弌矢

不調法者ですが、主にシュルレアリスム的マジックリアリズム的な文を載せています(違うのも…

弌矢

不調法者ですが、主にシュルレアリスム的マジックリアリズム的な文を載せています(違うのも載せます)。 たまに貼られるURLは共有サイトのimgur(イミジャー)です。タップやクリックで映像が閲覧できます🌷 weirdcore dreamcore traumacore 東京

最近の記事

原体験、公衆電話

スモッグに瞬く星月のもと、住宅地の角の三角公園、その入口にともる電話ボックス、週末のあかり 右手にはテレフォンカード、左手のなかの錠剤デパス、その従姉妹はサイレース、憂いの係り 通話の際には飲み干している、急激な害はno problem、だとしても電話掛けて人に依存、その果てには願掛ける神に依存、か 受話器を片手に立ち尽くす、具合の加減に酔い痴れる、打ち捨てられたようなボックスのなかのこと、暮れ果てた空にはなお星月が いまだ作用しているドラッグの酔い、まるで周波数あう

    • 移動のジャンクション

      首都高速都心環状線、こじあける炭酸水の栓、ジャンクションを進めば目的は果たせると、ちゃんとした推進は目的を果たすのだと、安心に乾杯するボトル、湾曲に気泡が昇る、星の数、時は昼 携帯のことさえ忘れる不可思議な恋人たち、倦怠期なんてとうそぶく二人の道、渋滞知らずの対話の流れ、停滞しているカーブの外れ、操作をするそなえつけの円盤、交差しては錯綜する電波 抑揚のないラジオの乱れた交通情報、北米のナイアガラを思わせるホワイトノイズ、Vaporwave流す車内は進むのもルーズ、ペアル

      • 信じない

        右翼を信じない。 左翼を信じない。 資本主義を信じない。 共産主義を信じない。 本居宣長を信じない。 小林秀雄を信じない。 吉本隆明を信じない。 柄谷行人を信じない。 過去を尊敬せずに未来をリスペクトしようとする人を信じない。 文学を信じない。 ジミ・ヘンドリックスを信じない。 ジョン・レノンを信じない。 THA BLUE HERBを信じない。 ケンドリック・ラマーを信じない。 マイルス・デイビスを信じない。 地震を信じない。 ドラッグを信じない。 神を信じない。 信じない

        • 旅行先の一ページ

           アフリカの夕日があった。途中、真横に太陽を見つめていた。視界の両側で、アカシアの樹が夕刻の空を掴んでいる。  日本人の旅行家に、コネで紹介されたビッグマムの家庭に混ぜてもらうことになった次第だった。エアシックのぼくは、ビッグマムにあてがわれた部屋のベッドに倒れ込んだ。  朝、目覚めると、放り出していたバックパックが、きちんと縦に置かれていた。ベッドを出てダイニングに入ると、ビッグマムがチャイをいれてくれた。アフリカ文化的飲み物。ジンジャー、ガラムマサラの味に心地よくなる

        原体験、公衆電話

          アランフェス通り

           自分の棲み家である都営住宅を、老人は眺めやっていた。蛍光灯の色が縦横に規則正しく発光している。あと一階上の最上階だったら夜景が見えるのに、と電話をとり出した。 「というわけで、では、いまから出る」  ここから三〇分でアランフェス通りに出ることができる。老人は電話をバッグにしまい、乗り込んだ。  電話をズボンのポケットに入れた中年は、走っている国道一四号線からアランフェス通りまで三〇分でつくようにアクセルを加減した。目のまえを光の粒子が拡散して散らばっていく。  老人はア

          アランフェス通り

          まほろばから遠く離れて

          この異郷の塔からは、まほろばもながめられた。不確かだった時間に鐘が響き、あたりの空気をひやした。春らしさも夏らしさも感じとれないこの異郷は秋か冬だろうが、季節と呼ぶにはあまりにも空気がよそよそしい。 冷たいアウラに包まれながら見下ろし、目線を落として見る懐中時計がしめすのは午前のような午後、根拠はないが区切りの時間の気がして、マグリットは階段を降りた。 広場に出ると、いきなりギリシャ彫刻が規則正しく一〇メートルごとに突っ立って、その列にアポリネールのシルエットが絡んでいた

          まほろばから遠く離れて

          ともあれジャズとライム

          宵のマントが窓辺にたれている、やさしい指先までもが響きわたる"おろかな私"の演奏、繊細きわまるその音の流れにみずみずしいライムが乗る。彼女は聴きながら傷ついている気持ちをもてあそんで味わいたがる。もっと味わうためにサンライズをでも飲もうかしら お酒はハタチでやめたんだった 男たちより大胆だった ギターは金曜日に捨てたのだった 燃やす人をフィルムで見たから可燃ゴミ、ではなかった ジャズとヒップホップはあうんだねと語らいあう恋人たちに微笑む顔、音以外のライムを知らずとも聴くの

