秋川 美鈴

2024年、植物を通じて心身機能の回復と居心地の良い緑の環境を作り出せる仕事をしていき…

秋川 美鈴

2024年、植物を通じて心身機能の回復と居心地の良い緑の環境を作り出せる仕事をしていきたい。日本庭園、昭和建築巡りが好き。ミルクティーとチロリアンテープとフェアアイルセーターが大好き。

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不思議な時間

しん、とした庭 ただひたすらに スケッチブックに 鉛筆を走らせていた 何も考えず ただ一心に見つめる 目の前の 草木と苔と石だけを 作庭家が そこにここに植えた 一本々…

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こんにゃくらいよるに🐈

よくきたな まあはいれよ ちらかってるけど どこかすわって ああ うん そのへんのもの どけてくれていいから え? げんきだよ そう? やせたかなあ? ま もうとしだし…

秋川 美鈴
12日前
1

わたしの庭

心がざわざわして 自分がみえにくいときは 庭へいこう わたしの庭へ なにもせず ただ見る なにも考えず 揺れる穂をみる 心が静かになるまで 風の通り道で ひとり たたず…

秋川 美鈴
13日前
5

ふきのとう

今日 ふきのとう 笑った 何もなかった 冬の土と 遅霜がおりた 赤い葉っぱと 誰も気に止めない 駐車場の隅で 君が笑ってた びっくりしたんだ 突然だったから 嬉…

31

遠雷

低くたなびく煙 屋根にかかる 雨に濡れた 家々の窓 コーヒーが香る かごの毛糸玉 床の上に落ちた 三毛猫たちが  かけまわる テッセンがうつむく 家路のかたわら 少し冷…

43

元気でね

9月ももうすぐ終わる そろそろ渡っていくのかな 最後に残った家族が今日も空を飛ぶ ここで生まれた君たちは その翼で長く空を渡るのだね その目で何を見るのだろう 華奢で…

30

すみれいろのめをしたねこ

テムズに向かってゆるやかに傾斜する裏庭 キッチンドアから出ていく君のしっぽ パンパスグラスの根元から しっぽ と 穂 どちらもふさふさ立ち上がって 左右に揺れている …

60

君といた世界

あのね 抱き上げた 君の後ろ頭を見ること 年老いてよく眠るようになった 君の寝顔を見ること ゆっくり歩く君と いつもの道を行くこと それが幸せだったんだ けれど 春の日…

49

君のこと

長くなった昼寝 目が覚めると 足が こわばって つっぱるんだ マッサージをするけど よろめきながら 水を飲む 私が部屋から出ると 敷居のところで 目をパッチリ開いて 戻…

22

君へ

長い昼寝 薄目を開けた君の 頭をそっと撫ぜる 君はため息をつく それは 私も好きって返事 壁のマリメッコ 赤い花が笑っている 少し喉が渇いたね お水を入れ替えよう 魚…

16

やあ!やあ!

青天 新芽でけぶる 里の山の向こうから 腰に赤のサッシュベルト 胸に控えめのストライプ ブーメランのような翼で 空を切る君たちが現れた ようそろ! 第1陣到着に 上階の…

24

眠れぬ夜に

N駅の向こう側 暗闇の芯に走りこむ車両 車内で高校の制服を着た私が 20代の母と言葉を交わす夢 途切れて 足元が重いのは 君だったか 小さな頭をそっと撫ぜる こち…

26

わたしの羽

カツラの木 留まる小鳥 小鳥はわたし 今全ての葉を落とし ありのままたたずむ木の 芽生えの薄緑の清々しさ 若葉から仰ぎ見る静かな空 たくさんの命が安らぐ夏の茂り 美し…

22

夙夜

門をくぐると つづら折りの道 水面を囲む 苔むす岩に 静かな心が添います 風に舞う たくさんの手紙が にじみながら 秋の空に 溶けていきました 松の葉の 艶やかさ 椿の葉…

