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大きな声で、はっきりと・・・言わなくていいよ

「言いたいことがあるなら、はっきりと言え」「もっと分かりやすく明確に述べろ」 学校や職場で、教師や上司からこんな叱責を受けた経験はないでしょうか。 自分自身はな…

kumayoichi
9日前
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「民主主義」を読む

7月の都知事選、ポスター掲示板や選挙公報を見て暗澹たる気持ちになった人は少なくないのではないでしょうか。 「言論の自由」という名の下に、都知事選とおよそ無関係な…

kumayoichi
2週間前
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好きにさせてみよう

女性活用や性的マイノリティへの配慮・障碍者雇用など、ビジネス社会におけるダイバーシティの重要性が喧伝されることが多くなりましたが、2024年3月に発表されたジェ…

kumayoichi
1か月前
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わかることはかわることである

コロナ禍の前になりますが、アメリカに住んでいる友人から「おもしろいよ」と見せられたニュースアプリがありました。 そのアプリは共和党・民主党いずれかの立場から書…

kumayoichi
2か月前
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してあげればよかった

1980年代の甲子園で、春夏合わせて優勝3回・準優勝2回の実績を残した徳島県立池田高校野球部の名監督・蔦文也氏は「試合前に子どもたちを鼓舞するときは漢語を使い、…

kumayoichi
4か月前
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すぐ役立つことは、すぐに役立たなくなる

少子化に伴い、大学の学生獲得競争が熾烈を極めているからでしょうか、大学の学生募集広告を目にする機会が増えたように思います。 広告を見ていると、情報やAIといった「…

kumayoichi
5か月前
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場を主宰する

先日、大学教授をしている知人に「教師にとって知識を教えることも重要だが、本当に大切なことは『学びへの意欲を起動させること』だと思う」と言われました。 「いかに優…

kumayoichi
6か月前
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言論の自由について

昨今、政治系の雑誌広告が新聞などに頻繁に掲載されています。 それらを見ると、思想的に反対の立場にある人たちを遠慮会釈なく罵倒する文言が並んでいます。 テレビの討…

kumayoichi
8か月前

話を簡単にしてはいけない

大人は身近な問題に対して、その多くが一筋縄ではいかないことを知っている。 だが、大きな問題になると、突然子供のように一刀両断したがる。 夫婦関係や親子関係・組織…

kumayoichi
9か月前

いなくては困る人は、いては困る人

「この仕事は、あの人に頼めば間違いない」「こういう事は、あの人でないと任せられない」・・・たいていの組織には「あの人がいなくては困る」と言われる人がいます。 「…

kumayoichi
10か月前

無駄はムダじゃない

山本昌さんという元プロ野球選手がいます。 現役時代は中日の投手で、史上最年長となる41歳でのノーヒットノーラン、同じく史上最年長となる50歳での登板など数々の記…

kumayoichi
10か月前
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ゲームの力

ゲーミフィケーションという言葉があります。 仕事や勉強などにおいてゲームデザイン要素を用いて生産性を上げようとする手法で、人を能動的にさせるやり方として行動経済…

kumayoichi
10か月前

ルールは誰のためにあるのか?

「規制緩和」という言葉が、一時期メディアを賑わせました。 論調としては概ね「規制=悪」「規制で守られている既得権者も悪」であり「規制緩和=経済活性化」「規制緩和…

kumayoichi
11か月前

計量的知性を持つ

大阪府・市が申請していたIR(統合型リゾート計画)が正式に認定され、国内初のカジノ施設誕生が確実となりました。 このカジノ構想、横浜では賛成派と反対派が激しく対立…

kumayoichi
1年前
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これってあれじゃないか!

