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【読書感想文】フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」

こんばんは!
冒頭のムードオルガンの時点で恐いと思った男、小栗義樹です。

本日は読書感想文を書かせて頂きます!好きな本、読んだ本を題材に感想文を書き、感想文を通して題材にした本に興味を持ってもらえればいいなぁ!という試みです。

本日の題材はコチラ

フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」

です。

今回もありがたいことにリクエストを頂きました。

こういうリクエストは初めてだったのでちょっと驚きました。

「SF小説で感想文を書いてほしいです」

この方は「夏への扉」と「1984年」の感想文を読んで下さったようで、他にもSF作品を題材にした感想文はないのかな?とわざわざ過去の記事を遡り、探してくれたそうです。

そこまでの情熱をかけてくださるなんて、本当に嬉しく思います。で、僕が過去に2冊しかSF小説を取り上げていないことに気づかせてくれたことにも感謝です。本当にありがとうございます。

もちろんガチ勢ほどではないのかもしれませんが、僕はSF小説が好きです。映画も好きですが、個人的には小説の方が面白いなと思っています。想像力が養われていく気がしますし、人間の本能や本質みたいなものは、演技よりも文字描写の方がより濃く表れるように思うからです。

しかしまぁ、SF小説は読むのも感想を書くのも大変です。だから少しだけ消極的になっていたように思います。ここらで気合いを入れなおし、SF小説の感想も積極的に取り入れていこうと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。

さて、そんな僕が今回選んだ題材が「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」です。

アメリカのSF作家「フィリップ・K・ディック」の代表作で、映画ブレードランナーの元ネタになった作品でもあります。

これは岡田斗司夫ゼミで知ったことですが、ブレードランナーの監督を務めたリドリー・スコットと原作者のフィリップ・K・ディックは、封切り直前まで仲が悪かったみたいです。雪解けは、ブレードランナーのプロモーション映像が完成した時で、フィリップ・K・ディックに映像を観せた時に和解が成立したそうです。

SF関連の話は、岡田斗司夫ゼミを観ると大体語ってくれています。ブレードランナーの回は無料で全編楽しめるので探してみてもらえればと思います。

上記の情報から分かる通り、アンドロイドは電気羊の夢を見るか?とブレードランナーは、話の内容が大きく異なります。設定や話の筋は似ているのですが、決定的に結末が違うのです。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?はミステリーとホラーの要素が強い作品だなと思います。舞台設定や登場する機械、登場人物などは未来の世界をイメージさせてくれるのですが、そこがメインではないのです。この作品は、疑心暗鬼になっていく人間の様を描いた小説なのです。

お話としては、主人公が地球に亡命してきた高性能な人型ロボットである「アンドロイド」を始末していくというものです。主人公は、アンドロイドを始末していくうちに、人間とアンドロイドの違いがよく分からなくなっていきます。その後、そもそもこの行為そのものが正しい事なのかどうかにさえ疑問を持ち始めてしまい、だんだんとノイローゼのようになっていって・・・というのがお話の流れです。

非常に文学的なお話だなと思います。SFと言えば、宇宙や未来を題材として、そこに広がる想像の制度や社会などに対し、人間がどのように考え、どのように立ち向かっていくのか?みたいなお話が多いです。もちろん、物語の中にその時代の人間らしさみたいなものが反映されていたりもしますが、ここまで内相的ではないイメージがあります。

最初に読んだ時の印象は「怖かった」です。シンプルですが、お話が進むにつれて主人公の心が壊れていく様が生々しく描かれています。途中、読んでいる僕自身も誰がアンドロイドで誰が人間なのか分からなくなったし、主人公のリックさえもアンドロイドなのではないか?と疑いました。

作中にアンドロイドと人間を見分けるテストみたいなものがよく登場するのですが、このテストが非常に曖昧と言いますか、確固たる確証みたいなものを読み手に与えてくれないため、このテストが行われる度に、こいつは本当にアンドロイドなのか?このテストは正しい結果を出しているのか?とだんだん不安な気持ちに駆られていくことになります。結果的に、始末する・殺すという行為がとても怖いもののように思えてきて、段々と焦燥感みたいなものに苛まれていくのです。

はっきり言って、現代ならアンドロイドはサイコパスとして片付けられてしまうと思います。たまに、アンドロイドが人間らしくない行動を取るのですが、その行為そのものが現代ではただのサイコパスっぽい行動なのです。だからこそ、今この本を読んでいる僕からすれば、現実の社会にアンドロイドが混ざっていてもおかしくない・現代で起こる横暴な犯罪の多くはアンドロイドが起こしているのではないか?という錯覚にさえ襲われます。

とにかく魅せ方がリアルで、対比なんかをうまく使い、読み手に恐怖と焦りみたいなものをどんどん与えてきます。僕は怖いと思いながらも、この感覚がクセになっていて、読み終わった時に得る不快感と満足感が合わさったような奇妙な体感に酔いしれてしまいます。

この世で一番怖いことって何?という質問に、僕はいつも「信じていた現実が崩れてしまうこと」と答えるのですが、この問いの答えはこの作品を読んだときに見出したものです。

小さい頃、両親が離婚するかしないかくらいの時の話です。僕は父と母が喧嘩していた時の怒鳴り声よりも、自分の信じている目の前の世界が崩れていくかもしれないという事態に怯えていました。当時はそれを説明することが出来ませんでしたが、アンドロイドは電気羊の夢を見るか?を読んだとき、主人公が背負っている気持ちを想像するため、近い体験を自分の中で呼び起こそうとしてみたところ、その時の場面が浮かびました。

僕からすると、これ以上に怖い出来事はありません。命が終わる・襲われる・誰かに傷つけられる、確かにそれらは怖い現象なのかもしれませんが、僕からすると、自分が構築した世界が嘘だったとつき付けられた瞬間の、あの絶望と失いたくないという気持ちが入り混じったはがゆい感覚には遠く及びません。

それは、自分そのものを否定されたような気分でもあり、強制的に常識から逸脱させられたような、要するにお前は人ではないと言われているような寂しさでもあります。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?には、そういう怖さが詰まっていて、それは人生において、一度は触れておいた方がいい恐怖なのかもしれないなとも思うのです。

現に僕は、自分が一番怖いと思う現象を理解することに成功してからというもの、それ以外の恐いという現象に対して、あんまり物怖じすることがなくなりました。

この小説は、惑わすような恐怖心の多くを取り除いてくれる力を持っていると同時に、本当の怖さというのは「いつでも簡単に引き起こる可能性を孕んでいる」ということも教えてくれているのだと思います。

SF小説は、今から集めようと思っても非常に難しいなぁと感じています。古本屋でも、なかなか取り扱っていません。メジャーな作品になればなおさらです。

興味があれば電子書籍で購入してみてください。アンドロイドは電気羊の夢を見るか?は僕からすると怖い作品ですけど、1回は読んでみて損することは無いと思います。

夏ですからね(笑)
今の時期は、特にピッタリだと思います!

ということで、本日はこの辺で失礼いたします。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
また明日の記事でお会いしましょう!


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