見出し画像

僕の太陽は街灯に照らされる

どれにしますか?

ラーメンも食べたいし炒飯も食べたい

食べれるんですか?

んーとりあえず炒飯頼んで足りなかったら頼む

絶対その方が良いですよ


綺麗とも汚いとも言えない4人席に
2人で対面に座り、
必死に手元のメニュー表だけを眺めている。

こうして2人でご飯に行くようになって
もう一年も経つが未だにこの子は敬語。
2人の中に違和感は無いけれど
周りから見ると少々奇妙らしい。

目の前に見える
青チェックのシャツ型アウター。
とてつもなく好きな色だ。
俺がよく行く店で
2人で買い物をしに行って買った。
そう言えばあの日以来着ているところを
初めて目の当たりにした。

少し伸び始めた髪の毛は
元々は幼く綺麗な顔立ちに
店内の明るくも暗くも無い照明を器用に使って
妙な色気を差し込んでいる。
私に髭が生えていなければ
この瞬間は威厳すら失ってしまいそうだった。

うわ、

店内をウェイトレスの代わりに
ロボットが運ぶ。
その機会音にその子は驚いたような声を出す。
このロボットが人間の食事を運ぶ光景に
私は世も末のように感じてしまう。

これさ、人件費削減の為なんだろうけど
初期費用とか維持費とか諸々考えたら
1人雇った方が安いし雰囲気も良く無い?

愚痴がいとも簡単に口から溢れていった。
堰き止めるきっかけすら無い
純粋な不満と不安であった。
その子は苦笑いしながらも沸々と始まる
愚痴を黙って聞いてくれた。

案の定、炒飯を食べて、
追加でラーメンを食べる胃の隙間は
あるはずもなく。
2人でクリスマスの話をし始める。

2人で何か買う?

ずっと言ってるけど植物が欲しいです
あと2人で絵を描きたい

いいね
じゃあ今度キャンパス的なの買ってくるよ

あと植物は時間作るから
そしたら2人で買いにいこう

満足げな表情を確認してから
会計を済ませて駐車場に停めてある車の脇で
タバコに火をつける。
車の助手席に先に乗り込んだその子を
最近新しくした携帯で写真撮る。
恥ずかしがりながらも降りてきてアウターを
取り替える。理由もなく。

なんて事のない日々
ただのバーミヤンでの食事

それでも街灯に照らされた目の前の太陽のような
その子を見た時思わず見惚れてしまったんだ。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?