田中潤

いよいよ社会人。アイドルと小説と映画が好き。演劇とマステも好き。コレクト癖。小説とか脚…

田中潤

いよいよ社会人。アイドルと小説と映画が好き。演劇とマステも好き。コレクト癖。小説とか脚本とかエッセイとか、色々書きます。

マガジン

  • 短編小説

    5分かからず読めるような短編小説のまとめです☺︎

  • 連載小説『授業をサボる、図書館には君がいる』

    連載中の小説まとめ。高校生の恋愛ものです。

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固定された記事

二束のサンプル

 背中の真ん中まで届く髪を切るのに抵抗はなかった。長く伸ばしていたことにたいした意味はなかったし、短くした後でピンクに染まるわたしが楽しみだった。ボブカットにす…

田中潤
2年前
90

酒のツマミになる話。

【お題】 酒のツマミになる話 麻雀 メタボリック  ふんわり赤くなった顔で、とびきり美人の親友は唐突に言い出した。 「麻雀卓をね、買ったのよ」 「はぁ」 「今度からうちの…

田中潤
1年前
2

夢で逢えたら

 これで最後だ、と言い聞かせるのはもう飽きた。いつの間にか四年も経っていた。  どんなに飽きても止めてはいけない。何度も言い聞かせて、何事にも動じないわたしでい…

田中潤
2年前
6

秘密

 別れる男に花の名前を教えなさい、と川端康成は言ったけれど、あいつがそんなの覚えていられるわけがない。教えた方は毎年思い出すのに、あいつだけが忘れるなんて不公平…

田中潤
2年前
4

ひとと話すこと、の話。

最近読書モチベがすごい高い田中です。 ここ3年くらいの、趣味読書なのに実質年に数冊しか読んでなくない? 状態を巻き返すかのように、プチ図書館と化した我が家の本棚か…

田中潤
2年前
8

矛盾した一個体を愛してほしい

 たくさんある苦手なものをひとつひとつ検討して、脳内でふたつの箱に分ける。これは比較的許せるタイプの苦手。こっちは絶対に無理なほうの苦手。たまにぜんぶひっくり返…

田中潤
2年前
3

展示会『JAM』に寄せて

 今日から 元映画館 というところで行われている、展示会『JAM』に参加しています。全然宣伝してなかったのですけど。  わたしは小説を売るなどしているのですが、そちら…

田中潤
2年前
3

嬉しい、という気持ちの話。

先日、とあるドラマの放送が発表された。 推しが主演に抜擢されていた。 放送が終わるまでは生きていける、と寿命が延びるのを実感する。 わたしはどこまでも推しに救われ…

田中潤
2年前
1

落とし物箱

 落とし物箱に入ったそれは、一番星のような輝きとときめきをたたえていた。  すぐ物を落として無くしてしまう生徒たちのために、若くて美人な担任教師は「落とし物箱」…

田中潤
2年前
3

面接

 面接官の眼鏡が光った気がした。照明に反射しているのだろうけれど、画面越しじゃ現実味がなくて、漫画の一コマみたいだった。  私の瞳もハート形に光っているのだろう…

田中潤
2年前
7

入学パーティーにて

 耳を疑った。 「優子って涼太のこと好きらしいよ」  カクテルパーティー効果、なんてこの現象に付けられた名前を知らなかった優子でも、その言葉の意味だけははっきりと…

田中潤
2年前
2

今度はコーヒー中毒の話。

どうも、田中です。 3月から始めた連載をなんとか終え、ちょっと安心してます。でも反対に、連載は続きを考えればよかったから、新しい物語を紡ぐのって難しいなぁ、と初心…

田中潤
2年前
8

11 始まりは黒い月 (完)

10 自由について より続く  一刻も早く彼に会うべきだったけれど、いざ図書館に行ってみていなかったら、と思うと、怖くてたまらなかった。すぐに怖がってしまうわたし…

田中潤
2年前
2

ナンパ男と桃色

 バイト帰り、渋谷駅で声をかけてきた男は「岡部圭一」と名乗った。怪しい者ではありません、二十一歳の社会人です。僕もこれから用事があって急いでるんですけど、ものす…

田中潤
2年前
4

10 自由について

9 三日月が見せた幻 より続く  変なところで律儀な性格だと思う。  この前の金曜日、オノセンの授業はちゃんと出席しようと決めてしまったせいで、彼が頭から離れない…

