木勢佐雪

小説を始めとした文章を書きます。写真も、クレジットが無い画像は私が撮っています。 20…

木勢佐雪

小説を始めとした文章を書きます。写真も、クレジットが無い画像は私が撮っています。 2020年5月2日時点でnoteへの投稿を辞めました。記事を保存するためにアカウントを残しています。 連絡先:kise19950305@gmail.com

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  • 急に巴黎

    行き先はフランス・パリとナント市。自分への土産のつもりで書いた旅行記。

  • 日記張

    書こう思った日だけ書く日記

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    木勢佐雪創作小説集。

記事一覧

固定された記事

【小説】螺鈿の髪留め

内海肇(ウツミ ハジメ)は蒸し暑い梅雨(ばいう)の中を、二本の傘を携えて歩いていた。一本は彼自身の傘で、今差している。もう一本は濡れてしまわないように、持ち手を握る…

木勢佐雪
5年前
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ガーベラ

 そのガーベラは、人が花にする期待を全て裏切るものだった。鬱々とした気持ちから人をふと引き上げるような芳香もなければ、ひらりと花びらを散らせて人の心を凪にするは…

木勢佐雪
4年前
12

ガーベラを活けて10日目

ガーベラを活けて初日まず短歌をしたためる。 3日目から1週間くらい4日目からはこんな感じ。 そして10日目今日で全部の筒状花が咲き切った。 花びらも端が干からびたり…

木勢佐雪
4年前
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先週からガーベラ活けてますが変化が顕著で面白い。中心の小さい花々(筒状花)が開くと色がついて伸びて花弁(舌状花)になります。不揃いに、にょきにょき伸びるので観てるとゾワゾワ来てキモ面白い。朝に水切りしてるだけなのに育ててる感すごくある。写真は活けて三日目なので、まだそうでもない。

木勢佐雪
4年前
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『ムカデ人間』シリーズ、風刺映画かなと思って調べたらホラー映画だった。つなげてみたい、というポスターのコピーにちょっと期待したもんで。

木勢佐雪
4年前
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凱旋門は遠いので ヴォールトの彫刻そっくりなガーベラ活けてた

木勢佐雪
4年前
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PCで『蜜のあわれ』を再生し 葡萄の皮で尾鰭を紡ぐ

木勢佐雪
4年前
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小説『螺鈿の髪留め』たくさん読んでもらえて嬉しいです。ありがとうございます✨なのですが、これ全四話で中編一本という構成の作品集『雨障み』の中の一話です。『螺鈿の~』は、その中の三話目です。ですから、これ実は続きがあります。

https://note.com/kise1995/m/m490858e12b5f

木勢佐雪
4年前
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漫画原作『トカメネコ』

猫が好きだけど猫アレルギーがある研究生、直海さんに、海外を旅していた父親(定年退職したが、土木技術資格試験のブログとかで稼いでいて悠々自適)から贈られた新種の生…

木勢佐雪
4年前
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「現実」→現実(高橋源一郎『さよなら、ニッポン』より、なお引用ではありません)

世界「現実」→バラバラのものをあわく結ぶと思ってた 現実→同じ人同士に組んで、分断する言葉として使う。でも、表面的にはバラバラなものを繋いでいると思っている …

木勢佐雪
4年前
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ヘビーリスナーさんへのDM

初めまして。私はラジオ局で制作補助のアルバイトをしている学生です。夜の生放送で、リスナーさんからのメールやTwitterを印刷してディレクターとパーソナリティーに渡す…

木勢佐雪
4年前
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走る方が上手い鳥

 今朝は雪明かりが眩しくて、リビングダイニングのカーテンが透けていた。金曜日は一限目からなので、千幸は早く起きた。起き抜けに階段下の段ボール箱にあった林檎を二つ…

木勢佐雪
4年前
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数日、研究図書を要約のために読みながらノートを取り、レジュメを作ろうとキーボード叩いて、息抜きにスマホを持ちながらYouTubeの公式チャンネルで『ブラックジャック』を見ていたら、ついに病院で腱鞘炎なりかけと言われた。

木勢佐雪
4年前
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旅行記『急に巴黎』、完結しました。

https://note.com/kise1995/m/m629647647bf8

木勢佐雪
4年前
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こぼれ話

1.初日か最終日か曖昧だ。だが、パリでだったのは確かだ。最終日はほとんどバス移動だったし、ふらふら歩いているときに見つけたから、初日のことでいいと思う。 大学の一…

木勢佐雪
4年前
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横になりたい今すぐに

12月31日 月曜日 共同ドミトリーのリビングが閉じた。ソファーで目を閉じて休めた数分前が惜しい。部屋から持ってきた財布、ノートとペン、スマホ、カフタイプイヤフォン…

木勢佐雪
4年前
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【小説】螺鈿の髪留め

【小説】螺鈿の髪留め

内海肇(ウツミ ハジメ)は蒸し暑い梅雨(ばいう)の中を、二本の傘を携えて歩いていた。一本は彼自身の傘で、今差している。もう一本は濡れてしまわないように、持ち手を握る拳を胸に当てるようにして庇っていた。さらには、細長いビニール袋をかけていた。それは、彼が勤める会社から発行されたポスターカレンダーを包んでいたビニール袋で、クローゼットの肥やしにしていたのを昨夜に思い出して、しめたとばかりに傘の防水にリ

