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#小説

小説「見習い占い師 ルキは解決したい! 友情とキセキのカード」著・荒井寛子  読書感想文

小説「見習い占い師 ルキは解決したい! 友情とキセキのカード」著・荒井寛子  読書感想文

主人公であるルキはルノルマンカード占いが得意な小学校6年生の女の子。
ルノルマンカード占いを教えてくれた関西出身のおばあちゃんの影響で、関東に住んでいながら常に関西弁を話し、ちょっとオバチャンみたいなところもあるけれど、いつも元気いっぱい!

恋愛など、人間関係に悩む友達の相談事をルノルマンカードを使って応援をしていたのですが、ある日、同級生のひとりが同じようにルノルマンカードを使うようになり、周

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小説「燕は戻ってこない」著・桐野夏生 読書感想文

小説「燕は戻ってこない」著・桐野夏生 読書感想文

現在、NHKでこの小説の連続ドラマが放送されていますが、なかなか観る機会が取れないので本で読みました。

主人公のリキは北海道出身の20代女性。
短大を卒業後、地元で就職するも介護職で給料が安く人間関係もうまくいかないため上京しますが、月給14万円の医療事務の派遣社員として働く日々。
ある日、病院で似たような暮らしをしている同僚から生殖医療ビジネスに誘われます。
同僚は途中で投げ出すものの、貧乏に

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「ハロルドとモード」コリン・ヒギンズ著 読書感想文

「ハロルドとモード」コリン・ヒギンズ著 読書感想文

自殺の真似事を繰り返す19歳の青年ハロルドは、他人の葬儀に出席する事が趣味の1つ。
ある葬儀で、自分と同じ様に故人と無関係の老女モードと出会う。無邪気に盗んだバイクや車で走り出す79歳のモードと過ごすうち、その天衣無縫ぶりに魅了されるハロルド。

モードの話す言葉はいつも自由で優雅。
凡人の素朴な疑問に地球レベルで返す奇抜な言動にハッとさせられたり笑ってしまったり。
創作の中にいるアウトサイダーは

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仏小説「青いパステル画の男」著・アントワーヌ・ローラン 読書感想文

仏小説「青いパステル画の男」著・アントワーヌ・ローラン 読書感想文

パリの弁護士ショーモンは古美術コレクター。オークション会場でもお馴染みの顔だ。その散財を妻であるシャルロットに咎められているが、古美術愛は止まらない。
ある日、ショーモンは自分にそっくりな男が描かれている青いパステル画と出合う。どうしても手に入れたいショーモンはオークションにて高額で競り落とす。
青いパステル画の中の男が自分にそっくりであるというのに、周りの人間は誰一人気づかない。腑に落ちないショ

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「束縛」著・南口綾瀬 読書感想文

「束縛」著・南口綾瀬 読書感想文

中年の女性ライターあやめは父親の訃報を受け、夫の豊とともに実家へと向かっていた。その間に自分の仕事や家族について回想をする。
その道中に弟から電話がかかってくる。
「父ちゃん、誰かに殺されたんだと思う」

文章自体はとても読みやすく、物語の中に自然に入り込めた。
また、主人公あやめの作品から物語へ導く手法や、時系列を不規則にしたり、それまでに無かったことを描いて引きつけた後にその内容を明かしたりす

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小説「蓼食う虫」 谷崎潤一郎・著 読書感想文

小説「蓼食う虫」 谷崎潤一郎・著 読書感想文

人の事を許せないまたは理解できないと思う時、判断の指針となっているのは各自の持つ道徳であろう。どんなに気の合う相手でも、それだけは互いに少しずつズレがあるもの。
受け入れたり認めたりするわけではないが、何かその出来事に一言答えを出す場合に、「まあ、蓼食う虫も好き好き言うしなあ」と適当に流した経験がある人もいるだろう。
かく言う私もこの本の主人公である要という大人の男性に対してそんな想いを抱いた。

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小説「少年」 著・川端康成 読書感想文

小説「少年」 著・川端康成 読書感想文

主人公は五十歳を迎え、かつて自分の記した二つの文章を振り返っている。一つは主人公の代表作となる小説のベースになったものであり、もう一つは学生時代に男子寮で共に過ごした少年たちとの交流を記録したものだ。
そのなかで主人公は「清野」という少年と近しくなる。
眠る時に肌を触れ合わせる程度であるが、互いにその行為に何の疑問も持たないでいた。
また、主人公は清野だけではなく、両腕に他の少年を抱えて眠る夜もあ