田中潤
2年前
5

㊗1周年㊗

どうも田中です。こうやって書き始めるのはちょっと久々かもしれない。 エッセイを書いてもわざわざ名乗るとか、最近してないような気がします。 まぁ名前なんて肩書きみた…

田中潤
2年前
5
二束のサンプル

二束のサンプル

 背中の真ん中まで届く髪を切るのに抵抗はなかった。長く伸ばしていたことにたいした意味はなかったし、短くした後でピンクに染まるわたしが楽しみだった。ボブカットにするのは高校生の春ぶりで、童顔によく似合うのはわかっていたけれど、明るい髪色は初めてで少し緊張する。それでもピンクが似合うという根拠のない自信だけは湧き出ていた。色の落ちた変な髪色をしたわたしは、まだ抜け殻にくるまったまま、無限の可能性を秘め

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酒のツマミになる話。

酒のツマミになる話。

【お題】
酒のツマミになる話
麻雀
メタボリック

 ふんわり赤くなった顔で、とびきり美人の親友は唐突に言い出した。
「麻雀卓をね、買ったのよ」
「はぁ」
「今度からうちの机、麻雀卓だからね」
「は?」
 彼女の部屋は六畳一間、よりすこし狭いくらい。ソファベッドがあって、勉強机代わりのローテーブルがあって、テレビがあって、クローゼットがあって、それくらい。クローゼットには色んな洋服が詰まっていて、

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夢で逢えたら

夢で逢えたら

 これで最後だ、と言い聞かせるのはもう飽きた。いつの間にか四年も経っていた。
 どんなに飽きても止めてはいけない。何度も言い聞かせて、何事にも動じないわたしでいなければならない。今日を逃したら、この決心が揺らいだら、二度と離れられない。
 これで最後だ。今日が最後だ。家を出るときにも、電車の中でも、駅のトイレで鏡を見たときも、言い聞かせた。もう一度、今日が、最後。
 肝心なことを何ひとつ言ってくれ

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秘密

秘密

 別れる男に花の名前を教えなさい、と川端康成は言ったけれど、あいつがそんなの覚えていられるわけがない。教えた方は毎年思い出すのに、あいつだけが忘れるなんて不公平だ。だからわたしは自らの手で、ささやかな呪いを生み出すことにきめた。
 男女が親しくなる方法十選、といううさんくさいサイトで「秘密の共有」という文字をみつけたとき、これだ、と思った。小さなことでもいいから、あいつの秘密を奪ってやろう。そして

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ひとと話すこと、の話。

ひとと話すこと、の話。

最近読書モチベがすごい高い田中です。
ここ3年くらいの、趣味読書なのに実質年に数冊しか読んでなくない? 状態を巻き返すかのように、プチ図書館と化した我が家の本棚から本を抜き取っては読んでいます。
でもさ、本読んでるときって、全然小説書けないんだよね。わたしだけ?

さ、完全な言い訳を挟み、今日はエッセイを書きます~~
ひとと話すこと、の話。

***

先日、参加していた展示会『JAM』が終わりま

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矛盾した一個体を愛してほしい

矛盾した一個体を愛してほしい

 たくさんある苦手なものをひとつひとつ検討して、脳内でふたつの箱に分ける。これは比較的許せるタイプの苦手。こっちは絶対に無理なほうの苦手。たまにぜんぶひっくり返して検討し直して、わたしの価値観をアップデートしていく。
 今のところ、許せるほうには、例えばロングスカートの裾をたくし上げないで階段を昇り降りするひととかが入っている。見てて心配になるけど、わたしには直接関係ないことだから、許せるほう。で

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展示会『JAM』に寄せて

展示会『JAM』に寄せて

 今日から 元映画館 というところで行われている、展示会『JAM』に参加しています。全然宣伝してなかったのですけど。
 わたしは小説を売るなどしているのですが、そちらに寄せて。売っているものの一部を公開してみます。
 ちなみにこの展示会は、写真の展示や弾き語りパフォーマンス、ショートフィルムなど、色々な表現の媒体が交差する場所です。予期せぬ出逢いがあり、交わりがあり、どこか遠くへ行けそうな気持ちに

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嬉しい、という気持ちの話。

嬉しい、という気持ちの話。

先日、とあるドラマの放送が発表された。
推しが主演に抜擢されていた。
放送が終わるまでは生きていける、と寿命が延びるのを実感する。
わたしはどこまでも推しに救われて生きている。少なくともこの5年くらいは。

