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愛のひとかたまり

今日もいつもの様に部屋で冷房をかけて
薄っぺらいタオルケットに包まりながら
携帯を右手に勝手に流れ出す(友達)の物語を
一つ余す事なく見ていた。

あいつは旅行に行っていて
あいつは友達と飲んでいる
あの子は彼氏ができていて
あの人は仕事で出張してる

あれこの人は誰だったか思い出せない
こんな事も気にしてられないくらいに
目の前の画面はすぐ次へと移り変わる

愛は溶けて
恋は薄まる
言葉遊びの様だけれど
愛は確かに溶けていく
目に見えないようになっても
確かにそこに存在していて
恋は時間によって薄まって
濃くなくなる
真水の様に味気無い面が見えてきて
確かなものが見えなくなる

こんな夜はあの旅を思い出す

ふらっと起き上がった私は20代も何年か経験した
ただの男。
旅に出たい気分だったのでやらなきゃいけない事をほっぽり出し気づいたら電車に揺られていた。
目的地も決めてない旅のお供は
フィルムカメラと
お金が少々
通信制限を使い切った携帯
この3つ。

1番役に立たなそうなその携帯が音を出した。
どうやら後輩の女の子が近くにいるらしい。
少し会えると言うものだから
フィルムカメラを言い訳に
その子のいる駅で降りてしまった。
旅はものの10分で折り返し地点を迎えた。

ヘンテコな帽子をかぶったその子は
私に恋人がいるのを知っていた。
一度結婚すると豪語していた彼女と別れてから
彼女ができても堂々と公表しない様にしているが、
もちろん隠している訳でもなく聞かれたすんなりと認める様にはしている。
一度ご飯に誘ったが、俺にその気が無くても
彼女に悪いと断られた子だった。
まぁいいかとその日はその子と飲みに繰り出した。

最近1番と順番をつけるのは柄では無いが
それほどに仲の良い女友達と結婚相手の条件について話した。無論お酒を飲みながら。
金 容姿 価値観 優しさ 、、、
ハイボールを10杯は飲んでいたのでそれ以外は
あまり思い出せないが結局出た答えは

何も無い日にお酒を飲みたいと思えるか

だった。
私を知っていれば知っているほどこの答えは納得できるであろうしお酒を飲まない方にとっては毛程も興味はないだろう。
お酒を飲めるから好きになる訳ではないが、結婚を考える年になってしまってこれだけは譲れないのかもしれない。
現に家族の中でも飲む人飲まない人居るが、飲まない人との距離は少し開けて感じる。

あの夜は本当に何も無かった。
予定も無ければ下心さえもなかった。
それでもあの子とお酒を飲みたいと思った。

愛の一塊の様な夜だった。

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