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コトバでシニカルドライブ

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頭の中でたまーに構成する言葉とコトバ。 その組み合わせは、案外おもしろいとボクは思う。誰に向けるでもなく、自分の中にあるスクラップをつなげてリユース。エッセイや小さな物語を綴りま…
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#言葉

[ちょっとした物語]向こうから鐘の音が聞こえる

[ちょっとした物語]向こうから鐘の音が聞こえる

 埃っぽい書類の束を1枚1枚眺めていた。すると水色の封筒を見つけた。初夏の心地の良い午後だった。封筒から便箋を取り出すと、記憶はフラッシュバックする。

「こんなきれいな海見たの、はじめてだよ。ね、なんていうか、キラキラしてる」

 そう言ったのは本当にきれいな海だったからだ。初めて訪れた瀬戸内の海は、凪いでいて、光が無数に反射していた。そんな海を見たのは、生まれて初めてだった。

「こんな海、普

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[ちょっとした物語] トルソーの誘いと春の風

[ちょっとした物語] トルソーの誘いと春の風

ある春の日の午後だった。
部活がはやくに終わり、僕は着替えて教室を出た。
あたたかな風が廊下を吹き抜ける。その誘いに足は運ばれる。

さらさらとなびくカーテンは、人の気配を薄くしていく。風にさらわれたカーテンの裏側に現れた人影。
僕はドキッとする。
でも微塵も動かない、その影は半身をこちらに向けて佇んでいる。

風に乗った葉の香り。近づくにつれて、乾きがなびいて、髪の毛を揺らす。手をその肩に置くと

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[ちょっとした物語] 記憶をくすぐる檸檬の香り

[ちょっとした物語] 記憶をくすぐる檸檬の香り

ちょっと声をかけた、秋の午後。
君は照れ臭そうにボクの誘いに応えてくれた。その時の表情、その時の鼓動は、どことなく今でも心をくすぐる。

新高円寺の駅から青梅街道を渡る歩道橋。東には環七を望み、西の方には夕日が沈む。僕たちはいつもこの歩道橋の上に立つ。
薄暮の青梅街道は、いつもより車の数が少なかった。

「あ、月だ」
あちらに見える月の影に隠れた空の色。
こんな会話はどこか変だった。まもなく迎える

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[ちょっとした物語] 霜の降りる朝と

[ちょっとした物語] 霜の降りる朝と

 吹き荒ぶ風の音に目が覚める。

 布団の触りと留まったほのかな温かさが体を動かしてくれない。しかし微かに聞こえるお湯の沸く音。まもなく生活の針が動き出す頃だ。
 窓から見える空の色は、澄んでいて、冬の日のそれを一身に表していた。

 ふと目を閉じてみると、季節の環が駆け巡る。春の、夏の、秋の、それぞれの時は都合よく目の前に現れては消えてゆく。
 一瞬の光は、常に重なり合って、また季節は折り重なる

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[ちょっとした物語]スライド

[ちょっとした物語]スライド

 電車の座席が好き。

 硬くもなく、やわらすぎず、体にフィットする感じが、好きなのだ。
 でも、がらんとした車内はあまり好きではない。立っている人は少ないが、座席はある程度埋まっている方が、安心する。

 ほら、今も目の前に並ぶ人たちが、各々本を読んだり、スマホを眺めたりしている。
 ゆらりゆられ、電車の振動は世界を運ぶ。そして時も運ぶわけだ。なんてことのない日常だけれど、この走るスピードのざわ

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[ちょっとした物語]バターの香り

[ちょっとした物語]バターの香り

 まだ昼前だというのに、腹が減ってきた。そんな時にキッチンを見回すと、たぶんあの人の残したパンケーキミックスを見つけた。
 ああ、なんとも甘美な誘惑だろう。すぐさま、冷蔵庫の扉を開く。この黒い冷蔵庫の正反対にあるような牛乳を見つける。まだ半分はあるだろう。その揺れる体積を腕に感じながら取り出して、卵をひとつもう片方の手に取り、キッチンへ戻る。
 ボウルにすぐさま、少しきしむような膨らみのある袋から

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[ちょっとした物語]夜はこうして過ぎてゆく

[ちょっとした物語]夜はこうして過ぎてゆく

 深夜1時。
 さて寝ようかという時間は、その意思とは裏腹に布団に入ることをなにかが拒否をする。
 ムダにスマホを眺めたり、SNSを開いて意味もなくタイムラインをのぞいてしまう。
 ほら、ひとスクロールすると、誰かがこの夜に向かって叫んでいる。僕は、その声をじっくり読んで、いいねを押す。何がいいんだか。そんなことを思いながら、この世界に残された唯一の意思表示を残す。

 誰のせいでもない。
 そん

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[ちょっとした物語]深夜4時。夜と朝の狭間で。

[ちょっとした物語]深夜4時。夜と朝の狭間で。

「いらっしゃいませ」

 このあいさつは、これまでいろいろな人に褒められた。唯一褒められたことと言ってもいい。こんな街の片隅の、大手チェーンでもない、しがないコンビニの店員に誰がなにを褒めてくれよう。そんな中で、褒められるということ自体が稀有で、誇らしいことではないか。そういつも自分に言い聞かせている。
 耳にイヤホンをはめていようが、なんの反応もしなかろうが、面倒な目で見てこようが、この建物の入

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[ちょっとした物語]行く当てのない言葉

[ちょっとした物語]行く当てのない言葉

「元気ですか?」

 何を思ったのか、僕はスマホのアドレス帳から、あの人にメッセージを送った。
 いつだって追いかけるだけの人生だ。
 僕が織りなす言葉なんて、あらゆる武装に他ならない。それが小さなほころびに食いこむことを願って。

 テーブルに置いたスマホを頬杖ついて眺める。グラスに注いだ冷たいコーヒーは、氷の音とともに揺らめいている。
 返事が来ることなんてたぶんないだろうと踏んでいた。でもや

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[ちょっとした物語]明け方にめざめる君について

[ちょっとした物語]明け方にめざめる君について

パッと目が開いた。
とてもすばやく、境目のないくらいに。
自分が寝ていたことすら意識していないくらい自然に、目の前に情景が広がった。

「あ」

一瞬、間が開いた。

今何時だ?

時計に目をやると、午前4時を指していた。
テレビは煌々と、誰も見ていないとは知らずに昨晩起きた事件についてごていねいに知らせている。
天井のあかりは点いたまま。

そうだ、昨晩のテレビを見ながら寝てしまったのだ。
これ

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[ちょっとした物語] 軒先の雨宿り

[ちょっとした物語] 軒先の雨宿り

 今日はいやな雨の降り方をする。
 強く降ったり、弱く降ったり。なんだか動きづらい。蒸し暑く、もう服を着ていることすら鬱陶しくなる。

 駅を出ると、雲の切れ目から太陽が顔を覗かせていた。これは幸運だ。今のうちにと濡れた路面を駆ける。
 しかし、ふと思った。
「何をそんなに急ぐ必要があるのだろう」
 僕らは時に、いつもどおりのことができないと少し焦ってしまう。今もそうだ。雨が少しの間止みそうだから

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