弌矢

不調法者ですが、主にシュルレアリスム的マジックリアリズム的短い文を載せています(違うの…

弌矢

不調法者ですが、主にシュルレアリスム的マジックリアリズム的短い文を載せています(違うのも載せます)。たまに貼られたURLは画像リンクサイトのimgurです🌷作品にドラッグなど出てきても、無論それは架空ごとです。言わせないで。よろしくお願いいたします。東京

最近の記事

ナイトホークス

 街角のダイナーに入って、モーニングを注文する。楕円形のカウンターは、右側にスーツを着た男が一人、左側は男女のカップルで、めかし込む女と話す男の方はやはりスーツ姿だった。  店内は硝子張りで、信号機の灯りに照らされる夜道が覗える。人どおりはまだかなりあった。人どおりの上に傘がひらきはじめた。雨脚は強くなってくるようだった。  カウンターごしに給仕がモーニングを渡してきた。トーストと玉子と分厚いベーコン、昼夜逆転した味覚で食しつつ、手帖をひらく。手帖に目を落とし、けれども読

    • 「酒が好きなのかだって? 違うな、飲んで二日酔いになるのさ。二日酔いになってだな、それから栄養のあるものを飲み食いしてな、おれはそこから復活していく過程が大好きなのだ」

      • 世界のディテールより

        降りしきる雨、静かにぬらしていくアスファルトの水たまりに波紋、反影する街灯の色と陰影。交差点の自動販売機、そのディスプレイのなか、仄白いあかりが幽霊のようにゆらめいて、その姿を雨粒に反射させる。 キャッツアイがまたたく十字路をライトが這って、濡れた空き缶やプラスティックを路地の闇に浮かべる。缶のラベルは九〇年代と覚しき謎めいたデザイン。物質化した過去、無意識のスペースにまで集合的ノスタルジア。 終電後の刻限も脈拍と走り廻る車たち、ひかりあふるる都心のジャンクションより網の

        • 離合の昼夜

           彼女は、夜の暗がりのなか、眠る女を見下ろしている。横たわる女の安らかな呼吸により、掛け布団が上下しているのが覗える。彼女は眠る女のゼリーのような潤みあるくちびるに触れてみた。その感触は、やはりゼリーだった。  水底に寝そべる彼女は、くちびるを小魚に触られて我にかえった。翻る小魚たちが銀色にちらついて、上には輝く太陽の白銀がゆらめいている。シュノーケリング姿の女がこちらを覗き込んでいた。何時なのだろうか。たぶん正午近くだ。彼女はそうかんがえる。   眠る女を見下ろす彼女は

        ナイトホークス

        • 「酒が好きなのかだって? 違うな、飲んで二日酔いになるのさ。二日酔いになってだな、それから栄養のあるものを飲み食いしてな、おれはそこから復活していく過程が大好きなのだ」

        • 世界のディテールより

        • 離合の昼夜

          移動の情景

          国道一四号にさしかかり、工業ベルト地帯が続くようになると、いつもラジオの電波が混信して、知らない言語が幻のように聴こえてくる。 時折見える海辺をながめながらそれを聴いていると、情景が浮かんでくる。それはゲームの情景で、草原や神殿などを歩き廻るRPGのようだ。 情景は、生まれるまえからあったレトロゲームに違いなく、プレイした覚えはまったくないが、けれども懐かしくて、そのなかの場所にたたずめば憩うことさえできる。 情景の場所に憩いつつ、飼い慣らした幻獣たちにおやつを与えたり

          移動の情景

          都道沿いのモンタージュ

          歩いていた彼女はともるコンビニエンスストアのまえで立ち止まり、スマートフォンを見、深夜二時五分まえを示しているのを確かめて、店内に入った。 都道七号線を走るタクシーがあかるいガソリンスタンドのある角を折れて信号でとまるとコンビニエンスストアが見え、彼はそこでお願いしますといった。 酒のコーナーで立ち止まった彼女は、それから窓際に置かれた雑誌を眺め、けれども手にとろうとはせず、外を覗うと、ちょうど信号が青に変わり、タクシーが駐車場に入ってきたのを見て店を出た。 二人ははす

          都道沿いのモンタージュ

          夏街

          ビニールバッグを抱えた少年少女、中央線の座席の上、ぶらつかせている細い足の長さもちょうど、ちょこんと上目遣い、並べた肩も細かった 向かいに立つ男が親と見える、彼は釣り道具を持っている、向かっているのは海と伺える、目的地は近場の千葉、いや、新幹線もありえる だんだん海が恋しくなってくる、自慢じゃないが泳ぎは達者、それだから夏はうれしいはずなのだ、しかしいまバッグのなかには謎の荷物 ばっくれたらにっちもさっちもいかなくなるだろう、なにが入っているのかどうにも察知できないでい

          都市部というアンビエント

          電信柱の上、鉛色の雲が流れる、街灯に浮かぶ公園でコンクリートに生きる物の怪と団地の少年少女が戯れる 塗装の匂い立ちこめる高架下より、うち捨てられたビニール傘、昔ジュース、橋の上より、川に反射する信号の明滅の赤と青 深夜の学校のプールにいくつもの波紋、降っている、黙り込んだ校舎のなか、にじむ警報ランプの赤、向かいのテナントビルも無人 しかし一階には灯るコンビニエンスアのしるし、通過する銀色にあかるい快速、駅まえの踏切のルフラン アスファルトに描かれた図形、飛び跳ねるレイ

