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短編小説

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記事一覧

カラフル

色のない モノクロの世界で

色をつけてくれたから

空の色 深い森の緑
海の蒼さ

春の ひらひら舞う桜の薄紅色
夏の海のグランブルー

秋の 染まる紅葉色
冬の しんしんと降る白銀の雪景色

見えない風の色さえ
見えそうで

夕暮れ時の
オレンジの世界

世界に 色が広がる

だめだ 泣きそうだ

あなたが 好きだ

あなたのとなりを
歩きたい

あなたと手を繋ぎたい

あなたと 見つめ合いた

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写真

「わ、珍しいね。写真嫌いのあなたが一緒に撮ろうなんて」「まあね、僕は自分のポテンシャルの高さにやっと気づいたから写真に収めときたいんだ」相変わらずふざけてとか言いながら君は笑う。ホントは君が好きだから一緒に写りたいだけなんだ。もうすぐ僕はいなくなるから。せめて君の記憶に残りたい。

春一番

強い風が吹いたのです。それはもう春一番と言う奴なのでしょうか?髪型が乱れるから嫌とか、スカートが捲れそうになるからとか。砂埃が舞うから嫌だとか色々ありますが私は少しうきうき気分です。今日から四年生。私は新たにレベルアップしたのです。やたらと明るいミナとはクラスが違って別れてしまいましたが、それもまた人生。出会いと別れの繰り返しと言う奴とママが言ってました。おっと。おっかぁと今日から呼ぶのでした。だ

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後悔

「靴は履き替えたから僕は君の元へ行こうと思う」「はぁ?なに言ってんの?あの子が姿消してからおかしいよ」同じクラスの咲がいなくなってから楓は異世界転移の靴を見つけた。それを見つけたと言う楓はそれきり姿を消した。馬鹿だ。私は自分の気持ちに素直になれず後悔するなら伝えれば良かった。

大切なもの

分かってるんだよね。君に気づいた時から好きになったのは僕なのに。君は、僕の親友を好きになってしまった。あの日、苛められてる親友を助けなければ君は僕の友達を好きにならなかったのか。

二人が、付き合い出してから僕は二人と距離を置いた。

我慢してまで一緒にいられるほど僕は強くないから。

「…最近、元気ないけどどしたー?」

「……なんでもないよ」

「なんでもないことないじゃん!私たちのこと避けて

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夏の幻

君は夏の幻。事故で失ってから毎年夏に現れる。触れないけど君に会えたから僕はそれでいいと思ってた。悲しみに打ちひしがれていたけれど僕は毎年楽しみになっていた。君さえいれば他はなにもいらない。あの日までは。

「君の前に現れるのは、もう今年で最後にするよ」

「なんでそんなこと言うんだ?」
「君が先へ進めないから。君は私にめろめろ過ぎるのは駄目!」

からっと笑うと君は僕の背中を押した。僕は慌てて振り

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「神絵師になるんだ」と結婚する前妻に息巻いていたけど、「紙絵師にしかなれなかったよ」と妻と結婚してから皮肉ったら妻は愛おしそうに「あなたの絵は好きだよ」と言ったからま、いっか。妻が抱きしめるのは僕が毎年プレゼントした絵で、妻の中で僕の世界が広がってるのかな?なんてね。

別れ

君と別れを切り出した。胸が引き裂かれそうな気持ちだけど君が、夢を追って留学する君が迷わないように。きっと日本に残るって言うから。
「好きな人が出来たんだ」君を傷つけてごめんね。それを聞いた時の君の表情は忘れられない。数年後、君が帰ってきてからも喧嘩すると、そのことを話題に出される。

コーヒーの薫り

コーヒーの薫り

「はい、どうぞ」「いつもありがと」君の淹れてくれたコーヒーはちょっぴり苦めで好きで。コーヒーの香りに包まれながら君と過ごす時間が好き……だったんだけどなぁ。別れてから君の淹れてくれたコーヒー以外は、何か違う。違和感があってさ。君が他の女性に淹れてるの想像するだけで嫉妬しちゃうよ。

雨の日も風の日も

出掛ける度飼い猫のミケが背中に飛び乗ってのスキンシップが日課だった。それは毎日雨の日も風の日も。大人になって僕が社会人になっても。一人暮らしをするようになって寂しく感じる。ミケはもういなくて。最後を悟ったのか、ある日姿を消した。だからいつも出掛ける時、背中の重みを懐かしく思う。

コーヒー

「はい、どうぞ」「いつもありがと」君の淹れてくれたコーヒーはちょっぴり苦めで好きで。コーヒーの香りに包まれながら君と過ごす時間が好き……だったんだけどなぁ。別れてから君の淹れてくれたコーヒー以外は、何か違う。違和感があってさ。君が他の女性に淹れてるの想像するだけで嫉妬しちゃうよ。

ぴょんぴょん

図書室で脚立を使い高いとこにある本を取ると少し切なくなる。届かないのを君がいつも取ってくれたから。密かな恋心を伝えられないまま転校したけど。時は流れて市の図書館でぴょんぴょん跳ねてると誰かが取ってくれた。「相変わらずちっさいな」からかうようなその懐かしい声に泣きそうだよ。

幸せなこと

いつもの朝。キッチンでのリズム音も大分安定して、新聞読む僕の前に置かれる食パンと珈琲のよい薫り。ちゃんと焼けた食パンに思わずくすりと笑うと君はキョトンとして尋ねる。

「何?急に?」
「ううん、嬉しいんだよ」
「おおっと!?私が妻で嬉しいと?」
ふざけるようにおどける君に僕は苦笑する。
「違うよ。でも照れくさいから」
「なんだよ、吐けよー」
「あ、危ないから!」
妻は後ろに回り僕の肩を掴んでがくが

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代筆屋

「代筆屋として働いてきて沢山の人に手紙を書いて届けたよ」過去を振り返りながら語れば君は静かに話を聞いてくれる。「でも、誰も僕に手紙を書いてくれる人はいなかったな」苦笑混じりに呟けば君はどこか緊張したように手紙を差し出した。「あなたへの手紙を書いてきた!」その手の震えは本気だった。