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あれは普通の恋

私はなんとなく生きてきた

普通で普遍で凡人

彼の鼻筋を人差し指でなぞったその朝までは



春が来て、空が梅雨に覆われて夏を迎えるように

夏を舞台に歌われるあの歌のサビが繰り返されるように

わたしにはいつだって恋人がいた

人を変え、場所を変え、歳を変えてもなお恋人はいた

なんでもいいよ

と言う私

返答は人それぞれだった
怒る人 同調する人 提案する人

結局何でも良い私は体を許して体を重ねる回数分、一緒にいる時間も増えていった

こうして出来上がった彼ら恋人は
恋人らしい事に憧れて恋人の私を求めてくる

私は今隣にいるのが一昨年までの彼か先月までの彼かなんてどっちでもいいしなんでもいいんだ


この時代ぽいネットナンパ的なもので出会った彼は
恋人の私を求めていなかった

女性であることは求められていた気がするが

いつも彼の好きな事を彼の好きなタイミングで

こんな言い方をしたら人聞き悪いし非難されるだろう

なんでもいいタイプと分かっていて、私がいつも楽しくて喜ぶ事を選択していたと言えば良いのだろうか

体を重ねても 何ヶ月か音信不通でも 
彼の気分で私の携帯が少しずつ埋まっていく

彼からの言葉
彼の行きたいお店
彼の予定
彼との通話記録
彼の笑顔と
彼の撮った私の笑顔

ふと思い出す彼の横顔は
2回目か3回目に寝たホテルの小さな窓から入る光で
照らされている。
鼻筋をなぞる時、彼の鼻の1番低いところから高いところに行くまでに、いびきか寝言か体動く

昨日の夜まではタメ口だったのに呼び捨てだったのに

今朝は他人のようだ

これからまたしばらく連絡はないのも容易に予想できる


地元の友達が2人で飲みに誘ってきた

なんでもいいし、なんでもいいなら
しばらく遊ぶのはやめてみようかな

彼から朝に呼び捨てで呼ばれるまで

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