かすか

ウィークエンドシトロン

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記事一覧

12年、わたしはまだあの日を許せない。

12年が経った。 わたしはまだ、あの日を許せない。 3月11日になっただけで、猛烈な絶望感とどうしようもなさが身体に染みわたる。14時46分に近づく度に、指先が凍えて震え…

かすか
1年前
201

孤独について

何人暮らしかわからないほど靴を並べた七畳半の玄関、駅近マンション。すぐに冷める足の伸ばせない湯船、ざらざらの入浴剤。いつの日かの染みがずっと取れないでいる、水色…

かすか
1年前
26

くるみのチョコがけ

今日はすこしだけ、家をでるのがはやかった。 向かうさき一限の満員電車は、正直言って楽しいものではない。明らかに満員ですよ、容赦なく迫りくる圧力に身をまかせて乗り…

かすか
1年前
10

題未定(2)

しましまのキャンディは、田舎の実家で畑仕事を手伝ったときにいつもばあちゃんがくれた。その晩はきまって妖怪みたいに伸びきった野菜が夢に出てきて、こわがりなわたしを…

かすか
1年前
6

題未定(1)

目が覚めて、小刻みに設定したアラームより五分だけ早く起きてしまったことを後悔する。あと五分、あと五分と思ううちに三〇分も寝過ごしては、相変わらずばたばたと布団を…

かすか
2年前
15

夏っていうから

もくもく雲は白過ぎる、ひかる青のスクリーン ストローをさすときまって溢れるクリームソーダ、マスターのしゅわしゅわ片恋慕 ひとつの海に並ぶ白のワンピース、壁掛けの…

かすか
2年前
12

雨あめ、しとしと。

満月の日は、あめだった みあげたら頬に流れて、 涙みたいだった もし星を掴めたら、 きみへの贈り物にしよう 名前のない星をふたりの約束にして、 いくつも星座を結ぼう …

かすか
2年前
13

四月、春。

たしかに、春だった。 それは出会いのようであり、別れのようであり、ずっと続いているようでもあった。うっすらと肌の透けた黄色のカーディガンは菜の花のように咲いて、…

かすか
2年前
15

溶けてしまったこと

元旦より、愛を込めて 今日の月はおおきくて綺麗だから、一緒に見ませんか 綺麗と言わずして、その美しさを共有してしまいませんか それは白く柔い感情、手の悴む帰り道…

かすか
2年前
5

アイラブユ、抱えて、ホットココア。

アイラブユ、抱えて、ホットココア。 いつか、わたしがまだ存在するうちに、こっそりと本をつくって、大切なひとにだけ読ませたい。 愛したら方が負けなら、わたしはずっ…

かすか
2年前
13

いつか
彼の毎日から私がいなくなってしまっても、

私の生活に彼の時間が投影されなくなっても、

生きていくうえで必要な時間だったと思える確信があるから、

きっと本気の恋なんだと思う。

かすか
2年前
1

愛、関係、名前

名前が、ない。 ふたりを表す、名前がない。 ずっと、名前のある愛しか守れなかった。 名前を貰ったのに、守れなかったこともある。 気がつけば、もう二十年以上生きて…

かすか
2年前
10

君とを終えて

さよならで泣けない。 スーツ姿で待ち合わせ場所に早歩きしてくる彼を見て、今までと何が違うんだろう、と思う。 この世には、どんなに願ったって変わらないものがいくつ…

かすか
2年前
7

ハタチの憂鬱

机に齧り付いて、角の折れた参考書に夢中になっていたのは、遥か昔。 スカートは長く、髪は短く、朝は早く、黒いリュックは登山用。 自由が欲しかった。 適当な時間に起き…

かすか
3年前
8

若気の至り

最近、ああ、私、生き急いでるなって思うことが沢山ある。焦っている。毎日毎日、今この瞬間が私にとって若さの頂点であることについていけない。人生若さだけじゃないとは…

