福原信一

私は40数年間私学の中等教育の現場に携わってきました。今は組織を離れて自由を謳歌してい…

福原信一

私は40数年間私学の中等教育の現場に携わってきました。今は組織を離れて自由を謳歌している一人の元教師の、日本の教育や政治・社会についての素朴な思いを発信していきたいと思っています。

記事一覧

SNSの誹謗中傷に負けるな、人付き合いの処世術、言葉は諸刃の剣

 2012年に開催されたロンドンオリンピックは史上初の「ソーシャルメディア五輪」とも呼ばれ、国際オリンピック委員会も選手が自ら情報を発信することを奨励した。ツイッタ…

福原信一
1年前
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教師の心得、仏様の教え、教え子は宝物

 以前、ある保護者から、「先生はどんなことを言われたら一番うれしいですか?」と訊かれたことがあります。ちょっと考えて私は、「先生のおかげで…、と言われたらやはり…

福原信一
1年前
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抑鬱状態を脱する希望と勇気と主体性と

 「子供の自殺 6月に増加」(令和5年5月20日付産経新聞)という見出しの記事が目に留まりました。記事によれば、「小中高校生の自殺者は令和4年に514人と過去最高となった…

福原信一
1年前
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「人を思い遣る心」と「儒教とキリスト教の黄金律」、想像力を育むための読書

 今からもう12年も前になる東日本大震災という未曾有の大惨事が発生したとき、「自分に何ができるか」を考えた人は多いと思います。日本列島を自分の体に例えれば、体の一…

福原信一
1年前
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シフトしないパラダイム、「アガペー」目の前の人を大事にするということ

 「地下鉄での気まずい出来事」という見出しの次のような投稿が以前産経新聞に載っていました。     ある日夕、地下鉄車内での出来事でした。座れるスペースはほとんど…

福原信一
1年前
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ミュージカル「ラ・マンチャの男」を観て考えたこと

 先月24日、松本白鸚主演「ラ・マンチャの男」の最終公演が千秋楽を迎えたというニュースを見てしばし感慨に浸りました。1969年の初演時26歳の市川染五郎は、54年間1324回…

福原信一
1年前
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青春とは何か?

 最近「青春」という言葉をあまり聞かなくなったような気がします。私が青春時代を過ごした60年代から70年代にはテレビドラマにも「青春」を冠したものが数多くありました…

福原信一
1年前
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左翼的思考(?)と右翼的思考(?)原因は自分に

 私が学生の頃だからもう半世紀近くも前のことになる。学生演劇に没頭していた私は福田恆存という評論家、翻訳家、劇作家、演出家と出会った。と言っても直接お話しを伺っ…

福原信一
1年前
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詩「子は親の鏡」を読んで子育て及び人格について考える

まず「子は親の鏡」と訳されているよく知られた詩を紹介したい。   けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる とげとげした家庭で育つと、子どもは、乱暴になる …

福原信一
1年前
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「教育は何のためか」

 「教育は何のためか」という問いに対して教職に携わる者は真摯に答える義務がある。大学を出てすぐに教壇に立ったとき、私は教師として「何ができるか」「何をなすべきか…

福原信一
1年前
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「シェイクスピアに学ぶ処世術」

 多分私が20代の頃だったと思う。大阪の阪急梅田駅のトイレでの出来事だった。  電車に乗る前にトイレを済ませておこうとトイレに入ったとき、入り口に立っていた白人の…

福原信一
1年前
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「教育は愛情と忍耐」

教育に関するエッセイ(中学1年生を担任したときの保護者への手紙)  You can take a horse to water, but you can’t make him drink. という諺が英語にあります。「馬…

福原信一
1年前
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勇気とは正しいことをすることだ

ブログを始めた理由 The time is out of joint.(「この世の関節が外れてしまったのだ」福田恆存訳)というハムレットの台詞があります。今の世の中の調子が狂っていると…

福原信一
1年前
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SNSの誹謗中傷に負けるな、人付き合いの処世術、言葉は諸刃の剣

SNSの誹謗中傷に負けるな、人付き合いの処世術、言葉は諸刃の剣

 2012年に開催されたロンドンオリンピックは史上初の「ソーシャルメディア五輪」とも呼ばれ、国際オリンピック委員会も選手が自ら情報を発信することを奨励した。ツイッターやフェイスブックなどを通じて選手とファンが直接交流できることは、応援を受けた選手のモチベーションアップにつながることはもちろん、ファンにとっても、選手を身近に感じられるのはうれしいことである。今では選手自らが自分のプライベートな部分を

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教師の心得、仏様の教え、教え子は宝物

教師の心得、仏様の教え、教え子は宝物

 以前、ある保護者から、「先生はどんなことを言われたら一番うれしいですか?」と訊かれたことがあります。ちょっと考えて私は、「先生のおかげで…、と言われたらやはりうれしいですね」と答えました。自分がしたことで他人(ひと)が喜んでくれたらこれほどうれしいことはありません。ただし、「おかげで」と言われても、実際に行動したのはその人本人であって、私が何かをしてあげたわけではありません。本人の努力が報われた

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抑鬱状態を脱する希望と勇気と主体性と

抑鬱状態を脱する希望と勇気と主体性と

 「子供の自殺 6月に増加」(令和5年5月20日付産経新聞)という見出しの記事が目に留まりました。記事によれば、「小中高校生の自殺者は令和4年に514人と過去最高となった。月別で見ると、4月の31人に対し、5月は40人、6月は62人と2倍に増えている」と言います。
 また、鬱病などの精神疾患の低年齢化が指摘されていて、「警察庁と厚労省の統計(4年)によると、小中高生を含む19歳までの自殺者1006