          ともあれジャズとライム

          宵のエル・ドラード

          気が触れるほどに翻訳書籍読めば そこはジョイスのきめた場所のちから 日が沈んだあとでようやくドアを出れば 外はキアロ・スクーロの効いた路上 ポケットにはまだまだ書籍が入る ソネットにはつれづれ書き込みがある 虚構のかなたにほんものを置いてくる 今日このごろ軀がほんとうに老いてく 人気のない公園のほとりの静けさの闇 よく見ると見えてくる二人、カップルの病 読めないほど暗いとよろよろ歩いて 汚れている黒い水によりそいながめる 肌身で触感をL、紙、噛みしめる 味方を直感

          宵のエル・ドラード

          A.Sに

          風のたよりもこと切れたいま見る君の面影 記憶をさぐるも懐かしさまみれの思いで 気持ちを物に託すのが得意だった 意地悪さえ呑気で助かっていた ボーダフォンという物を覚えているか そうだったととむらう君、おぼろげにありや 言葉たちが輪舞する室内 言霊への信仰は別にない 時間によりそってつづくと説く師匠ベルクソン 自分のよりどころでくつろぐしかないのだもの さむらいの色も現在はユニフォームの青 その言葉耳にするたび共感性羞恥で真っ赤 意味をそろえては月日を過ごすのが常套

          境界で

          交通網をくぐりぬけて降りていった 扉のまえで立ち止まる。思考する、 アンダーグラウンドとアングラの差異、 向こう側はおおよそ想像できている

          二重になりそう

          暗がりにゆれる心地 物騒にゆれる ざわめきをきく目 人生がふたつにぶれてしまいそう いまにも

          二重になりそう

          ナイトホークス

           街角のダイナーに入って、モーニングを注文する。楕円形のカウンターは、右側にスーツを着た男が一人、左側は男女のカップルで、めかし込む女と話す男の方はやはりスーツ姿だった。  店内は硝子張りで、信号機の灯りに照らされる夜道が覗える。人どおりはまだかなりあった。人々の上に傘がひらきはじめた。雨脚は強くなっていくようだった。  カウンターごしに給仕がモーニングを渡してきた。トーストと玉子と分厚いベーコン、昼夜逆転した味覚で食しつつ、手帖をひらく。手帖に目を落とし、けれども読みは

          ナイトホークス

          世界のディテールより

          降りしきる雨、静かにぬらしていくアスファルトの水たまりに波紋、反影する街灯の色と陰影。交差点の自動販売機、そのディスプレイのなか、仄白いあかりが幽霊のようにゆらめいて、その姿を雨粒に反射させる。 キャッツアイがまたたく十字路をライトが這って、濡れた空き缶やプラスティックを路地の闇に浮かべる。缶のラベルは九〇年代と覚しき謎めいたデザイン。物質化した過去、無意識のスペースにまで集合的ノスタルジア。 終電後の刻限も脈拍と走り廻る車たち、ひかりあふるる都心のジャンクションより網の

          世界のディテールより

          離合の昼夜

           彼女は、夜の暗がりのなか、眠る女を見下ろしている。横たわる女の安らかな呼吸により、掛け布団が上下しているのが覗える。彼女は眠る女のゼリーのような潤みあるくちびるに触れてみた。その感触は、やはりゼリーだった。  水底に寝そべる彼女は、くちびるを小魚に触られて我にかえった。翻る小魚たちが銀色にちらついて、上には輝く太陽の白銀がゆらめいている。シュノーケリング姿の女がこちらを覗き込んでいた。何時なのだろうか。たぶん正午近くだ。彼女はそうかんがえる。   眠る女を見下ろす彼女は

          離合の昼夜

          移動の情景

          国道一四号にさしかかり、工業ベルト地帯が続くようになると、いつもラジオの電波が混信して、知らない言語が幻のように聴こえてくる。 時折見える海辺をながめながらそれを聴いていると、情景が浮かんでくる。それはゲームの情景で、草原や神殿などを歩き廻るRPGのようだ。 情景は、生まれるまえからあったレトロゲームに違いなく、プレイした覚えはまったくないが、けれども懐かしくて、そのなかの場所にたたずめば憩うことさえできる。 情景の場所に憩いつつ、飼い慣らした幻獣たちにおやつを与えたり

          移動の情景

          都道沿いのモンタージュ

          歩いていた彼女はともるコンビニエンスストアのまえで立ち止まり、スマートフォンを見、深夜二時五分まえを示しているのを確かめて、店内に入った。 都道七号線を走るタクシーがあかるいガソリンスタンドのある角を折れて信号でとまるとコンビニエンスストアが見え、彼はそこでお願いしますといった。 酒のコーナーで立ち止まった彼女は、それから窓際に置かれた雑誌を眺め、けれども手にとろうとはせず、外を覗うと、ちょうど信号が青に変わり、タクシーが駐車場に入ってきたのを見て店を出た。 二人ははす

          都道沿いのモンタージュ