かすか
3年前
8
12年、わたしはまだあの日を許せない。

12年、わたしはまだあの日を許せない。

12年が経った。
わたしはまだ、あの日を許せない。

3月11日になっただけで、猛烈な絶望感とどうしようもなさが身体に染みわたる。14時46分に近づく度に、指先が凍えて震えるようになる。忘れないで。絶対に忘れないで。わたしがもう忘れてもいいように、あなたがずっと忘れないで。どれだけ願ったって、わたしは、わたしの記憶から逃げることができない。

当時、わたしは小学4年生だった。授業参観で行われた半分

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孤独について

孤独について

何人暮らしかわからないほど靴を並べた七畳半の玄関、駅近マンション。すぐに冷める足の伸ばせない湯船、ざらざらの入浴剤。いつの日かの染みがずっと取れないでいる、水色のタオル。

よく知らない孤独、光らないロック画面。干し方を間違えて伸び切ったニット、寝る前に流す聞いてもいない雑学。流行りのおすすめ映画は、いつも三〇分で寝てしまうので何も起きません。

「わたしは、ここに必要でしょうか。」

わたしは確

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くるみのチョコがけ

くるみのチョコがけ

今日はすこしだけ、家をでるのがはやかった。

向かうさき一限の満員電車は、正直言って楽しいものではない。明らかに満員ですよ、容赦なく迫りくる圧力に身をまかせて乗り込む。あのスリルは某テーマパークのジェットコースター並みだけど、叫んじゃいけない人間の体温がぬるっと充満してるから、妙な感じだ。

雨が降っている。

結局バスが遅延して、ついた頃にはもう遅刻だった。先生、ごめんね。わたし、あれ、買わない

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題未定(2)

題未定(2)

しましまのキャンディは、田舎の実家で畑仕事を手伝ったときにいつもばあちゃんがくれた。その晩はきまって妖怪みたいに伸びきった野菜が夢に出てきて、こわがりなわたしを脅かすのだった。気がつけばもう十年近く帰っていないが、たまに届く野菜は相変わらず不格好で安心する。おとなの口にはすこし小さいキャンディを舌で転がすと、あの湿った土がふとよみがえる。

右手の酸味がかった缶コーヒーは、あまり好みではなかった。

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題未定(1)

題未定(1)

目が覚めて、小刻みに設定したアラームより五分だけ早く起きてしまったことを後悔する。あと五分、あと五分と思ううちに三〇分も寝過ごしては、相変わらずばたばたと布団を畳む。

ひっくり返ったぬいぐるみに挨拶をして、飲みかけの麦茶を空にする。皺だらけの服を引っ張り出して思考停止してから、あわててアイロンの電源をいれた。とりあえず最大限まで温度を上げて、おそるおそる布に落とし、まるで幼稚園生のお絵描きみたい

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夏っていうから

夏っていうから

もくもく雲は白過ぎる、ひかる青のスクリーン

ストローをさすときまって溢れるクリームソーダ、マスターのしゅわしゅわ片恋慕

ひとつの海に並ぶ白のワンピース、壁掛けのカレンダーは永遠(とわ)の七月

きみはすぐに夏のせいにしたがる、だまって棒アイス食べたらいいのに

虫刺されのあとをかぞえる、愛しかわいい武勇伝

蝉は苦手よ、ほらちょっとだけ切なくなるから、ほんとは突然飛ぶからだけれど、これも夏のせ

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雨あめ、しとしと。

雨あめ、しとしと。

満月の日は、あめだった
みあげたら頬に流れて、
涙みたいだった

もし星を掴めたら、
きみへの贈り物にしよう
名前のない星をふたりの約束にして、
いくつも星座を結ぼう

ひときわ明るい星をみて、
伸ばした右手が愛おしかった
澄んだひとみに夜空が映って、
きみは僕の宇宙だった

あめを待って、数を数えた
あめはくしゃみと一緒に
きみをつれてきて、
髪のさきからゆっくりと滴を落とした

白い紫陽花を集

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四月、春。

四月、春。

たしかに、春だった。

それは出会いのようであり、別れのようであり、ずっと続いているようでもあった。うっすらと肌の透けた黄色のカーディガンは菜の花のように咲いて、やわらかな春風に撫でられた。

