眠れぬ夜に
N駅の向こう側
暗闇の芯に走りこむ車両
車内で高校の制服を着た私が
20代の母と言葉を交わす夢
途切れて
足元が重いのは
君だったか
小さな頭をそっと撫ぜる
こちらとあちらの世界の間に
庭園があるとしてごらん
水を集める石盤に
集まる雫が広がって
浮ぶスイレンの花びらに
風が触れる
星の賑わいが
静まり返る
そんな夜
私の不安は
音楽のよう
大きく
小さく
ふくらみ
しぼむ
ポンプのスイッチは
掌にあるのさ
ここにいない
人に会いたくなる
こんな夜
今ここにいる確かさを
あたたかで賢い
茶色の目をした君から
感じている
どうか遠く離れた母の寝息も
穏やかなままに