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読書

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読書記録や、大好きな一冊について 書いています。
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源氏物語「帚木」あらましと感想2

理想の女性について左馬頭は一家言あり、長々話し続けています。その間、源氏は心の中で藤壺の宮を思っていました。光り輝く理想の女性・藤壺に手の届かない苦しみで胸はいっぱいです。とりとめのない女性談議は朝まで続きました。

紀伊守の邸へ

翌日、源氏は妻の実家である左大臣家へ向かいます。妻・葵の上は源氏より四歳上の気位が高い女性で、結婚当初からよそよそしい態度を崩さず、源氏は物足りなさを感じています。

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「源氏物語」を再び

今、NHKの大河ドラマ「光る君へ」を毎週楽しみにしています。平安時代に生きた紫式部の人生を描いた物語ということで、平安貴族文化が好きな自分としてはこれは観るしかない!と心待ちにしていました。

私は実家に居た頃、母の本棚から面白そうな本を物色して読んでいました。その中に田辺聖子の「むかし・あけぼの」(清少納言が主人公の小説)や、与謝野晶子が現代語訳した「源氏物語」がありました。

小さい頃から思春

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源氏物語「帚木」あらましと感想1

帚木とは、信濃国(長野県)園原にあるという伝説上の樹木だそうです。

ほうきを立てたような形から帚木といわれ、遠くからは見えるけれど近寄ると見えなくなってしまう不思議な木で、この章に登場する女性になぞらえ源氏が和歌に詠んでいます。

源氏と頭中将

光源氏はこの頃、17歳で中将という位についています。
元服(成人の儀)後、左大臣家に婿入りしましたが足繁くは通わず、内裏の宿直所で寝泊まりすることが多

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源氏物語「桐壺」あらましと感想文。

「桐壺」は源氏物語の始めの章であり、主人公・光源氏の誕生が描かれています。
大まかなあらすじを紹介しつつ、自分の感想も述べながら進めていきたいと思います!

桐壺の更衣

天皇の后として女御、更衣など様々な身分の女性が何人も居る中に、天皇に特別愛され大切に扱われている人がいました。
その人は、内裏(天皇の住まい)の中で東北の隅にある淑景舎という御殿に住み、桐壺の更衣と呼ばれていました。
(淑景舎は

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人を読む

NHKの「100分de名著」という番組で、三島由紀夫の『金閣寺』が紹介されていた。

『金閣寺』は半年ほど前に読み難しいと感じたが、そこに描かれている主人公・溝口の暗い内面には共感できる部分もあった。

理解できない部分は多かった。

ただ、何回も読み返すほどの熱意はなかったし、自分の周りにはもっと手軽な易しい本が溢れており、そちらの方が手っ取り早くワクワクできるのだった。
底知れない何かを持って

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「トットひとり」感想文〜黒柳徹子さんに恋する本。

(※ネタバレあります)
この本は、黒柳徹子さんがこれまで出会った大切な人達について綴ったエッセイだ。昭和を代表する歌番組「ザ・ベストテン」を作った山田修爾(しゅうじ)さんに始まり、向田邦子さん、森繁久彌さん、渥美清さん、坂本九さんなど著名人が続々と登場する。黒柳徹子さんはテレビ放送開始から現在まで活躍されているので、その交友関係は広く華麗なものだ。

徹子さんの率直な人柄が影響しているのか、付き合

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「いのちの車窓から」感想文〜キラキラしたもの。

(※少々ネタバレあります)
星野源さんの音楽が好きでよく聴いている。
この本は、雑誌の連載エッセイをまとめたものだ。(一部書き下ろしあり)
自分の知らない楽しさを教えてくれそうで、ワクワクしながら読み始めた。
星野源さんの生活、出会った人や物とのエピソード、過去の体験、そこから繋がる現在が綴られている。
リアルな日常の描写に親しみを感じた。夜型の生活や、ゲームや映画が好きな一面、酒に弱い体質など、