毎朝起きると、真っ先に枕元の携帯でTwitterを開く。
じぶん用にカスタムされたトレンドを見れば、寝ている間に発表された推しや周りのアイドルに関する大体の情報が載っているからだ。
例えば新C

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落とし物箱

落とし物箱

 落とし物箱に入ったそれは、一番星のような輝きとときめきをたたえていた。

 すぐ物を落として無くしてしまう生徒たちのために、若くて美人な担任教師は「落とし物箱」を設置した。綺麗なお菓子の空き箱を再利用したものだった。その教師は、若くて美人というだけで、生徒からとても慕われていた。案の定保護者からは舐められていて、可哀想でもあった。
 みんな、落ちているものを見つけたら、拾ってここに入れるようにし

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面接

面接

 面接官の眼鏡が光った気がした。照明に反射しているのだろうけれど、画面越しじゃ現実味がなくて、漫画の一コマみたいだった。
 私の瞳もハート形に光っているのだろうか、とパソコンに取り付けた小さなライトを盗み見る。雑誌の付録だったハート形のライトがこんなところで役に立つとは、人生何があるかわからない。
 そもそも面接をオンラインでやっていることも、私がスーツを着て髪を黒く染めていることも、真面目に働く

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入学パーティーにて

入学パーティーにて

 耳を疑った。
「優子って涼太のこと好きらしいよ」
 カクテルパーティー効果、なんてこの現象に付けられた名前を知らなかった優子でも、その言葉の意味だけははっきりとわかっていた。誰が発した言葉なのかを探ろうと辺りを見回したが、人混みに紛れて発信源はどこかへ行ってしまった。各テーブルで談笑する男女の姿がやけに目につく。誰もが優子を見ているようで、誰も優子を見てはいなかった。不似合いなスーツの群れは、好

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今度はコーヒー中毒の話。

今度はコーヒー中毒の話。

どうも、田中です。
3月から始めた連載をなんとか終え、ちょっと安心してます。でも反対に、連載は続きを考えればよかったから、新しい物語を紡ぐのって難しいなぁ、と初心者みたいなことを思っているところ。
ていうかレポートやろうね、と大学生然としたわたしは言っています。
さてさて。

***

↑これは去年の今頃書いた記事。
結論は全然違うとこに行ってしまったけれど、勉強しながらカフェオレめちゃくちゃ飲ん

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11 始まりは黒い月 (完)

11 始まりは黒い月 (完)

10 自由について より続く

 一刻も早く彼に会うべきだったけれど、いざ図書館に行ってみていなかったら、と思うと、怖くてたまらなかった。すぐに怖がってしまうわたしのことも、彼がどうにかしてくれたらいいのにと思う。
 何も知らないままの彼のことを、心の支えのように思っているわたしがいる。あまりに不均衡で不釣り合いで不健全な関係だった。そもそも双方向的な関係なんて始まってもいないのに、勝手に期待し続

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ナンパ男と桃色

 バイト帰り、渋谷駅で声をかけてきた男は「岡部圭一」と名乗った。怪しい者ではありません、二十一歳の社会人です。僕もこれから用事があって急いでるんですけど、ものすごくタイプだったので声かけました。マスクで目元しかみえないせいか、第一印象はアイドルの名前に似ているな、だった。
 たまにナンパされることがある。夜の街でかけられる声は明らかに客引きか性的なものだから無視を決め込むのに、真昼間だと道を聞かれ

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10 自由について

10 自由について

9 三日月が見せた幻 より続く

 変なところで律儀な性格だと思う。
 この前の金曜日、オノセンの授業はちゃんと出席しようと決めてしまったせいで、彼が頭から離れないのに、授業をまたサボることはできなかった。サボって図書館に行きさえすれば、また会えるかもしれないのに。
 唯一の救いは、オノセンが観せてくれた映画が、三日月目の彼を天秤にかけても勝てるくらいのめり込めるものだったことだ。少なくとも二時間

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㊗1周年㊗

㊗1周年㊗

どうも田中です。こうやって書き始めるのはちょっと久々かもしれない。
エッセイを書いてもわざわざ名乗るとか、最近してないような気がします。
まぁ名前なんて肩書きみたいなもの、なんでもいいんですけど。

はじめましての方も、何度か読んでくれてる方も、等しく感謝カンゲキなんとやら。
就活をしていたせいか、結論を最初に書くことに慣れてしまったので、先に述べます。
note始めて1年経ちました! おめでとう

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