17

大暑

はたらき蟻 永い影曳いて 午後3時の溜息 枯れた クマゼミ 身を置いて 大枝の影 今朝も開いた いのちの穴よ

17

道案内

明日になれば 野ばらのつぼみ うつむく 森の入り口 緑の小道 蝶の道案内 マッキントッシュの君は 野いちごを摘む 君のおしゃべり 聞いて 森のさえずりと 一緒にいたね …

14
不思議な時間

不思議な時間

しん、とした庭
ただひたすらに
スケッチブックに
鉛筆を走らせていた
何も考えず
ただ一心に見つめる
目の前の
草木と苔と石だけを

作庭家が
そこにここに植えた
一本々が
置いた石の
一つ々が
にわかに
私の中で意味を持ちだす

会話とは
こんな風にも
交わすことができるのか
時代を
時間を
場を
越えて
かつての造り手たちの
考えや心根に
ふと触れることがあるのか

不思議の時間
永遠につなが

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こんにゃくらいよるに🐈

こんにゃくらいよるに🐈

よくきたな
まあはいれよ
ちらかってるけど
どこかすわって
ああ うん そのへんのもの
どけてくれていいから

え? げんきだよ
そう? やせたかなあ?
ま もうとしだしな
さいきん まえほど たべないな

うん そいつらぜんぶ うちのねこ
なんびき? さあな はっぴきか?
また えんがわのしたで うまれたからな
かあちゃんは うちのにわにきてたのらだよ

はい こーひー
たんぽぽのこーひーだ

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わたしの庭

わたしの庭

心がざわざわして
自分がみえにくいときは
庭へいこう
わたしの庭へ

なにもせず
ただ見る
なにも考えず
揺れる穂をみる

心が静かになるまで
風の通り道で
ひとり
たたずむ

夕日がわたしを照らして
髪がかがやく
音の無い世界にいたみたい
ミツバチの羽音がもどってきた

さて、お茶を飲みましょうか

ふきのとう

ふきのとう

今日

ふきのとう

笑った

何もなかった

冬の土と

遅霜がおりた

赤い葉っぱと

誰も気に止めない

駐車場の隅で

君が笑ってた

びっくりしたんだ

突然だったから

嬉しかったんだ

君が

あんまり

かわいいから

遠雷

遠雷

低くたなびく煙
屋根にかかる
雨に濡れた
家々の窓
コーヒーが香る

かごの毛糸玉
床の上に落ちた
三毛猫たちが 
かけまわる

テッセンがうつむく
家路のかたわら
少し冷えた空気
遠くに轟きを聴いた

少女たちが
傘を掲げ
驟雨を分けて
駆けてくる

水玉光る稲の浅緑
白鷺が休む
黄土色の細道が
囲む

軒先の
子どもたちの
まるい額
寄り合い
淡い影は
水たまりに
映り込む

幼い日
心にひそ

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元気でね

元気でね

9月ももうすぐ終わる
そろそろ渡っていくのかな
最後に残った家族が今日も空を飛ぶ

ここで生まれた君たちは
その翼で長く空を渡るのだね
その目で何を見るのだろう
華奢で小さな美しい鳥たちよ

春に逝った私の犬に
今私は心の中で話しかける
絶対の不在が
私の心も空っぽにした春
君たちが山々を越えて
私の勤める山あいの建物に
到着した
そして
秋が近づく今
その犬と共に在る感覚を
私は持つことができる

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すみれいろのめをしたねこ

すみれいろのめをしたねこ

テムズに向かってゆるやかに傾斜する裏庭
キッチンドアから出ていく君のしっぽ
パンパスグラスの根元から
しっぽ と 穂
どちらもふさふさ立ち上がって
左右に揺れている
日向の君のあくびは
幸先のいい1日の約束

「駅からの橋の上で
カモメがホバリングしながら
片足で頭をかいていたの
私の頭のすぐ上で!
本当だよ!」
私がキッチンテーブルから
身を乗り出して
一日の報告をしている間
君は
上からぱらぱ

