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短編小説#11 二つの道
1人の男性は、小説家を目指してペンを握った。
1人の女性は、ピアニストになりたくて鍵盤を沈めた。
1人の男性は、愛する人とのことを思い、夢を諦めた。
1人の女性は、夢を諦めて、経営を学んだ。
1人の男性は、会社の同僚と新しい会社を建てた。
1人の女性は、子供が欲しくて妊活を始めた。
1人の男性は、守るもののために仕事を頑張った。
1人の女性は、仕事を辞めて、生配信を始めた。
1人の
短編小説 ツイてる自分は欲しかった自分?
あなたは、今日ツキます。
月を手に入れたあなたにほんの些細なツキを堪能してください。
月はそう話していた。ついてない自分にツキを作れるのだと。本当か?嘘つけ、きっと眠たくて夢見てるんだ今。
もう一度寝ることにして、俺は月を置いて寝た。
目が覚めるとそこには月は無かった。夢だなと確信を持って、今日も背広に腕を通して、重苦しい時計をつけて、見たくもないスケジュールを眺めながら、乗りたくない電車
短編小説#9 道のり
君と付き合いたくて、僕は眼鏡をやめた。
コンタクトにしてから世界の見え方が少し変わった。
君に好きになって欲しくて僕は髪を短くした。
髪を短くしてからワックスを買うようになった。
君に話しかけたくて興味がなかった音楽を嗜んだ。
音楽はこんなに波があって愛があると知った。
君とデートに行きたくてデートスポットをネットで調べた。
初めて行く場所は緊張するから下見にも行った。
君に告白するために
短編小説#8 何を守るための個性か
僕のお父さんとお母さんはいつも仲が良いのにたまに喧嘩する。
お父さんは大きな声で怒るし、お母さんは甲高い声で怒る。
僕はそんな2人を見ているのが怖くて今日も一人で静かに眠る。
起きて朝になるとお父さんは出かけててお母さんがご飯を用意してくれる。
お母さんはお父さんとどうして結婚したの?
お母さんは、お父さんに助けてもらったの。
そう。助けてもらったのだという。
お母さんが周りから蔑ん
短編小説♯7 目の前に現れたのは?
迎えに来たのは
天使でもなく死神でもない、ただの少女だった。
私を迎えに来たのですか?いいえ。
連れてってくれるのですか?いいえ
じゃあ何をしに私の前に現れたのですか?・・・・
その少女は答えてくれなかった。答えて欲しかったことは、私は天国に行けるのか地獄に落ちるのか。
少女は後ろを向いて歩いていく。
私は1人にされるのが怖くて声を出したが、声が出なかった。音が無くなった。
後ろから
短編小説♯5 なんでなの?
なんで電車を止めないのかな。
つり革を掴むことも戸惑う日が来るくらい、世界は変化した。マスクは必須、アルコールに負けて荒れる指、あったとしても透明な敷居で間に壁を作って、今ではお酒の提供もできなくて、私のアルバイト先は案の定休業になってしまった。
電車に揺られて隣の人の肩が当たる。
こういうのは濃厚接触って言わないのかな。
車内のニュースはオリンピックをやるのかやらないのかと毎日毎日言い争
短編小説♯4 心に貼られた絆創膏。
ひどい雨に降られた。
朝の天気では、にわか雨とは言ってたものの帰る頃には止んでいると聞いていたのに。
予報は予報。外れる時は外れる。最近行った占いもそうだった。三ヶ月以内にできる年下の彼氏は現れることなく過ぎてしまい、幸せが近づいてると言われて近づいてきたのは、ストーカー化した元彼とマッチングアプリのヤリモク四十代自称社長。
運が尽きたのかな、そう感じて空から落ちてくる容赦ない冷たい弾丸にうたれ