見出し画像

【読書感想文】中島敦「山月記」

こんばんは~
小説を読んでいると、時折胸が痛くなる男、小栗義樹です(笑)

本日は読書感想文です!
いやぁこの企画も、すっかり恒例になってまいりましたね。この企画を書き始めてからというもの、僕の読書の方法がだいぶ変わりました。細かい部分は置いておき、今まで以上に文章に注意を払うようになっています。

読書の精度が上がり、入ってくる情報の量も多くなって、とても嬉しいです!

今回は、

中島敦の「山月記」について、感想を述べていきます。


こちらはリクエストを頂きました。
山月記は読みましたか?感想お待ちしております!
というものです!

ありがとうございます!
こうしたリクエストを頂けると、書く上でのモチベーションに繋がります。需要を実感できるって、とても嬉しいですよね!
これからも、コメントお待ちしております。ご要望には、大体は応えるつもりです!宜しくお願い致します。

さて、山月記ですね。

もちろん読んでます。中島敦の文章に出会ったのは、恐らく中学生が初めてだったと記憶しています。中学生の時、国語の教科書で読みました。山月記は、初めて触れた中島敦作品です。

ちなみにですが、文庫本も持っています。李陵や弟子などが入っている新潮文庫の文庫本です。事あるごとに読み返しては、自分への戒めにしている。山月記は僕にとって、そういう作品です。

どんなお話かを簡単にまとめます。

プライドが高い優秀な男が、詩を書いて生計を立てたいと仕事を辞めます。ただ、その詩は一向に評価されず、とうとう生活が苦しくなり、前の仕事に戻ることに。周囲の自分よりも優秀でない人間にこき使われる日々が続き、ある日当然発狂。数年後、その男の親友が仕事で森林を抜けていくとき、一匹のトラに出会います。そのトラこそが主人公。なんと主人公は発狂したその夜トラになってしまったのです。トラになった主人公は、親友にいくつかの頼みごとをします。そして頼みごとをすべて言い終えたのち、親友を森から逃がし、丘の上で雄たけびをあげるのです。

めちゃくちゃざっくりしていますが、大まかなあらすじはこんな感じです。虎になった理由、トラから語られる真実の言葉は、1つ1つがとにかく胸を打ちます。

山月記を初めて読んだときは、話の意味がいまいち分からず、つまらない作品として片づけていました。トラになってしまう理由も、主人公が親友に語る言葉も、要領を得ている気がしなかったからです。

最初の印象はあまり良いものではありませんでした。だがしかし、ここから僕の山月記の印象が180度変わることになります。

この話が僕の戒めとなったのは高校生のとき。それこそ作曲を始めたころでした。僕の中で読書ブームが来ていて、再度読み返してみたんです。そこで気づきました。この話には、創作への欲求が滲み出ています。それでいて、創作において大事なことは何か?という問いに対する中島敦なりのアンサーがしっかりこもっていると思います。また、如何に才能があって、それらを自覚していたとしても、その才能は鍛えて伸ばさないといけないもので、その方法は、やっぱり才能あふれる人と競うしかないのだという、才能論にも触れている気がします。

僕は1人でいるのが好きですが、それだとどこかで限界が来る。音楽を含めた創作という行為は、誰かのインスピレーションを借りないとどこかで枯渇してしまいます。自分の中にあるものだけで処理しようとすれば、魅せられる幅には限界があるのです。その幅を広げるためには、経験資料を貯蓄しないといけません。山月記は、作るという行為の本質について、あらゆる角度から再確認できる作品だと思います。まさに戒めです。

お話自体も、読むことが出来るようになると非常に面白いです。この物語は、中国の古典を題材にしています。古典に由来するという部分でいえば、芥川龍之介と似ている気がしますけど、芥川龍之介は個人にフォーカスし、醜さを描くことに注力しています。それに対して中島敦は、お話の中で人がどのように変化していくのか? つまり、反省や振り返りの中から、人間の愚かさや醜さ、尊さを見出しています。より現代の物語に近い構造を持っているのです。中島敦は、人間観察が得意だったのではないかな?と思います。太宰治と芥川龍之介の間の時代を生きた人ですから、両方の作家の側面を持ち合わせている感じがします。

山月記も、とにかく主人公が反省します。それこそ懺悔のように反省します。その1つ1つの言葉が、モノづくりをしたことがある人にとっては、耳がいたくなるような言葉ばかりです。

どうしたって自問自答に陥りがちな創作という行為ですが、技術においては鍛えないといけません。創作における技術鍛錬方法は、やっぱり触れるしかないのです。それを忘れてしまったが最後、待っているのは独りよがりだじけ。評価も芸術性も気にならなくなって、いつの間にか自己満足に酔いしれてしまう。山月記は、創作が孕んでいる誰もが陥りがちな罠から、人々を救い出すストッパーの役割をしてくれる作品だと思います。

文章はとても読みにくいです。漢文テイストなので、1回で理解するのは難しい。でも、読めば読むほど味があります。捉え方が変わります。僕が抱いた「つまらない」という最初の印象から、これは戒めだ。とても参考になると評価を一変させたように、どこかでマインドをチェンジさせてくれるメリハリのある物語です。

人間の変化、人間が抱く感情の波、創作への喜び、生みへの葛藤など、あらゆることが勉強できる、良質な作品だと思います。古本屋に行けば売っていると思います。ぜひ読んでみてください。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,685件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?