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ガーベラ

ガーベラ

 そのガーベラは、人が花にする期待を全て裏切るものだった。鬱々とした気持ちから人をふと引き上げるような芳香もなければ、ひらりと花びらを散らせて人の心を凪にするはかなさもない。そこに在ることで人を動揺させ、ひいては衰弱させるということが専門機関の研究で分かっていた。
 ガーベラのことで相談があると鐘村(かねむら)から連絡が来た。私はサングラスをかけ、膝下まで丈のあるジャンパーを着て車に乗った。乗る前

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ガーベラを活けて10日目

ガーベラを活けて10日目

ガーベラを活けて初日まず短歌をしたためる。

3日目から1週間くらい4日目からはこんな感じ。

そして10日目今日で全部の筒状花が咲き切った。

花びらも端が干からびたり、割けたり、花粉で汚れたり、ちょっと擦れた感じになった。

終わり

先週からガーベラ活けてますが変化が顕著で面白い。中心の小さい花々(筒状花)が開くと色がついて伸びて花弁(舌状花)になります。不揃いに、にょきにょき伸びるので観てるとゾワゾワ来てキモ面白い。朝に水切りしてるだけなのに育ててる感すごくある。写真は活けて三日目なので、まだそうでもない。

『ムカデ人間』シリーズ、風刺映画かなと思って調べたらホラー映画だった。つなげてみたい、というポスターのコピーにちょっと期待したもんで。

小説『螺鈿の髪留め』たくさん読んでもらえて嬉しいです。ありがとうございます✨なのですが、これ全四話で中編一本という構成の作品集『雨障み』の中の一話です。『螺鈿の~』は、その中の三話目です。ですから、これ実は続きがあります。

https://note.com/kise1995/m/m490858e12b5f

漫画原作『トカメネコ』

漫画原作『トカメネコ』



猫が好きだけど猫アレルギーがある研究生、直海さんに、海外を旅していた父親(定年退職したが、土木技術資格試験のブログとかで稼いでいて悠々自適)から贈られた新種の生き物。モフモフの毛じゃなくて皮膚。成長しても成猫より二回り小さい。

母親も帰国した父親と共に日本一周車中泊の旅に出てしまったので、実家にて一人でこのトカメネコを世話することになる直海さん。最初は奇っ怪な生き物が現れて不安だったが、見て

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「現実」→現実(高橋源一郎『さよなら、ニッポン』より、なお引用ではありません)

「現実」→現実(高橋源一郎『さよなら、ニッポン』より、なお引用ではありません)



世界「現実」→バラバラのものをあわく結ぶと思ってた

現実→同じ人同士に組んで、分断する言葉として使う。でも、表面的にはバラバラなものを繋いでいると思っている

心「現実」→わからないもの。そこからは、はた迷惑なものも派生する。不快なものもいっぱい。だから嬉しいものが欲しい

現実→都合の良い行為および、都合とタイミングが良ければ、あらゆる身体表現と言葉。愛や情が基準。憎しみや怒り、嫉妬は該当

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ヘビーリスナーさんへのDM

ヘビーリスナーさんへのDM

初めまして。私はラジオ局で制作補助のアルバイトをしている学生です。夜の生放送で、リスナーさんからのメールやTwitterを印刷してディレクターとパーソナリティーに渡すことと、リクエストしていただいた音源を用意することが私の仕事です。

たくさんメールをくださり、いつもありがとうございます。そして、あまりリクエストにお答えできず、申し訳ありませんでした。あなたのリクエストは、リクエストしてくださった

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走る方が上手い鳥

走る方が上手い鳥

 今朝は雪明かりが眩しくて、リビングダイニングのカーテンが透けていた。金曜日は一限目からなので、千幸は早く起きた。起き抜けに階段下の段ボール箱にあった林檎を二つ食べた。艶のある大ぶりの真っ赤な林檎である。果皮を覆う、油っぽいろうで指先が滑り、うっかり落としそうになる。熟れが進んだ、安っぽくて甘い匂いがする。噛むと、軽い音を立てて果肉がしゅわりとしぼむ。優しい甘さにうっとりとし、柔らかい酸っぱさには

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数日、研究図書を要約のために読みながらノートを取り、レジュメを作ろうとキーボード叩いて、息抜きにスマホを持ちながらYouTubeの公式チャンネルで『ブラックジャック』を見ていたら、ついに病院で腱鞘炎なりかけと言われた。

こぼれ話

こぼれ話

1.初日か最終日か曖昧だ。だが、パリでだったのは確かだ。最終日はほとんどバス移動だったし、ふらふら歩いているときに見つけたから、初日のことでいいと思う。

大学の一棟か病院、もしかしたら美術館だったかもしれない、そんな建物の手前の庭に星の王子様の像が立っていた。門が閉まっていて中には入れず、柵越しに見えた。サン=テ・グジュペリの絵と同じようにカラーリングされていた出で立ちが足を止めた。

だが、後

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横になりたい今すぐに

横になりたい今すぐに

12月31日 月曜日

共同ドミトリーのリビングが閉じた。ソファーで目を閉じて休めた数分前が惜しい。部屋から持ってきた財布、ノートとペン、スマホ、カフタイプイヤフォンでさえかさばる。

しばらく、なんとなくテレビのニュースを見たり、わらわらと入って来た子供連れの一行を眺めたりしていた。しかしついに、YouTubeでアニメやお笑いを流し始めてしまった。本は、今読むのに合わないものしか持って来なかった

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