出ると思ったんだけどなあ」

「残念で

もっとみる

店長、それ、誰のために書いてるの?

(これは、何て読むんだ。)

文章を読んでいる私の目は今、止まってしまった。決して難しい漢字にぶつかったからでは無い。ただ、理解不能な文字が目の前にあることは確かだ。

さて、今私は何を読んでいるでしょう。

子守歌とも呼べる先生の声を聴き、薄れゆく意識の中でら睡魔と闘いながらペンを動かした数学のノート?(私の数学ノートにはよくミミズが這っている)

早口な電話相手の言葉に手が追い付かず、どうにか

もっとみる
【エッセイ】⑧誰のためにやってるの?

【エッセイ】⑧誰のためにやってるの?

今私はなぜか「嫌われる勇気」を読んでいる。

事の発端は数日前のバイトの時。

パートナーの階級が☆2になってから、より一層仕事に励むようになった。仕事中に手を止めることはなく、無駄な労働時間が発生しないように意識していた。

その日は暇だった。やることがなく、カウンター内の掃除をしている私の横で、ジャイアンとあきらくんが話していた。

2人とも手が止まっている、のは暇だから良いとして、ジャイアン

もっとみる
【エッセイ】⑦自分の問題と向き合えない人

【エッセイ】⑦自分の問題と向き合えない人

日曜日、お店は大変混む。特に昼間は家族連れが多く、人が増えるだけではなくて注文数まで増えるので余計に忙しい。

混むのは嫌いじゃない。むしろ好きだ。
てんやわんやしながらも、どんどんと捌いていく感じが、いかにも働いている感じがしてやりがいを感じる。

今日もピークタイムからシフトにはいる。きっと入り乱れているであろうカウンターの中を立て直すのを楽しみに思いながら、カウンターに入る。

「おはようご

もっとみる
【エッセイ】⑥ひいきじゃないよ。実力だよ。

【エッセイ】⑥ひいきじゃないよ。実力だよ。

昇級により。ジャイアンとあきらくんよりも階級が上になった。

店長と、パートの主婦さん3人組で相談して決めた結果らしい。

でも、最初は喜びを感じられていたのに、どんどんと気が重くなっていった。

ジャイアンは仕事は雑だけど私の知らないことをいっぱい知ってるし、クレーム対応とか、イレギュラーなことの経験も私よりある。

あきらくんは容量はそこまで良くないものの、やっぱり私の知らない知識をもっている

もっとみる
【エッセイ】⑤スターの登場と募る不信感

【エッセイ】⑤スターの登場と募る不信感

4月になったとはいえ、朝はまだ寒い。カフェの鍵を開けると、ムワッとした気色悪い空気が外へ流れ出てきた。

昨日のクローズの人、エアコン消し忘れたな。
少し換気をしながら届いた荷物の整理を始める。

「おはよう、ゆーりちゃん!今日も早いね。」
イヤホンから流れる音楽越しに、明らかに自分に向けられた言葉を私の耳は受け取った。

ドアの方に目をやると、うぐいす色のスウェットに白のテーパードパンツ、古いス

もっとみる
【エッセイ】④距離が縮まる

【エッセイ】④距離が縮まる

あきらくんに焼肉奢ってもらったんだって??

焼肉に行ってからに何度この質問をされたのだろう。シフトにはいる度に色んな人から同じ事を聞かれる。

私は焼肉のことなんて誰にも言っていない。別に隠しているわけじゃないが、わざわざ話すことでもないからだ。

みんなに話しているのはそう、あきらくん本人だ。チェルじゃないのが少し意外に感じられる。

もしかしたら意外と焼肉代が高かったから、周りの人に愚痴って

もっとみる
【エッセイ】③焼肉

【エッセイ】③焼肉

おはようございます。

シフトインすると、すぐにチェルが駆け寄ってきた。今日はチェルとあきらくんと私が同じ時間に上がるから、みんなで焼肉を食べに行こう。そういう話をされた。

焼肉。
親しい人と行っても気を使う。お肉の焼き加減とか、どれくらい1度に焼いていいかとか、そもそも自分で焼きたい派もいる。

気を使うことが多い食事だ。家族と行く焼肉以外、あまり好きではない。それなのに私はなぜ、大して仲良く

もっとみる