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140文字小説

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Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
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#雨

珈琲の雨 (140文字小説)

珈琲の雨 (140文字小説)

 ポタリ、ぽたりと滴が落ちる。

 落ちるたび滴が跳ねる。

 それはまるで、子供がはしゃいでいるようだ。

 くすっ、はしゃいでいるのは私か。

 ドリップされる珈琲を眺めて、私はうきうきしている。

 珈琲の雨にうたれたいと、一度彼に話した。

 火傷しそうだなと笑った彼と、私は今日、式を挙げる。

雨を歩く (140文字小説)

雨を歩く (140文字小説)

 パラパラと雨が鳴る。

 雨粒達が軽快に窓を叩く。

 こんな日は、傘を持たずに外に出たいと私は思う。

 自然のシャワーにからだを洗われるけど、水溜まりにも足を落としたくなる。

 雨は人間みたいだ。

 いないと生きられない。

 けれど度が過ぎれば災いもある。

 それでも、私は雨の中を歩くのだ。

殺しの罪は雨が癒す (140文字小説)

殺しの罪は雨が癒す (140文字小説)

 雨がきらい、という感情がわからなかった。

 雨がないと、世界は死ぬ。

 雨は、穢れた世界を綺麗にしてくれる気がする。

 雨が降ると、私は泣ける。

 雨は、涙を隠してくれる。

 雨に、私は身体を流してもらう。

 雨は、穢れた私を浄化してくれる。

 雨しか、血にまみれた私を抱き締めてくれない。

雨と猫と男と女と (下) (140文字小説)

雨と猫と男と女と (下) (140文字小説)

 今日は雨だにゃ。

 俺は雨だにゃ。

 雨の日に哲に会ったにゃ。

 哲は優しいにゃ。でも哲は哲が好きじゃないみたいにゃ。

 だけど哲が好きな雌もいるにゃ。

 雌が来たにゃ。俺は雌に向かって飛ぶにゃ。

 哲が追って来て、雌と目が合ったにゃ。

「貴方のお名前、教えてください」

 哲、勇気出すにゃ。

雨と猫と男と女と (中) (140文字小説)

雨と猫と男と女と (中) (140文字小説)

 視線をまた感じる。

 彼女は「雨」を見上げていた。

 雨は、猫だ。

 大雨の日に僕が連れ帰った。

 名前に似合わず、お日様が大好きで、ベランダで日向ぼっこを日課にしている。

 彼女は雨を見る時、僕と目がよく合う。

 その時、僕はいつも背を向ける。

 この醜い顔を、彼女には向けられないから。

雨と猫と男と女と (上) (140文字小説)

雨と猫と男と女と (上) (140文字小説)

 篠突く雨という形容がぴったりな、激しい雨の日だった。

 形が崩れた段ボールの中の仔猫を、雨から守っている人がいた。

 お世辞にも、顔は良くない。

 彼は猫を連れ帰った。

 猫は毎日、彼のアパートのベランダで日向ぼっこをしている。

 くすっ。今日はあくびしてる。

 彼は、いない、のかな。

傘猫 (Twitter140文字小説)

傘猫 (Twitter140文字小説)

 傘を叩く音が一分前より大きくなった。

 早く帰ろう。

 逸る気持ちが地を濡らす音と比例し大きくなる。
 
 ふと仔猫が見えた。

 彼か彼女はじっと真っ直ぐ目線を送ってくる。

 頼む木陰に雨が漏っている。

 吐息を漏らし彼か彼女に歩み寄る。

 そっと差し出す傘に一声鳴いた。

 ありがとうと言っているのかな?

あとがき

散歩中にふと見た風景が元です。

捨て猫を連れ帰ろうとしていた

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悲雨 (Twitter140文字小説)

悲雨 (Twitter140文字小説)

 熱い瞼に意識が克明に届く。

 馴染みの天井は薄暗い。

 微かに外から差し込む光は夜には明るく朝には暗い。

 まどろむようにはっきりしない乏しさに苛立ち、情報を隔絶している厚い布を開き世界と対面する。

 しとしとと空が泣いている。

 同情なの?

 世界と別れようとしてるわたしに。

 
 あとがき
 Twitterに初投稿した140文字小説です。
 厳しい人生に絶望した女性へ、まだ世界

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