          都市部というアンビエント

          春のノンブル

          お日様にあかるい桜の樹の下、キックボードで川沿いを走る。「零! 爛漫だな」 私は零に呼びかけた。彼は口笛を吹く横顔を見せた。軀に浴びる花びらは流れて落ちていく。川から何かが跳ねるような音がして、その滞空時間に、 「ア 𓄿」── それから私はヒエログリフの夢を見ていたのだ。それはいつから持続していたのか記憶にないが、やがて𓄿は零に変容していった。見上げると、見下ろされている 花の舞う宙のなか、救急車を呼ぶかと零がいった。首をふって、ただでは死なない、起きない、と私はアス

          春のノンブル

          谷間の百合の白め

          緑に乗って黄に乗り換えて、さらにオレンジに運ばれ、街に出れば颯爽と歩くトレンチコートの男女たち、ずいぶんと立派に見える、なんてビジネスライクなんだ その歩きかたに見とれているうち、ビジネスする彼彼女たちから遅れをとって、自分のビジネスも無駄な時間を喰い、急いで百合の白を探すべくポート迄 百合の白、彼女のその純白は、いとけない世間知ラズの少女のようでいて、その実不義理の大人である、おれの制裁に値するあばずれである コンクリート製ジャングル、捜索するおれは速度二〇kmのトラ

          谷間の百合の白め

          taxi driver

          乗客たちに殴られたあと、一人ぼっちのおれは口の血をぬぐい、孤独なアパルトマンに帰りついた ベッド横のテーブルに死んだママンにもらった聖書。去年ママンも死んだ。一昨年かも知れない。わかんない。去年だったんだろ 弾を確認する。この弾丸で聖書を撃ち抜けるだろうか。カーネーションが枯れている。オイルかけて燃やし捨てる。選挙区へ向かう 選挙にいったことがない、それは政治的でないからで、政治的になりたければ箱に紙っぺら一枚でこと足りると耳にし、唖然としたが 口が痛え、腫れていや

          taxi driver

          地中海の舞踏/Mediterranean Sundance

           夜の地中海沿岸にセットされたステージで、舞踏はとっくにはじまっている。  踊り子たちのその腰つきに没入していると、バックパッカーの青年は飲みたくなってきた、酒ではない、コカコーラを。それも瓶のコカコーラに限る。ステージ横に小屋みたいなキオスクがあって、そこを覗いた。  コカコーラはあったが、缶だった。しかもプルタブをあけるとぬるい泡があふれて大量にこぼれた。あふれて減ったぶん、缶にくぼみをつくってみた彼は、舞踏の続きにふたたび没入した。  踊り子について地元のみなが知

          地中海の舞踏/Mediterranean Sundance

          凄く聴こえる音楽

           日曜日の夜中に、すごい現代音楽を見つけて驚いた。何度もリピートして聴き、この興奮はただちに友人にもつたえてやらねばならないとLINE通話。  出ない。  もう寝ているのだろう。だがいち早くつたえなくてはならない。discordで通話をかけてみるとしゃがれた声の友人が出た。  こんな時間にどうしたのかといわれて、曲の大発見について興奮して話した。そんなことでこんな曜日のこんな時間に? とシーツの擦れる音がした。うめき声も漏れてきた。  辛そうだね。  ぼくがそういった。  だ

          凄く聴こえる音楽

          架空の下 Cmaj7

          夏の空を背景に、目に痛いほどの純白のシーツがはためいている、清涼飲料水を口にして、それをめくり上を眺めやる フロスティブルーのなかにかがやく積乱雲、あの青の色に開眼して観覧だ、うん。テラスも陽に照らされてかがやいている 実はいまこちらで女友達がぐっすり眠っている。じっとしてこちらに耳を傾けているようにも見える。巻き毛で赤毛、安らかなまぶた、あ、かすかにいままたたいた 牙ない狼でも歯並びはいい、威張らない犬歯もて書き言葉の犬、よしない言葉が呪文の音符、うとうと眠る わぎみ

          架空の下 Cmaj7

          その話はハルになってから

          小春日和になったらね、お弁当と水筒を持って、空港から飛び立つ飛行機を見に、羽田の河口まで行こうじゃないか。 約束はそれだったが、二〇の終わりに彼は最期を迎えた、なかんずくおろかな出会いだった、仲よく煙草ならKOOLなど吸っていた、丘だった 死んだ彼はクスリ博士、心配ごとは他人任せ、今日を生きられなかったあの日々、狂人の字引きには載っている意味 いま私は果汁を用意する、ガジェットで作るモクテル、そういや確かエンゲルスとエンゲル係数、あほな彼ごっちゃにしてエンドレスをエンド

          その話はハルになってから

          夜の走行

          夜に浮遊していた魔法の絨毯が、信号の目の色をうかがいながらその下を抜ける。 都道七号線に入りひた走る、眩いばかり、聖なるひかりの都内。 前方に数珠繋がりのテールランプ。ふと気づけば停滞に陥っていた。 車道がゆっくり脈打つ。脈打って脈打つと脈が早くなってふたたび走り出す。 「次、左折です」とくりかえすナビによりマップ上にループが生じ、ひかりの波を渦と巻く。 明滅するひかりの波、さざ波あら波、波の満ち干きのなかに生まれる奇跡を求めて溺れあう。 円周率のまぼろしを見なが

          夜の走行