朝の白んだ光があたたかかった。河原を歩けば、遠くからあまいにおいがして、こころごとじんわり溶けてしまうのだった。きらきらひかる水面にカモの親子が浮いているのを、ふたりでながめていた。

春はうれしい季節だろ

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溶けてしまったこと

溶けてしまったこと

元旦より、愛を込めて

今日の月はおおきくて綺麗だから、一緒に見ませんか
綺麗と言わずして、その美しさを共有してしまいませんか

それは白く柔い感情、手の悴む帰り道、積もる雪に歪な雪だるまを見つけました
明日には溶けて消えてしまうかもしれないと思うと、何だか抱きしめてあげたくなりました

おみくじは何よりふつうがいいです
良いも悪いも、もう少しあとから決めてみたい

このままでは静けさの中に溶けて

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アイラブユ、抱えて、ホットココア。

アイラブユ、抱えて、ホットココア。

アイラブユ、抱えて、ホットココア。

いつか、わたしがまだ存在するうちに、こっそりと本をつくって、大切なひとにだけ読ませたい。

愛したら方が負けなら、わたしはずっと敗者の恍惚を望むだろう。

好きだったひとが、はじめて花を買ってくれた花屋に行った。思い出に気がついたとき、わたしは絶滅した。

頭の細胞なんて使ったら、恋愛も同棲も結婚もできなさそうだ。だから、馬鹿みたいに、心だけで君を好きなってし

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いつか
彼の毎日から私がいなくなってしまっても、

私の生活に彼の時間が投影されなくなっても、

生きていくうえで必要な時間だったと思える確信があるから、

きっと本気の恋なんだと思う。

愛、関係、名前

愛、関係、名前

名前が、ない。

ふたりを表す、名前がない。

ずっと、名前のある愛しか守れなかった。
名前を貰ったのに、守れなかったこともある。

気がつけば、もう二十年以上生きている。
その間、それなりに愛し、愛され、壊し、壊されてきた。

肌に刺さる冷たい風に、指先をセーターの袖にしまう。もう少しで冬だ。

何度季節がめぐり、出会いと別れを繰り返しても、瞬間に、ああ、この人に関わってしまってはいけないと思う

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君とを終えて

君とを終えて

さよならで泣けない。

スーツ姿で待ち合わせ場所に早歩きしてくる彼を見て、今までと何が違うんだろう、と思う。
この世には、どんなに願ったって変わらないものがいくつか存在する。

一目惚れをした。

それは二十歳のクリスマス、
もう誰でも良いから、有り余るほど愛して欲しくて
逃げるように眺めていたマッチングアプリ。

深夜二時、湯冷め。

あ、多分わたし、この人と付き合うな、
根拠のない鋭めの直感に

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ハタチの憂鬱

ハタチの憂鬱

机に齧り付いて、角の折れた参考書に夢中になっていたのは、遥か昔。
スカートは長く、髪は短く、朝は早く、黒いリュックは登山用。

自由が欲しかった。
適当な時間に起きて適当な時間に寝たかった。
どんな家具をおいても、匂いをさせても、
誰を呼んでもいい場所が欲しかった。
あわよくば誰もが知るそれを
自分の名前と組み合わせて自慢げに歩きたかった。
真夜中に煌々と光るネオンが本当はどんな色か見てみたかった

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若気の至り

若気の至り

最近、ああ、私、生き急いでるなって思うことが沢山ある。焦っている。毎日毎日、今この瞬間が私にとって若さの頂点であることについていけない。人生若さだけじゃないとは思うけど、満足しない一日を過ごしてしまうなんて勿体ないと思う。

お酒も揚げ物も今が一番美味しいらしい。恋人と好きな人の両立、結局みんな振られ待ちだということについて、深夜の公園で潰れかけの氷結を握り締めながら夏の終わり。スケボー少年、俯く

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