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紅茶のように暖かくほろ苦いストーリーだったりを集めました。皆さんのコメントお待ちしてます。
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短編小説#11 二つの道

短編小説#11 二つの道

1人の男性は、小説家を目指してペンを握った。

1人の女性は、ピアニストになりたくて鍵盤を沈めた。

1人の男性は、愛する人とのことを思い、夢を諦めた。

1人の女性は、夢を諦めて、経営を学んだ。

1人の男性は、会社の同僚と新しい会社を建てた。

1人の女性は、子供が欲しくて妊活を始めた。

1人の男性は、守るもののために仕事を頑張った。

1人の女性は、仕事を辞めて、生配信を始めた。

1人の

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短編小説 ツキを掴んだ

短編小説 ツキを掴んだ

中秋の名月

9月は月見だ。今の世の中、明るすぎて普段見ない月を、多くの人が見上げる。

今日はすごく疲れた。部下の発注ミスで多くの企業様への謝罪周り、その部下はつまらないから仕事を辞めると言って辞表を書いていたりと、会社では不満が溜まった。

そしてその後彼女とのやりとりを造作にしてしまい、彼女からも連絡は来ない。

何がダメだったのだろう、どこで外れたんだろう。

そう思いながらも家には帰らな

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短編小説 ツイてる自分は欲しかった自分?

短編小説 ツイてる自分は欲しかった自分?

あなたは、今日ツキます。

月を手に入れたあなたにほんの些細なツキを堪能してください。

月はそう話していた。ついてない自分にツキを作れるのだと。本当か?嘘つけ、きっと眠たくて夢見てるんだ今。

もう一度寝ることにして、俺は月を置いて寝た。

目が覚めるとそこには月は無かった。夢だなと確信を持って、今日も背広に腕を通して、重苦しい時計をつけて、見たくもないスケジュールを眺めながら、乗りたくない電車

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短編小説#10 質問コーナー

短編小説#10 質問コーナー

「俺の好きなところは?」

『運転してるのがかっこいいところ。』

「俺がゆりの好きなところは?」

『えー。胸が大きいところ?』

「んなわけ笑それもあるけどそこだけなら最低だろ。」

『ひろサイテー』

こんな感じに俺たちはドライブの時、話題がふと無くなったら質門コーナーをする。

本当、付き合い始めてからこのコーナーだけはずっと辞めずに続けてる気がする。

「好きな香りは?」

『金木犀』

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短編小説#9 道のり

君と付き合いたくて、僕は眼鏡をやめた。
コンタクトにしてから世界の見え方が少し変わった。

君に好きになって欲しくて僕は髪を短くした。
髪を短くしてからワックスを買うようになった。

君に話しかけたくて興味がなかった音楽を嗜んだ。
音楽はこんなに波があって愛があると知った。

君とデートに行きたくてデートスポットをネットで調べた。
初めて行く場所は緊張するから下見にも行った。

君に告白するために

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短編小説#8 何を守るための個性か

僕のお父さんとお母さんはいつも仲が良いのにたまに喧嘩する。

お父さんは大きな声で怒るし、お母さんは甲高い声で怒る。

僕はそんな2人を見ているのが怖くて今日も一人で静かに眠る。

起きて朝になるとお父さんは出かけててお母さんがご飯を用意してくれる。

お母さんはお父さんとどうして結婚したの?

お母さんは、お父さんに助けてもらったの。

そう。助けてもらったのだという。

お母さんが周りから蔑ん

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短編小説♯7 目の前に現れたのは?

短編小説♯7 目の前に現れたのは?

迎えに来たのは

天使でもなく死神でもない、ただの少女だった。

私を迎えに来たのですか?いいえ。

連れてってくれるのですか?いいえ

じゃあ何をしに私の前に現れたのですか?・・・・

その少女は答えてくれなかった。答えて欲しかったことは、私は天国に行けるのか地獄に落ちるのか。

少女は後ろを向いて歩いていく。
私は1人にされるのが怖くて声を出したが、声が出なかった。音が無くなった。

後ろから

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短編小説♯6 そのケーキの味、極楽

短編小説♯6 そのケーキの味、極楽

昼休み、血を吸いたいと歩き回り、日をフードで避け、ニンニクの匂いがするラーメン屋には入れず(ラーメンは好きなのに。)、トマトジュースを見るだけでドキッとしてしまっては、十字架を見るだけで貧血を起こし、何より化粧をしても鏡に映らないから仕上がっているか他人に聞くしかない。

そうこうしていると休憩の時間が終わってしまう。

でも血が、血が欲しくてたまらない。

誰か血をくれないか、誰か私に。

また

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短編小説♯5 なんでなの?

短編小説♯5 なんでなの?

なんで電車を止めないのかな。

つり革を掴むことも戸惑う日が来るくらい、世界は変化した。マスクは必須、アルコールに負けて荒れる指、あったとしても透明な敷居で間に壁を作って、今ではお酒の提供もできなくて、私のアルバイト先は案の定休業になってしまった。

電車に揺られて隣の人の肩が当たる。

こういうのは濃厚接触って言わないのかな。

車内のニュースはオリンピックをやるのかやらないのかと毎日毎日言い争

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短編小説♯1 叶わない、かもしれない、願い

短編小説♯1 叶わない、かもしれない、願い

私は、夢の中にいた。そして目の前には彼がいる。

彼は会ったことない人だ。でもなぜだろう、心がすごく温かくなる。

「結婚してくれますか?」

彼から言われた突然の婚約。

ただ、迷うことはなかった。

「はい。こちらこそよろしくお願いします。」

彼の顔は笑みが溢れ、自分の拳をぐっと握った。

そして、その拳を解いて、私の頬に手を当てた。

この温もり、そして微かな震え。

本気で握っていたのだ

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短編小説♯2 離れないで。

短編小説♯2 離れないで。

「キスして。」

あなたはキスをしてくれる。

「手を握って。」

強く手を握ってくれる。

好き

好きだよ

愛してる

愛してるよ

結婚して?

・・・

いつもここだけ、答えは返ってこない。

私達は付き合って3年は経つ。けど、いつまでも、私たちの時計は止まったまま。

出会った時は、お互い恋人のひどい束縛を受けている時。Twitterで出会って、お互いの悩みを話して、あっちから(あれ、

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短編小説♯3 反対側でマスクを外す君

短編小説♯3 反対側でマスクを外す君

その子は、月、水の朝、いつもレジにいる。

自分は朝はギリギリまで寝る。早く起きても、必ず睡魔に負けてギリギリ起きて少し小走りになりながら、スーツに腕を通す。

一人暮らしにも一年もすれば慣れて、朝どれだけギリギリまで寝れるかを徹底した準備っぷりには、我ながら感心している。

そしてギリギリに起きる代償。

朝ごはんは駅で食べる。

おにぎりと野菜ジュース。具はローテーションで、野菜ジュースも三種

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短編小説♯4 心に貼られた絆創膏。

短編小説♯4 心に貼られた絆創膏。

ひどい雨に降られた。
朝の天気では、にわか雨とは言ってたものの帰る頃には止んでいると聞いていたのに。
予報は予報。外れる時は外れる。最近行った占いもそうだった。三ヶ月以内にできる年下の彼氏は現れることなく過ぎてしまい、幸せが近づいてると言われて近づいてきたのは、ストーカー化した元彼とマッチングアプリのヤリモク四十代自称社長。

運が尽きたのかな、そう感じて空から落ちてくる容赦ない冷たい弾丸にうたれ

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