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「闇の守り人」感想文〜理想の父親。

「精霊の守り人」の続編である今作は、主人公バルサと、彼女の育ての親ジグロの故郷・カンバル王国を舞台にしている。卓越した武人であり、強靭な精神を持つ二人が生まれた国ってこうだよね、そうそう!めっちゃイメージできます!と頷きながら読んでしまうくらい、カンバルという国はリアリティを持っている。
厳しい寒さの北の山国。乾いた風と大地。そこに生活する九つの氏族。氏族の一員として短槍の腕をみがき、武人としての

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「精霊の守り人」感想文〜自分の中に息づく小説

小説は不思議だ。
架空の人物が私の中で息づく。
そして残り続ける。
でも全てがそうじゃない。
心に残る物は生きているものだと思う。
その人物が、作中でどれだけ生きざまを見せてくれたか。
感情を持ち、自分の心に従い行動し、懸命に生き抜く姿を見せてくれたかだ。
それがないと、人物はただの駒になってしまう。
私が「精霊の守り人」を好きなのは、登場人物が生きているからだ。
呼吸どころか、躍動して暴れ回って

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「鏡をみてはいけません」感想文〜※ネタバレあります。

美味しいご飯の出てくる小説が好きだ。
田辺聖子さんの小説
「鏡をみてはいけません」は、主人公・中川野百合(のゆり)が朝食を作っているシーンから始まる。
野百合は、小鳥の啼(な)き声の入ったテープをキッチンに流しながら、口笛を吹きつつトマトをむいてる。テレビのニュースはつけているけど、音声をほとんど絞っている。
そこへ十歳の男の子・宵太(しょうた)が降りてきて、まだよく知らない同士の二人は、礼儀正し

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とても自己満足よりの読書感想文〜ただ、「アンのゆりかご」は面白いです

夢やあこがれは青春時代に培われる。
その源は、永遠に尽きることのない泉のように、こんこんと湧き出て心を潤してくれるものだ。
夢を燃やし続ける人は強くやさしく、
自分の心に正直で、また周囲への思い遣りにも溢れている。
そんな人と人が出会い与え合い、作り出してきた時代の流れは、連綿と私達の住む「今」までつながっている。
私は先人の財産を知らないうちに譲り受け、享受している。
長々とすみません。この本を

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生きている言葉「赤毛のアン」

紙の本が好きだ。
年季が入り、少しくたびれて
茶色くなった裸の文庫本が手に馴染む。

ページを捲り、整列した文字に目を落とすと、
たちまち本の中に引き込まれる。
読むことはおもしろい。
少しずつ、確実に文字を追ってゆく。
「生きている」と感じる言葉に触れると心が踊る。

小さな頃から何度も開いた本は、
読むたび私に「生きている言葉」を
教えてくれる。
それは自分の大切な柱となっていく。

「赤毛の

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「金閣寺」を読み、混乱する。

自分の生きている限り付いてまわり、
切り離すことのできない性質がある。

それを呪い、疎ましく思い
取返しのつかない引け目だと考えて
苦しみながら抱えているうちに、
その特質を持つ自分こそが
世界から切り離された、特別な存在だと
考えるようになる。

その性質こそが自分だと
自分には特別な役が与えられているのだと
それが唯一の存在証明だとでもいうように。

アイデンティティーといっても、
これは他

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あなたに向けて。〜「むかし・あけぼの」感想文〜

小さい頃から何度も読んだ本がある。
田辺聖子さんの「むかし・あけぼの」。

平安時代に生きた清少納言の人生を、
歴史を紐解き、田辺さん独自の解釈を加え
生き生きと蘇らせた長編だ。

田辺聖子さんといえば、
関西弁の軽妙なやり取り、
大阪の食や笑い、少し癖のある文体、
そういったイメージが先行するかもしれない。

けれど「むかし・あけぼの」は
田辺さんのエッセンスが盛り込まれつつも、清少納言という女

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