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君といた世界

君といた世界

あのね
抱き上げた
君の後ろ頭を見ること
年老いてよく眠るようになった
君の寝顔を見ること
ゆっくり歩く君と
いつもの道を行くこと
それが幸せだったんだ

けれど
春の日に
君は
長い長い散歩に
出かけた
もう会えないんだね

あの日から
心を
真綿にくるんで
しばらく
ぼんやり
しているんだ

君から受け取った愛
愛おしい
耳に馴染んだ
君がたてる色々な音
忘れない鼻先から尻尾までの手触り

もっとみる
君のこと

君のこと

長くなった昼寝
目が覚めると
足が
こわばって
つっぱるんだ

マッサージをするけど
よろめきながら
水を飲む

私が部屋から出ると
敷居のところで
目をパッチリ開いて
戻るのを待つね

階段にじっとたたずむ姿は
私が小さいころ見た
うちのおばあちゃんとそっくりだとも
後追いをする幼児のようだとも
思うよ

君の若いころ
家族の言い争いが起こると
かけつけた
みんなの間をうろうろして
「諍いはやめ

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君へ

君へ

長い昼寝
薄目を開けた君の
頭をそっと撫ぜる

君はため息をつく
それは
私も好きって返事

壁のマリメッコ
赤い花が笑っている

少し喉が渇いたね
お水を入れ替えよう
魚のビスケットと
ミルクも少し
おやつにしよう

17歳の君よ
もう少し
一緒にいれるかな

やあ!やあ!

やあ!やあ!

青天
新芽でけぶる
里の山の向こうから
腰に赤のサッシュベルト
胸に控えめのストライプ
ブーメランのような翼で
空を切る君たちが現れた
ようそろ!

第1陣到着に
上階の窓から歓迎の挨拶
飛べない私の目の前で
小さな君の羽は風をとらえ
少し上下しながら
一瞬で虫をついばんだ
すごいなあ!

まだ新しいのから
年季の入ったのまで
建物のあちこちに造られている
君たちの素敵なつぼ型のマイホーム
高らか

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眠れぬ夜に

眠れぬ夜に

N駅の向こう側

暗闇の芯に走りこむ車両

車内で高校の制服を着た私が

20代の母と言葉を交わす夢

途切れて

足元が重いのは

君だったか

小さな頭をそっと撫ぜる

こちらとあちらの世界の間に

庭園があるとしてごらん

水を集める石盤に

集まる雫が広がって

浮ぶスイレンの花びらに

風が触れる

星の賑わいが

静まり返る

そんな夜

私の不安は

音楽のよう

大きく

小さく

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わたしの羽

わたしの羽

カツラの木
留まる小鳥
小鳥はわたし

今全ての葉を落とし
ありのままたたずむ木の
芽生えの薄緑の清々しさ
若葉から仰ぎ見る静かな空
たくさんの命が安らぐ夏の茂り
美しい黄金色のハートが彩る歩道

私は過ぎた季節を記したい
凍る空を見上げ
高くさえずりたい

海をのぞむ丘で
山あいの小さな町で
忙しい街のどこか片隅で
大切に心を抱きしめて
今日も生きているんだ
家族よ
友人よ
名前を知らない人たち

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夙夜

夙夜

門をくぐると
つづら折りの道
水面を囲む
苔むす岩に
静かな心が添います

風に舞う
たくさんの手紙が
にじみながら
秋の空に
溶けていきました

松の葉の
艶やかさ
椿の葉の
照る光にも
心が揺れるのです

菊の花
香る水に
そっと
気持ちを
浮べたら

星が見守る
橋の上で
あなたの船に
いつまでもいつまでも
手を振りましょう

大暑

大暑

はたらき蟻
永い影曳いて
午後3時の溜息

枯れた
クマゼミ
身を置いて

大枝の影
今朝も開いた
いのちの穴よ

道案内

道案内

明日になれば
野ばらのつぼみ
うつむく

森の入り口
緑の小道
蝶の道案内

マッキントッシュの君は
野いちごを摘む
君のおしゃべり
聞いて
森のさえずりと
一緒にいたね

明日になれば
選んだ道を歩く
君を送る

白絹のリボン
アイボリーの靴
勿忘草のハンカチ

ガーネットのステンドガラスから
君は未来を覗き見る
誓いの言葉を残して
コンフェティは雪のよう
地面に散らばる

明日になれば
この部

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