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クライマーズ・ハイ|横山秀夫
クライマーズ・ハイを読みました。
読み終えて、これは傑作だ、と思いました。
題材は、1985年御巣鷹山の日航機墜落事故。
地元記者の葛藤、混乱、闘いを描きながら、家族との軋轢、部下の事故死、同僚の謎の言葉のミステリー、そして十七年後の衝立岩への登攀、といくつもの要素が絡まり合います。緊張感のある展開と、複雑な要素が紐解かれていく結末は圧巻で、読了後は清々しく山登りをしたかのような爽快感がありま
世界で一番すきなもの
ママは、〇〇ちゃんが世界で一番大好きだよ。
そう息子に言うと、彼はさも当然という風に「ふぅん」と言った。
ドラッグストアに車を停め、シートベルトを外す彼の、まだふくふくとした横顔をながめていたときのことだ。
じゃあさ。
息子がやや考えて言う。
じゃあ、ママが世界で一番好きなものはなに?
息子が私を見上げる。これは、どういう意図なんだろう。
〇〇ちゃんだよ。
私がそう言うと、彼は苦笑
ベンチの中の背番号2
校舎の1階の視聴覚室へ続く廊下は、放課後になると通る生徒がほとんどいない。だから女子バレー部の筋トレはその場所で行うのが決まりだった。
腹筋、腕立てふせ、スクワット。
みんなで廊下に1列になって、おのおののペースで進めていく。
体力も筋力もない私には、筋トレはきつい。
でも運動神経も悪いから、コートでのプレーもきつい。
どちらがよりきついかと言うと、他のメンバーに迷惑を掛ける、という意味で
あのひとの読む本|きらきらひかる
趣味がほしいんや、と彼が言った。
いつものように本を読みながら。
あるじゃない、趣味。とその本を指さして私は言う。
彼は私をみて本をみて首を振った。
読書は趣味やないよ。ライフワークやから。
長野まゆみがすきなの、と言って
あぁ少年アリスのひとやろ。それだけ読んだことあるわ、
と返ってきたとき、私はびっくりした。
男性で、長野まゆみを読んだことのあるひとを、はじめて見たのだ。
浮気性で軽薄
CRままならない休日
寮の近くのスーパーで夕飯の買い出しをしていたら同僚に見つかった。
内心、ゲッと思い隠れようとしたが、ときすでに遅し。
「あれ? 吉村~ひとり~?」と声が掛かってしまった。
「はぁ」と見ると、先輩の男と同期の男の二人が、やはり夕飯の買い出しに来ていた。
「え、ほんとにひとりなの?」
先輩がまわりをキョロキョロして改めて聞いてきた。寮に住んでいる社員は連れ立って歩くことが多いからだろう。現にい
子供は1人です。それがなにか?
誰にだって、そこを踏まれると即座に爆発する地雷みたいな言葉が、一つはあると思う。
二人目は? 早く産んだ方がいいよ。
私はこれを言われると、爆発する。
相手が誰であろうと「うるさい! 黙れ!」と心で叫んで、できることなら即座にそのひととは縁を切る。
大抵そういう発言をするのは年配の女性で、たしかにむかしはそういう価値観だったんですよね、あなたのために言ってあげてるってかんじで悪気なんてない