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短編

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僕の太陽は街灯に照らされる

僕の太陽は街灯に照らされる

どれにしますか?

ラーメンも食べたいし炒飯も食べたい

食べれるんですか?

んーとりあえず炒飯頼んで足りなかったら頼む

絶対その方が良いですよ

綺麗とも汚いとも言えない4人席に
2人で対面に座り、
必死に手元のメニュー表だけを眺めている。

こうして2人でご飯に行くようになって
もう一年も経つが未だにこの子は敬語。
2人の中に違和感は無いけれど
周りから見ると少々奇妙らしい。

目の前に見

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曖昧

曖昧

付き合うでもなく、お互いに好きだと口にすることもかったけれど好意を寄せ合っていたのは確かだった。

専門に入学してすぐの、先輩達からの挨拶でわたしはその人に目を向けた。初めの印象は格好いいな、だった。単純だけれど、お互いそんな感じの始まりだったのだと思う。

授業も終わり何となくひとり窓の外を眺めていたら、その先輩に声をかけられた。

「なに一人で黄昏てるの?」

内心、心が踊った。

他者承認に

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団地の屋上で”独り“を“一人”にする

団地の屋上で”独り“を“一人”にする

「夏嫌い」と何かにつけてぼやいているくせして、
カンカン照りの太陽を見ると、
その光を全身で吸収するため散歩へ出かけるし、
窓から見えた空が見たことない色に染まっている時は団地を上る

僕が住む棟は4階建てだが隣の棟は7階建て。
その屋上は周りに高い建物がなく、
西は緑地と遊園地の観覧車、北には遠く建ち並ぶビル、
すぐ下に往来する西武線など、
街全体を見下ろすことができる
ただの屋上だが人があまり

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下書きが下書きであるために

 高校生活で継続して毎日やっていること言えばTwitterぐらいだ。Twitterとは数百文字の限られた空白の中で他人を含めた自分の個人的な感情を持ち寄ってそれぞれの魂を昇華させようという試みをしている尊いアプリである。僕はほぼ毎日、noteで書いている文章を掌サイズにしたみたいなツイートをちまちましている。一ヶ月後に見るとちょっと面白かったり、そうでなかったり、たりたり。ところで、noteにもあ

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そうだ私は今を生きているんだ

そうだ私は今を生きているんだ

彼は顔が整った人だった。
先輩に連れられて行ったお酒を飲めるイベントで出会ったその人は、目鼻立ちのクッキリとした大人の男性だった。
大学には、よくある男女グループの波に押し流されて、お膳立てされて最近付き合い始めた同い年の男の子がいた。彼はあくまで男の子だった。

付き合っちゃったんだ。

はい。遅いですよ。

ん?なにが?

だから〜

弄ばれてるんだな。そう感じていて遠回しに気持ちを伝えてみた

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それを聴いた夜、貴方はそこに居ました。

それを聴いた夜、貴方はそこに居ました。

知らない誰かとナイトクルージングを聞いた夜がありました。

と落ち着いた声で話すラジオDJのラジオを私は元恋人と聴いた夜がありました。

その夜同じ空間に居たわけではないけれどお互いの表情が分かるくらいには時間を共にした相手でした。
その人は思い出になってくれない人で、
今も会うたびに心を締め付けてくる人です。
その夜はあってもいないのに心を締め付けられました。

ナイトクルージングが流れる間は

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クスクス笑う貴方を私ならもっと上手に愛せるのに

クスクス笑う貴方を私ならもっと上手に愛せるのに

私の好きな人は友人の彼氏だった。

その人の背は電車の吊り革程度で
襟付きの服を着ない首元はやけに色気があった。

友人から彼の話を聞く。
あんなところが嫌だ、もっとこうして欲しい。
…私だったらもっと上手に愛せるのに。

愚痴という名の惚気を永遠と聞かされた
駅前のファミレスのドリンクバーは何種類もあったが
いつも決まって飲むのは好きでもないアイスコーヒー。
貴方が好きだと友人が教えてくれたから

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あれは普通の恋

あれは普通の恋

私はなんとなく生きてきた

普通で普遍で凡人

彼の鼻筋を人差し指でなぞったその朝までは

春が来て、空が梅雨に覆われて夏を迎えるように

夏を舞台に歌われるあの歌のサビが繰り返されるように

わたしにはいつだって恋人がいた

人を変え、場所を変え、歳を変えてもなお恋人はいた

なんでもいいよ

と言う私

返答は人それぞれだった
怒る人 同調する人 提案する人

結局何でも良い私は体を許して体を

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僕らは嘘をつけるだけ

僕らは嘘をつけるだけ

初めてついた嘘はなんだったろうか

私は最初についた嘘をはっきりと覚えている

好きなゲーム機がほしくって

「普通に当たり前だよ」

「みんな持ってるんだよ」

「俺だけが仲間外れだ」

そんな小さな嘘だった

私の父は剣道をずっとやっていて
作法や筋を通すことに関しては人一倍厳しかった
小さな嘘を重ねる私に父は

「みんなの定義は」

「ゲームだけで仲間外れになる仲間なのか」

「普通は何をも

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愛のひとかたまり

愛のひとかたまり

今日もいつもの様に部屋で冷房をかけて
薄っぺらいタオルケットに包まりながら
携帯を右手に勝手に流れ出す(友達)の物語を
一つ余す事なく見ていた。

あいつは旅行に行っていて
あいつは友達と飲んでいる
あの子は彼氏ができていて
あの人は仕事で出張してる

あれこの人は誰だったか思い出せない
こんな事も気にしてられないくらいに
目の前の画面はすぐ次へと移り変わる

愛は溶けて
恋は薄まる
言葉遊びの様

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君の形をしているもの

君の形をしているもの

吸ってるタバコなんだっけ?

キャメル

2日も一緒に寝たから寂しいかもって思った

ため息が出るほどにあざといその子

俺はアメリカに行くと決めてから

はや一年が経とうとしている。

またおいで

すぐいきたい

あと半年もすればアメリカに行く俺は

2年の時間を共にした彼女に別れを告げ、

3年勤めた会社を退社し、

珈琲屋とレンタルビデオショップで働いている

このすぐ行きたいなどと軽々し

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4両編成の満員電車では君に到底敵わないから

4両編成の満員電車では君に到底敵わないから

きっといつまでも

敵わないんだと思う

実は臆病者で
泣き虫で見栄っ張りな私

それを世間が
どこまで理解してくれるか知らないけれど

物凄く嫌悪感のある機会音

涼しくも暑くもない気温

自分たちの湿気で湿る合皮のクッション

小さな口と

何も言わせまいと包み込む俺の腕

読む程で持ってきたお互いのオススメの漫画

いつも1人で来るところに

連れて行きたいと思ったのを

心の裏側を覗かれた

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すこーしたいようをのぞいてみた

すこーしたいようをのぞいてみた

あれ?もう10月?

昨日は寒すぎて震えながら

夜中に何度か目を覚ました

そういえば彼の誕生日も10月だったような

起きて〜と聞き馴染みのある

太く優しく低く優しい声が

結構乱暴に耳を撫でる

はいはいと体を起こし

んーーっと体を伸ばす

朝が来てしまったのか

でも夜は見れない彼の顔が見れるから

差し引いても朝は嫌いじゃない

冷めるよー

今度は優しく嬉しい言葉が耳を引っ張った

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