見出し画像

色彩の飛行のあと

夜のウズベキスタンの光景を見下ろす。ミニチュアのような山村の灯りの火の色が転々と見える。世界の回転にあわせて世界時計の地球色を廻しているうち、気づけばモスクワの夕暮れの茜のなか。

確かな着陸の手応えは滑走路の灰色、階段を降りて機械仕掛けのゲートをくぐるとき、立ち止まれといわれてボディチェック、気をとり直して搭乗したモスクワからエジプトへ。

見えてくる空からの砂漠色、思わず起こった空中の急ブレーキに、座席ががたつく。パイロットは、けれども操縦の腕の確かな軍人上がり、きっとその目の色はレイバンのブラウン。

クフ王の墓を旋回してパキスタンを経由したら、思いがけずリッチなホテルにトランジット。水道の味以外、王族にでもさせられた心地で極彩色の一晩をすごし、翌朝の離陸はアラブ経由。

離陸はゼリー状の大気の青のなかへ。フィリピンの深緑、その上空、機内の空気を呼吸しつつ世界時計の地球色をふたたび廻しながら気づけば、密閉された機内の空気はすでに日本上空の青をたゆたっていた。

機内の空気をでると空気が変わって空港内の色彩を新鮮なまなざしが飛び交う。いままで住んでいた世界を、色眼鏡を外した目で見るように、人々は色々な目の色で色々と眺めやっている。

土産になった気持ちでロビーを歩いた。自宅になじむまで、新たな世界の賞味期限の色を味わう。その色はいつもすぐに色あせる。新鮮なる色彩を求めてふたたび飛ぶまでは。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?