20世紀最後の年である2000年、アメリカのクレイ数学研究所が、未だ証明されていない7つの未解決数学問題について「解決したら各々100万ドルを与える」と発表し、…

kumayoichi
1年前
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モノサシというリスク

作家の司馬遼太郎氏は、第二次大戦中に戦車部隊の陸軍少尉として旧満州などに配属されていました。 司馬氏は機械に疎く、戦車の扱いには苦労したようで、自ら「決して優秀…

kumayoichi
1年前
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大きな声で、はっきりと・・・言わなくていいよ

「言いたいことがあるなら、はっきりと言え」「もっと分かりやすく明確に述べろ」

学校や職場で、教師や上司からこんな叱責を受けた経験はないでしょうか。
自分自身はなくても、誰かが怒られているのを見聞きした経験ならば、おそらく大半の人が思いあたるでしょう。

教師や上司のこうした発言に疑問を呈する人はあまりいないかと思いますが、私は、人にモノを言う時は「明確な論旨ではっきりと言うべきである」という、一

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「民主主義」を読む

7月の都知事選、ポスター掲示板や選挙公報を見て暗澹たる気持ちになった人は少なくないのではないでしょうか。
「言論の自由」という名の下に、都知事選とおよそ無関係な写真・文面が並ぶポスターを子供が見ているのに出くわすと、申し訳ない気持ちにすらなりました。

民主主義が危機に瀕しているように見えるのは日本だけではありません。
立場の違いが、論争を超えて互いに相手を罵り合うまでになった二項対立の激しさや、

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好きにさせてみよう

女性活用や性的マイノリティへの配慮・障碍者雇用など、ビジネス社会におけるダイバーシティの重要性が喧伝されることが多くなりましたが、2024年3月に発表されたジェンダー開発指数(GDI)によると、日本の女性活躍度は調査対象146か国中の118位という状況です。

こうなっている原因にはさまざまな要因がありますが、私は「平均的・標準的な働き手を想定した企業運営」も大いに影響しているのではないかと思って

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わかることはかわることである

コロナ禍の前になりますが、アメリカに住んでいる友人から「おもしろいよ」と見せられたニュースアプリがありました。

そのアプリは共和党・民主党いずれかの立場から書かれたニュース記事が満遍なく掲載されていて、共和党寄りの記事を読むとヘッダーにあるバロメーターの赤(共和党のカラー)が増え、民主党寄りだと同党の色である青が増える仕組みになっていました。

友人は共和党支持者ですが「赤の記事ばかりではな

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してあげればよかった

1980年代の甲子園で、春夏合わせて優勝3回・準優勝2回の実績を残した徳島県立池田高校野球部の名監督・蔦文也氏は「試合前に子どもたちを鼓舞するときは漢語を使い、試合後にねぎらうときには大和ことばを使う」と言っておられたそうです。

確かに「乾坤一擲」や「奮闘努力」などの漢語は、試合前に聞くと身が引き締まるでしょうし、試合後は「よくやったね」といった大和ことばの方が心に響きそうです。

政治家や役人

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すぐ役立つことは、すぐに役立たなくなる

少子化に伴い、大学の学生獲得競争が熾烈を極めているからでしょうか、大学の学生募集広告を目にする機会が増えたように思います。
広告を見ていると、情報やAIといった「いまどきの流行ワード」を並べた学部・学科新設を謳う大学が多いようですし、「社会ですぐに役立つ」実学志向を打ち出している学校も少なくありません。

企業経営者の中にも「大学では、実社会ですぐに役立つ勉強をさせろ」という声は多く、時には「文学

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場を主宰する

先日、大学教授をしている知人に「教師にとって知識を教えることも重要だが、本当に大切なことは『学びへの意欲を起動させること』だと思う」と言われました。
「いかに優れた教師でも知識量には限りがあり、知識の森に自ら分け入っていこうとする自学自習にこそ学びの本質はある。学生に「学びへの意欲」が生まれれば、教師の仕事は半ば終わったようなものだ」と。

小学校の頃「昆虫にメチャクチャ詳しい奴」や「どんな草花で

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言論の自由について

昨今、政治系の雑誌広告が新聞などに頻繁に掲載されています。
それらを見ると、思想的に反対の立場にある人たちを遠慮会釈なく罵倒する文言が並んでいます。

テレビの討論番組などでも、発言者が保守かリベラルかに関係なく、自分と異なる意見を持つ相手を小馬鹿にし「何でこんなことが分からないのか」と言わんばかりの上から目線での発言が飛び交っているので、最近は見る気が失せました。

