好きにさせてみよう

女性活用や性的マイノリティへの配慮・障碍者雇用など、ビジネス社会におけるダイバーシティの重要性が喧伝されることが多くなりましたが、2024年3月に発表されたジェンダー開発指数(GDI)によると、日本の女性活躍度は調査対象146か国中の118位という状況です。

こうなっている原因にはさまざまな要因がありますが、私は「平均的・標準的な働き手を想定した企業運営」も大いに影響しているのではないかと思っています。

企業が定める就業規則や各種規定などを見ると「当社のメンバーはこうあるべき」という標準的人物像が定められていて、そこから大きく外れることを「よしとしない」雰囲気をヒシヒシと感じます。

そもそもダイバーシティなる言葉を使う際には、対象となる人々を「多数派に属さない=平均的・標準的ではない人たち」だと考えているケースがほとんどですよね。

でも、ダイバーシティなる言葉が喧伝される以前においても、企業が考えるような平均的・標準的な人たちが企業メンバーの大半を占めていた訳ではありません。

あらゆる面で平均的・標準的な人物など存在しないからです。

実は、企業が想定している平均的・標準的な働き手からは誰もが大なり小なり外れていて、そこに生きづらさを感じる人たちが少なからずいたはずです。

実際には一人一人考え方も感じ方もブレがあるのに、一定の幅に納まることを企業は要求し、それに耐えられる人たちだけの集団にしようとしていたのではないでしょうか。

今や、あらゆる企業が「創造性が大事」と唱えていますが、創造的であることは平均的・標準的とは真逆といってもいい訳で、そういう人たちを許容する組織風土になっていないことが、日本企業の一人あたり生産性がOECD加盟38か国中30位という低いままになっている一因ではないかと思うのです。

多くの日本企業では、平均的・標準的な(企業にとって行儀のいい)ビジネスパーソン像を演じることに長けた人の前にキャリアパスが開かれていて、創造的な人たちがノビノビと活躍できる「自由闊達な風土」を出現させることを難しくしている、そんな気がしてなりません。

岐阜にある未来工業という会社は、従業員800人ほどで年間休日140日以上、原則残業なしで業績は40年以上黒字続き、保有特許数2000件以上は並み居る大企業を押しのけて日本のベスト10位内に入るという凄い中堅企業です。

創業者の故山田昭男会長は生前「アーティストに『制作プロセスを逐一報告しろ』なんて言って創造的なものが生まれる訳ないだろう。うちは一人でも多くの社員にクリエイティブであってほしいから、報連相禁止。『そんなことしている暇があったら考えろ!』と言っている」と述べておられました。

企業によって特性・個性が違うとはいえ、山田氏の基本的考え方には大いに肯けます。

経営者にとって極めて大切なことは「企業のパフォーマンスを最大限に発揮するためにはどうすればいいか」を考えて実行することですが、そのためには「やる気のある創造的なメンバーに、思い切って好きにさせる」ことだと思います。

いかなる組織・集団も2:6:2の法則に基づくと言われます。
平均以上の仕事をする人が2割、平均的な仕事をする人が6割、平均に満たない仕事しかできない人が2割です。

日本の多くの組織では、下位2割の人を見つけだして罰則を課すことを「マネジメント」だと信じている人が数多くいます。管理職と言われる人の大半がそうかも知れません。

でも働かずにグータラしているように見える人たちに罰則を与えれば組織のパフォーマンスが向上するかと言えば、そんなことは絶対にありません。

それよりも上位2割の人たちに気分よく仕事をしてもらうことで、下位2割のマイナスを補って余りある成果が生まれるようにする方が、費用対効果はまず間違いなく高くなります。

そして、創造的な仕事をする人々が求めるのは「上司からごちゃごちゃ言われて管理されないこと」なのです。

このことを理解して勇気を持って実行することが、創造性の高い仕事を生み出すための企業マネジメントの要諦ではないでしょうか。

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