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「人を思い遣る心」と「儒教とキリスト教の黄金律」、想像力を育むための読書

「人を思い遣る心」と「儒教とキリスト教の黄金律」、想像力を育むための読書

 今からもう12年も前になる東日本大震災という未曾有の大惨事が発生したとき、「自分に何ができるか」を考えた人は多いと思います。日本列島を自分の体に例えれば、体の一部が壊死しかかっているのですから他人事とは思えません。そういうときに大切なのは「人を思い遣る心」と「想像力」です。
 人を思い遣る心は実に人間的で美しく人を感動させるものがあります。孔子は「この一言なら生涯守るべき信条とするに足る―そうい

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シフトしないパラダイム、「アガペー」目の前の人を大事にするということ

シフトしないパラダイム、「アガペー」目の前の人を大事にするということ

 「地下鉄での気まずい出来事」という見出しの次のような投稿が以前産経新聞に載っていました。
 
  ある日夕、地下鉄車内での出来事でした。座れるスペースはほとんどありません。突然、年配の男性が強い口調で「ここは優先席だ。若い者が座っちゃいけないんだよ」と女性を注意したのでした。
 ところが、次の瞬間、その女性は「心臓にペースメーカーを埋め込んでいます。携帯電話の電源を切ってください」とあるフリップ

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ミュージカル「ラ・マンチャの男」を観て考えたこと

ミュージカル「ラ・マンチャの男」を観て考えたこと

 先月24日、松本白鸚主演「ラ・マンチャの男」の最終公演が千秋楽を迎えたというニュースを見てしばし感慨に浸りました。1969年の初演時26歳の市川染五郎は、54年間1324回の公演を重ね、80歳の今日に至るまで「見果てぬ夢」を歌い続けてきたことになります。これを偉業と言わずして何と表現したら良いのでしょうか。これだけ続けられたのは白鸚氏のこの芝居に対する思いの強さと役者としての器量そして「ラ・マン

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青春とは何か?

青春とは何か?

 最近「青春」という言葉をあまり聞かなくなったような気がします。私が青春時代を過ごした60年代から70年代にはテレビドラマにも「青春」を冠したものが数多くありましたし、世の中も高度成長期で元気があったように思います。今のこの現象が少子高齢化を反映したものなら、何とも寂しい限りです。今一度輝かしい青春を日本社会に取り戻したいものです。
 さて、「青春」とは一体何なのでしょう。古代中国に始まる陰陽五行

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左翼的思考(?)と右翼的思考(?)原因は自分に

左翼的思考(?)と右翼的思考(?)原因は自分に

 私が学生の頃だからもう半世紀近くも前のことになる。学生演劇に没頭していた私は福田恆存という評論家、翻訳家、劇作家、演出家と出会った。と言っても直接お話しを伺ったわけではなく、福田先生演出のシェイクスピア劇を観たり『福田恆存評論集』をよく理解できないまま読んだりしていただけに過ぎない。しかし、当時文京区本駒込にあった「三百人劇場」で行われた「処世術から宗教まで」という演題の連続講演会での一コマは今

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詩「子は親の鏡」を読んで子育て及び人格について考える

詩「子は親の鏡」を読んで子育て及び人格について考える

まず「子は親の鏡」と訳されているよく知られた詩を紹介したい。
 
けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる
とげとげした家庭で育つと、子どもは、乱暴になる
不安な気持ちで育てると、子どもも不安になる
「かわいそうな子だ」と言って育てると、子どもは、みじめな気持ちになる
子どもを馬鹿にすると、引っ込みじあんな子になる
親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる
叱りつけてばかり

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「教育は何のためか」

「教育は何のためか」

 「教育は何のためか」という問いに対して教職に携わる者は真摯に答える義務がある。大学を出てすぐに教壇に立ったとき、私は教師として「何ができるか」「何をなすべきか」を真剣に考えた。英語教師として英語を教えることは当然として、英語が言葉である以上そこには必ずメッセージがあるはずだから、そのメッセージに対して「私はこう思うが君達はどう思う?」と常に問い掛け、生徒たちに自分の頭で考えることを要求してきたよ

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「シェイクスピアに学ぶ処世術」

「シェイクスピアに学ぶ処世術」

 多分私が20代の頃だったと思う。大阪の阪急梅田駅のトイレでの出来事だった。
 電車に乗る前にトイレを済ませておこうとトイレに入ったとき、入り口に立っていた白人の男性と目が合ってしまい、瞬間「やばいっ!」と思った。華奢な体つきで青白い湿っぽい感じの顔をした若い男性だった。私は何事もないかのように小便器の前に立った。その瞬間目の前に1万円札が置かれた。私は用を足すこともしないまま、黙って素早くその場

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「教育は愛情と忍耐」

「教育は愛情と忍耐」

教育に関するエッセイ(中学1年生を担任したときの保護者への手紙)
 You can take a horse to water, but you can’t make him drink. という諺が英語にあります。「馬を水際へ連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」という意味です。これはもちろん学習には動機がなければならないことを諺にして述べたものです。自分にしっかりとした将来の目

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勇気とは正しいことをすることだ

勇気とは正しいことをすることだ

ブログを始めた理由 The time is out of joint.(「この世の関節が外れてしまったのだ」福田恆存訳)というハムレットの台詞があります。今の世の中の調子が狂っていると感じているのは私だけではないでしょう。尤も、多分いつの時代も、世の中の箍(たが)が外れているように感じている人は多いのではないかと思います。
 デンマーク王子ハムレットは、父王を毒殺し母と結婚して王位に即いた叔父クロ

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