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小説「彩の無い天使」著・南口綾瀬 読書感想文

小説「彩の無い天使」著・南口綾瀬 読書感想文

女性の多くが「武装」していることをご存知でしょうか。

もちろん、それぞれの目的に即した装いをするのは当たり前。
誰が見ても一見、女性ならではの装い。
それが実は「武装」だと気づいている人はどれくらいいることでしょう。

この小説に出てくる10代なかばの少女アヤは、既に武装しています。
ロリータ風のヘアスタイルやファッションで。
女性らしいありのままの姿では、男性たちから露骨に性的ターゲットとして

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「Copy〜私はあなたで、あなたは私」著・バジル 読書感想文

「Copy〜私はあなたで、あなたは私」著・バジル 読書感想文

この小説は、一話分の長さ及び内容が生活のスキマに程よくはまるスマホで読むのに適した作品である。短い時間できちんとドキドキさせてくれる良作だと言えるだろう。また、間違った謙虚さで自らを縛り付けている人を解放してくれる小説でもあると思う。読んでみることで、自分を締めつけている鎖を砕いてみてはどうだろうか。

この小説の主人公である夏美は、家庭やパート先にて心がそがれる日々を送っている。ある日、自分によ

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「いま一度、彼女の中に灼熱を」著・草凪優 読書感想文

「いま一度、彼女の中に灼熱を」著・草凪優 読書感想文

牛尾(男性)は50歳を前にして脱サラをし、山小屋で自由気ままな生活をしていた。

50代後半に差し掛かった頃、牛尾は元同僚から彼が現在社長を務めている会社の社史編纂室で働かないかと誘いを受ける。

社史編纂室とは名ばかりで、そこはリストラ対象になった社員が送られる場所。
牛尾の仕事はその対象者を受け入れ先へ送り届けることだった。

牛尾本人はあっさり無欲。エピソードの2話目までは結構都合の良い場面

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トーキョー・クロスロード 著・濱野京子 読書感想文

トーキョー・クロスロード 著・濱野京子 読書感想文

「別人に変装して、ダーツに当たった、山手線の駅で降りてみる」

粗筋の一文を読んで、あ、私の好きな感じかもと購入し読んでみたものの、想像していたものとは違いました。

主人公の森下栞は高校一年生。栞の趣味は、休日にダサい格好をしてダーツに当たった山手線の駅で降り街を散策すること。
ある日、栞は散策中に一人の少年と出会います。二人は偽名を名乗りあいますが、実は中学のクラスメイト同士。

月島耕也とい

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仏小説「赤いモレスキンの女」アントワーヌ・ローラン著 読書感想文

仏小説「赤いモレスキンの女」アントワーヌ・ローラン著 読書感想文

金箔職人の中年女性ロールは、自宅の前でいきなり暴行を受ける。
バッグを奪われたロールは命からがら自宅の前にあるホテルへ行き、職員の男性に事情を話して一泊するも、翌日容体が急変し病院へ運ばれてしまう。

一方、書店経営者である中年男性ローランは、出勤途中にゴミ箱の上に置かれたバッグを見つける。
ローランは警察へ持参するも、担当コーナーが混雑しており、提出しそびれてしまう。
自宅へバッグを持ち帰ったロ

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山田太一著「読んでいない絵本」読書感想文

この本は、小説とドラマや舞台の脚本が集められた短編集である。

正直、脚本2作においては読み慣れない作風であるのもあってあまり頭に入ってこなかった。原因がこちらの落ち度だけなのかはわからない。

印象に残った短編が2つある。1つ目は最初に掲載されている「あの街は消えた」。

主人公の青年が食堂で焼きそばを食べていると、相席の中年女性からアルバイトをしないかと声をかけられる。

”「アルバイトやんな

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安岡章太郎著小説「ガラスの靴 悪い仲間」という短編集を読んでいる。佇まいは純文学ど真ん中。主人公はだいたい恋のおひたし状態。恋人が想定外の事をすると、もうおひたしどころか煮浸し。こういうのって心の中に余暇がないと読めない。と言うことで脱落しそう。小説が読めなくなっているなあ。