ごく一般の人々によるSNS等

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話を簡単にしてはいけない

大人は身近な問題に対して、その多くが一筋縄ではいかないことを知っている。

だが、大きな問題になると、突然子供のように一刀両断したがる。

夫婦関係や親子関係・組織内の人間関係・難しい顧客への対応・・・人生において右か左か簡単に解決策を見いだせない事は山ほどあります。

外部の人から「こうしたらいいのではないか」と正論めいたアドバイスをされても「部外者だからそう言えるけれど、そうは言ってもなあ」と

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いなくては困る人は、いては困る人

「この仕事は、あの人に頼めば間違いない」「こういう事は、あの人でないと任せられない」・・・たいていの組織には「あの人がいなくては困る」と言われる人がいます。

「あの人がいなくては困る」という表現は、基本的に誉め言葉として使われていますし、言われる本人も自分がそういう存在であることを大なり小なり誇りに感じていることが多い。

しかし、健全な組織運営を考えた時、余人を持って代え難い「いなくては困る人

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無駄はムダじゃない

山本昌さんという元プロ野球選手がいます。
現役時代は中日の投手で、史上最年長となる41歳でのノーヒットノーラン、同じく史上最年長となる50歳での登板など数々の記録を持ち、通算219勝を挙げた名選手です。

山本さんは入団から4年目まで1勝も挙げることができず、球速も130km前後しか出なかったこともあり、当時の星野監督から「お前は使えんなあ」と事実上の戦力外通告を受けていました。

5年目に、

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ゲームの力

ゲーミフィケーションという言葉があります。
仕事や勉強などにおいてゲームデザイン要素を用いて生産性を上げようとする手法で、人を能動的にさせるやり方として行動経済学の側面からも注目され、一時期すごく流行りました。

私はトラブル対応の際にこれを活用しています。

仕事をしていると、大きなクレームや社員の急病・事故など予期せぬ事態が起きることがあります。
そんな事態に遭遇して「うわあ、たいへんだ」と思

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ルールは誰のためにあるのか?

「規制緩和」という言葉が、一時期メディアを賑わせました。
論調としては概ね「規制=悪」「規制で守られている既得権者も悪」であり「規制緩和=経済活性化」「規制緩和=善」という図式で語られることが多かったように思われます。

弁護士の知人から「規制イコール悪という考え方は一方的すぎます。規制というのは本質的には福祉なんですよ」と言われたことがあります。

怪訝な顔をしている私に対して、知人は「法律的に

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計量的知性を持つ

大阪府・市が申請していたIR(統合型リゾート計画)が正式に認定され、国内初のカジノ施設誕生が確実となりました。

このカジノ構想、横浜では賛成派と反対派が激しく対立して結局撤回となり、大阪でも激論が交わされました。

賛成派は「経済効果が高い」と言い、反対派は「ギャンブル依存症や犯罪が増える」と主張して互いに譲らず、時には聞くに耐えない罵詈雑言の応酬が交わされることさえありました。

今や日本のみ

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これってあれじゃないか!

20世紀最後の年である2000年、アメリカのクレイ数学研究所が、未だ証明されていない7つの未解決数学問題について「解決したら各々100万ドルを与える」と発表し、ミレニアム懸賞問題と名付けられました。

7つの懸賞問題のうち2022年までに解決されたのは1つだけ。
ロシアの数学者グレゴリー・ペレルマンによって2003年に解決されたポアンカレ予想と呼ばれるもので、1904年にフランス人数学者のアンリ・

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モノサシというリスク

作家の司馬遼太郎氏は、第二次大戦中に戦車部隊の陸軍少尉として旧満州などに配属されていました。
司馬氏は機械に疎く、戦車の扱いには苦労したようで、自ら「決して優秀な軍人ではなかった」と回顧していますが、司馬氏と軍隊生活を共にした方によると「彼は戦車の扱いは下手だったが、いつも笑みを絶やさない明るい性格だったので仲間から好かれていた」そうです。

その司馬氏が後年、こんな話をされています。

「私の所

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