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東原そら
2021年11月12日 18:09
ポタリ、ぽたりと滴が落ちる。 落ちるたび滴が跳ねる。 それはまるで、子供がはしゃいでいるようだ。 くすっ、はしゃいでいるのは私か。 ドリップされる珈琲を眺めて、私はうきうきしている。 珈琲の雨にうたれたいと、一度彼に話した。 火傷しそうだなと笑った彼と、私は今日、式を挙げる。
2021年8月22日 21:34
パラパラと雨が鳴る。 雨粒達が軽快に窓を叩く。 こんな日は、傘を持たずに外に出たいと私は思う。 自然のシャワーにからだを洗われるけど、水溜まりにも足を落としたくなる。 雨は人間みたいだ。 いないと生きられない。 けれど度が過ぎれば災いもある。 それでも、私は雨の中を歩くのだ。
2021年5月17日 20:17
雨がきらい、という感情がわからなかった。 雨がないと、世界は死ぬ。 雨は、穢れた世界を綺麗にしてくれる気がする。 雨が降ると、私は泣ける。 雨は、涙を隠してくれる。 雨に、私は身体を流してもらう。 雨は、穢れた私を浄化してくれる。 雨しか、血にまみれた私を抱き締めてくれない。
2021年4月29日 20:51
今日は雨だにゃ。 俺は雨だにゃ。 雨の日に哲に会ったにゃ。 哲は優しいにゃ。でも哲は哲が好きじゃないみたいにゃ。 だけど哲が好きな雌もいるにゃ。 雌が来たにゃ。俺は雌に向かって飛ぶにゃ。 哲が追って来て、雌と目が合ったにゃ。「貴方のお名前、教えてください」 哲、勇気出すにゃ。
2021年4月29日 17:42
視線をまた感じる。 彼女は「雨」を見上げていた。 雨は、猫だ。 大雨の日に僕が連れ帰った。 名前に似合わず、お日様が大好きで、ベランダで日向ぼっこを日課にしている。 彼女は雨を見る時、僕と目がよく合う。 その時、僕はいつも背を向ける。 この醜い顔を、彼女には向けられないから。
2021年4月27日 20:00
篠突く雨という形容がぴったりな、激しい雨の日だった。 形が崩れた段ボールの中の仔猫を、雨から守っている人がいた。 お世辞にも、顔は良くない。 彼は猫を連れ帰った。 猫は毎日、彼のアパートのベランダで日向ぼっこをしている。 くすっ。今日はあくびしてる。 彼は、いない、のかな。
2020年11月19日 21:07
傘を叩く音が一分前より大きくなった。 早く帰ろう。 逸る気持ちが地を濡らす音と比例し大きくなる。 ふと仔猫が見えた。 彼か彼女はじっと真っ直ぐ目線を送ってくる。 頼む木陰に雨が漏っている。 吐息を漏らし彼か彼女に歩み寄る。 そっと差し出す傘に一声鳴いた。 ありがとうと言っているのかな?あとがき散歩中にふと見た風景が元です。捨て猫を連れ帰ろうとしていた
2020年11月14日 15:07
熱い瞼に意識が克明に届く。 馴染みの天井は薄暗い。 微かに外から差し込む光は夜には明るく朝には暗い。 まどろむようにはっきりしない乏しさに苛立ち、情報を隔絶している厚い布を開き世界と対面する。 しとしとと空が泣いている。 同情なの? 世界と別れようとしてるわたしに。 あとがき Twitterに初投稿した140文字小説です。 厳しい人生に絶望した女性へ、まだ世界