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東原そら
2021年6月5日 20:53
最初はすごく緊張した。 私の腕をつかむ康介さん。 私はゆっくり足を踏み出し、康介さんの反応を見た。 良かった。 戸惑ってはいない。 ママに協力してもらった成果が出た。 おばさまも、家のことを丁寧に教えてくださった。 ここはすごく居心地がよかった。 もう、明日でおしまいなのか。
2021年6月4日 11:00
放課後になると、悠希ちゃんが来る。 彼女は、よく勉強していた。 点字も然りだが、なにより手を引くときの立ち位置と、力加減が絶妙だった。 体を預けられる安心感があった。 母さんは、彼女をとても気にいっている。 明日は一週間の終わりの日。 彼女はきちんとあきらめてくれるだろうか。
2021年6月2日 19:56
訪ねて来た人は、僕が助けた子だった。 驚いたが、五体は満足らしい。 良かった。それだけで僕は満足だ。 なのに、彼女は僕の目になりたいと言う。 負い目に感じなくていい。 君は、君の人生を生きてくれ。 断っても断っても、思いの外、強情だった。 一週間だけ、僕は共にいる決意をした。
2021年6月2日 19:47
ことわられた。 必要ありません、と冷たく言われた。 私は、あの人の目を奪った憎き相手だから。 でも、力になりたい。 だから、それでも毎日通った。 そして、その度断られた。 自己満足でも、諦めない。 とうとう観念したように、一週間だけと条件つきで許しが出た。 私、がんばります!
2021年5月23日 19:59
「好きにしていいから、泊めてよ」膝を抱えているJKに懇願された。家出か?と俺が訊くと、こくんと頷いた。ため息を吐き、JKの隣に腰をおろした。理由は親とのケンカという、かわいいものだった。「泊めるのは駄目だ。けど、また愚痴りたくなったら、ここに来い。いつでも聴いてやる」
2021年4月11日 19:52
角度が決まった。 互いに残HPは少量だ。 この一撃に、全てをかける。 バチン。 視界がチカチカする。星が飛んだ。 JKに頬を叩かれた。「なにしやがる!」「うるさい!さっさとどけ!」 JKが無理矢理、俺をバスの席から引きずり降ろした。「さあ!おばあちゃん座って!」「すまないねぇ」
2021年1月16日 18:48
「今日も告白できなかった~」 親友が私の机の前で嘆く。 伝えたい焦れったさ、伝えられない臆病さ。わかるよ。 もどかしいね。 あなたが羨ましい。 伝えたい人が在るのだから。 私が伝えたい人はもういない… 世界はままならないね。「ところで先生まだ登校しないね」 来ないよ。 私が埋めたから。
2020年12月4日 19:07
視界を行き交う車灯の群れ。 最近はすっかりと灯る時間が早まった。 イヤホンが奏でる音に合わせ、指でリズムを取る。 団地へ流れるバスはまだ姿を現さない。 ふいに吐息のような、かすかな風がふっとうなじを通り抜ける。 そろそろポニーテールも終わりかな。 明日から、下ろして登校しよ。
2020年11月15日 13:54
「明日があるさ」と誰かが言った。 そんな不確かなことを誰が言い出したのか。 明日の保証なんて誰にも無いのに。 世界は誰にも等しく残酷だった。 目の前の篠突く石の雨に誰が明日の到来を期待できるのか。 帰ったら、ごめんねと言おうと思っていた。 せめて天国で仲直りしよう、お母さん。 あとがき 人生はいつ終わりが来るかわかりません。 妻とケンカした時に不意に頭に浮